列車と動物の衝突、「害獣王」で防げ ヒトデも効果あり

志村英司
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 宮城、福島、山形の3県で列車とイノシシなど動物との衝突が急増している。3県を管轄するJR東日本仙台支社によると、2018年度は135件(前年度比50件増)で過去最多。列車の故障や長時間の不通など多くの客に迷惑が及ぶことから、対策に知恵を絞っている。

 3県で起きた衝突135件の内訳は、イノシシ(53件)を筆頭にカモシカ(38件)、クマ(12件)、シカ(9件)と続く。線区別では東北線と仙山線がいずれも28件で、両路線で4割強を占めた。奥羽線(27件)や磐越西線(24件)も多かった。東北線や磐越西線ではイノシシ、仙山線や奥羽線ではカモシカやクマとの衝突が目立ったという。

 背景にあるのは、耕作放棄地の拡大や温暖化に伴う積雪量の減少による、中山間地域での動物の増加だ。加えて、福島第一原発事故以降、基準値を超える放射性物質が検出されたツキノワグマやイノシシの肉の出荷が制限され、ハンターが減ったことも大きい。

 衝突が多いのは夜間だ。乗務員が動物を線路外に撤去して車両周りを点検するなど、運転再開まで30分はかかる。ブレーキなど機器の故障が見つかれば、運転見合わせは数時間にもなり、後続列車の手配など影響は多方面に及ぶ。

 そこで、JR東は動物が線路に近づかないよう対策を進める。今のところ効果が高いのは、赤外線センサーで接近を感知し、動物の嫌う青色の光と超音波で追い払う装置だ。17年度以降、「害獣王(がいじゅうおう)」の名前で東北線や仙山線などに設置され、衝突はゼロ。ただ、守備範囲は半径約6メートルで、1台当たり20万円とお高いのがネックだ。

 動物の侵入を防ぐフェンスも、これまでに3線区(約1・3キロ)に取り付けており、衝突の報告はない。こちらも、1メートル当たり4万円と割高だ。今年度も地形などの条件から「害獣王」が置けない東北線と仙山線の2カ所(約600メートル)に設置する。

 費用が安いのが忌避剤(きひざい)。イノシシには唐辛子エキスが入ったものを、シカにはヒトデを原料にしたものが有効で、線路の周辺に作業員がまく。人件費を除けば1メートル当たり350円。1度まくと3カ月は効果が続き、衝突件数も減ることが確認されているという。

 JR東の担当者は「過去の衝突実績が多い区間から優先的に対策を進めている」と話す。(志村英司)

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