帰れぬ町、2キロの「桜トンネル」 バスで9年ぶり巡る

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床並浩一
【動画】参加者たちはバスの中から見頃を迎えた桜並木を楽しんだ=杉本康弘撮影
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 東北の桜の名所、福島県富岡町の夜(よ)の森(もり)地区で、桜まつりが6日、始まった。原発事故に伴い、桜のトンネルとして知られる約2キロの桜並木は、大半が帰還困難区域に指定されているが、この日限定で9年ぶりに観桜バスが乗り入れた。八分咲きの桜に、花見客は笑顔をみせた。

 前日からの暖かさで一気に開いた桜。県内のいわき市郡山市を出発した避難者用バス8台のほか、会場に10台のバスが待機し、順々に桜並木を巡った。2010年春を最後に、同区域内の夜の森の花見は途絶えていた。

 富岡町からいわき市に避難している女性(78)はバスに乗り込み、「孫と一緒に見た昔の桜を思い出しました」と懐かしんだ。今回は町外の人も立ち入りが認められ、郡山市から来た男性(72)は「圧巻の光景です」と話した。

 東京電力福島第一原発事故で全町避難を強いられた富岡町。1900年ごろから植樹が進められ、道路を覆うようになった桜のトンネルだが、避難指示を受け、立ち入りが厳しく制限されるようになった。17年春に町面積の9割で避難指示が解除されたが、夜の森の桜は大半が帰還困難区域にあり、町民らは区域を隔てるゲートの外から眺めるほかなかった。

 町には、町民らから「近くで桜を見たい」という声が寄せられた。帰還を促したい町も、ふるさとを身近に感じてもらいたいと、国にバスでの観桜ができないか、訴えた。7日までの桜まつりの間、6日に限って乗り入れが実現した。

 町の居住人口は922人(1…

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