(各駅停話)井荻駅 緑寄り添う科学の道

塩入彩
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 駅の真横を、環状8号線が横切る。踏切があった頃は都内有数の渋滞地点だったが、1997年の地下トンネル開通で街は一変した。「空気がきれいになった」と評判の一方、「活気がなくなった」と嘆く声も。そんな中、新たなまちづくりのなかで、緑道が注目されている。

 駅南側の商店街を一歩入ると、季節の花や樹木に囲まれた遊歩道がある。昭和中頃に井草川を埋め立ててできた道で、住宅街をぐねぐねと貫く。杉並区は2005年、この道を含めた全長12キロを「科学と自然の散歩みち」として整備した。

 区内に住むノーベル物理学賞受賞者の小柴昌俊博士が「ぐるっと回れる散歩道があれば」と提案したことがきっかけだった。提案通り、駅前や周辺の公園を周遊できるように道がつながった。小柴博士の手形が刻まれたタマゴの石像や、地元の小学生らが作ったオブジェも沿道に置かれた。

 「緑は街の資産。今ある良さを磨いていきたい」と地域のまちづくり協議会に参加する林昭男さん(82)。協議会では、今後さらに沿道の緑を増やそうと話し合っている。人々の暮らしに木や花が寄り添う、そんな街を目指して。(塩入彩)

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