
弘南鉄道大鰐線で2023年8月に起きた脱線事故に絡み、国の運輸安全委員会は27日、レールに生じた大きなゆがみによって車輪がレールに乗り上げた脱線だったとする事故調査報告書を公表した。同委員会の担当者は取材に「乗り上がり脱線は全国的にあまりない事故。今回は補修の不備やレールの高さ設定など複合的な原因で起きた」と語った。
脱線事故は、大鰐線大鰐駅と宿川原駅間での右カーブで起きた。2両編成の車両にいた乗客・運転士計19人にけがはなかった。
報告書によると、列車がカーブを曲がる際、レールが非常に大きくゆがんでいたため、2両目の左側の車輪がレールに乗り上がって脱線した。
レールがゆがんでいた原因として、同社の補修体制の不備を指摘。未補修のレールがあったほか、補修した場合でも、バールなどの工具で線路を押して動かすだけだった。
事故原因として、列車が曲がる際に車体が過度に傾いて外側の車輪にかかる重さが軽くなり、車輪がレールに乗り上がりやすい状態になっていたことも挙げた。車体の過度の傾きは、外側のレールが高過ぎたことが原因だった。
報告書は合理的な判定基準を基に補修箇所を絞り込み、より手厚く補修する必要があると指摘した。事故を受け、弘南鉄道はカーブを曲がる際の車体の傾きを減らすため、外側のレールの高さを低くしている。
報告書は、線路保守は少人数で行われ技術継承が難しく、「地域鉄道に共通する課題」とも指摘。弘南鉄道は事故後、技術力の向上を目的にJR東日本と連携し、保線担当者や幹部職員が線路修繕などの指導を受けている。
弘南鉄道の船越信哉常務は「軌道の補修整備を行っており、引き続き安全運行に努める」とコメントした。