
鹿児島県内の一部公共交通機関は4月、運賃・料金を改定する。鉄道ではJR九州が平均15%、路線バスでは南国交通が平均6.7%値上げする。燃料高騰や人材確保を背景に事業者の価格転嫁が進む一方、生活に欠かせない移動手段でもあり、家計への負担増は避けられそうにない。
JR九州の初乗り普通運賃は30円増の200円となる。県関係の在来線はいずれも鹿児島中央から伊集院が70円増の450円、加治木までが80円増の560円など。九州新幹線指定席で鹿児島中央から博多は現行1万640円が1万1950円、熊本までは7070円が7970円になる。
JR九州の値上げは消費増税時を除き1996年以来29年ぶり。年168億円の増収を見込み、鉄道網維持のための設備投資や災害対策、社員の待遇改善に充てる。運賃改定で通学定期は16.0%アップ。通勤は割引率も見直したため30.3%上がる。駆け込み購入による混雑が予想されるため、JRは一部のみどりの窓口を延長して対応する。
南国交通のバス初乗りは鹿児島市中心部が30円増の230円、北薩、姶良方面は40円増の200円となる。業界は運転手不足による減便・廃止が深刻化する。同社は2023年12月、消費増税を除き28年ぶりの運賃上げ後、増収分を原資に賃上げを実施。一層の待遇改善を進めたい考えだ。
鹿児島交通と南国交通の共同運行で、鹿児島市街地と鹿児島空港を結ぶ連絡バスも100円増の1500円に上がる。
離島と本土を結ぶ定期船も例外ではない。鹿児島-種子島のフェリー「プリンセスわかさ」を運航するコスモライン(鹿児島市)は、原油価格上昇分を運賃に転嫁する調整金を片道100円増の400円とし大人普通は5100円になる。
種子屋久高速船は4月15日、鹿児島-種子島の運賃を200円増の1万500円に上げ、高速船老朽化の対策に充てる。5月からは全区間で調整金を100~500円上げるため、種子島便は1万1000円となる。
甑島商船は3月20日に燃料高や船員不足対策として値上げ。串木野新港発着のフェリー(旅客)が460円増の2800円、川内港発着の高速船は630円増の4070円となった。
交通機関の値上げが続く中、利用者の反応はさまざまだ。4月から息子が私立高校に入学し、JRの通学定期を検討する同市のパート女性(44)は「出費がかさむ時期での運賃上げはきつい」。南国交通を利用する同市の無職女性(74)は「免許は返納してバスしか足がない。減便されるよりも運転手の待遇改善のためなら仕方がない」と理解を示した。
