
“鉄っちゃんアナ”としても親しまれる鉄道通のフリーアナウンサー・羽川英樹さんのラジトピコラム「羽川英樹の出発進行!」。今回、羽川アナがレポートするのは湘南モノレールの『大船』→『湘南江の島』です。
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【動画】鉄アナが実況レポート!湘南モノレール『大船』→『湘南江の島』
神奈川県の『大船』(鎌倉市)~『湘南江の島』(藤澤市)の6.6kmを結ぶ湘南モノレールは、この3月で開業55周年を迎えました。ここは国内では珍しいぶら下がり型の「懸垂式」を日本で最初に導入したモノレール会社なんです。
いま国内でモノレールといえば「跨座式」(車両がレールにまたがって走行するタイプ)が主流で、東京モノレール・多摩都市モノレール(多摩モノレール)・舞浜リゾートライン(ディズニーリゾートライン)・大阪モノレール・北九州高速鉄道(北九州モノレール)・沖縄都市モノレール(ゆいレール)の6社が採用。“懸垂式”は今では湘南と千葉都市モノレールの2社だけという貴重な存在になってしまいました。
そんな懸垂式が活躍する湘南モノレールの始発駅『大船』ではJR線と接続し、上野東京ラインや湘南新宿ラインの15両編成の列車や、特急・成田エクスプレスに出会うこともできます。
JR駅に隣接する1線2面のホームが湘南モノレール『大船』。3両編成の5000系が7分30秒おきに発車。駅そばの丘の上に鎮座する大船観音に見送られながらモノレールの旅は始まります。
懸垂式でまず驚くのは発車時の加速のすごさ。しかも出発してすぐに大きく左に右にカーブしながら、道路走行中の車の真上をスイスイと駆け抜けます。これまで跨座式にしか乗ったことのない筆者にはまさに新鮮な体感でした。
『富士見町』を過ぎて右手に広大な三菱電機・鎌倉製作所がみえてきたら、途中6駅で乗降客の最も多い『湘南町屋』。ここには鎌倉市最大の工業地帯が広がり、従業員利用などで朝夕はかなり混雑します。
その後、勾配を下って本社と車庫も近くにある中間拠点『湘南深沢』に到着です。駅前のかつてJR東日本大船工場(旧鎌倉総合車両センター)があった広大な空き地は、いま住宅や商業施設が入る再開発地区として計画されています。
道中アップダウンもけっこうあり、トンネルも2つ通過しますが、1つ目の鎌倉山トンネルへは最高時速75kmで進入していきます。
トンネルを抜けると人気の高級住宅地『西鎌倉』へ。おしゃれなお店や邸宅街がゆったりとひろがります。
道路とほぼ同じ高さにホームがある『片瀬山』、鎌倉市から藤沢市に入ってホームから海が見える『目白山下』を過ぎ、2つ目の片瀬山トンネルを抜けると終点『湘南江の島』。ウラ鎌倉を抜けて『大船』からわずか14分での到着です。
ホームが駅舎の5階にあるので、改札を出ると屋上テラスにつながります。ここからは相模湾の壮大な風景とともに、晴れていれば富士山も一望できるんです。
すぐそばには人気の江ノ電(江ノ島電鉄)・江ノ島駅もあり、こちらは藤沢と鎌倉を結んでいます。駅前から始まる「すばな通り」は、おしゃれなカフェや雑貨店が並びインバウンド客の姿も多く見られます。弁天橋の近くで見えてくるのが小田急の片瀬江ノ島駅。竜宮城をイメージしたようなユニークな駅舎がひときわ観光客の目を惹きます。
弁天橋を渡って、日本三大弁財天のひとつとして鎮座する「江島神社」、島のシンボルとなる高さ60メートルの展望灯台「江の島シーキャンドル」、貿易商サムエル・コッキング造成の庭園跡(「江の島サムエル・コッキング苑」)などをゆっくり散策し、旬の名物しらす丼に舌鼓を打ちましょう。
この湘南モノレールは三菱サフェージュ式という懸垂タイプですが、メリットとしては▼騒音が少ない▼遠心力でカーブでも速度が落ちない▼景観をそこなわない▼分岐器の構造がシンプル▼積雪に強い、などがあげられます。
一方、デメリットは▼横揺れがある▼耐久年数が短い▼維持費が高くつく、といったところでしょうか。
今や国内では2社だけが採用する貴重な懸垂式モノレール。急勾配に急カーブにトンネルをまるでジェットコースターのように駆け抜けるのでアトラクション気分も味わえます。春休みの鎌倉・江の島観光のおりに、ぜひ一度乗車してみてください。(羽川英樹)