生かされた欧州の経験 鉄道のデザイナーに求められるものとは

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聞き手・瀬戸口和秀 写真・田辺拓也
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 2020年にデビューしたJR西日本長距離列車「WEST EXPRESS 銀河」、今春に登場した特急「やくも」の新型車両、10月導入の観光列車「はなあかり」――。これらの車両デザインなどを手がけたのは奈良県川西町出身のデザイナー・建築家の川西康之さん(48)だ。今秋投入される近畿日本鉄道の新型一般車両や、生まれ故郷にある駅のリニューアルにも携わった。その仕事ぶりを聞くと「対話」というキーワードが見えてきた。

 ――幼い頃から鉄道好きだったと聞きました。

 祖父が営む大阪の呉服店に、奈良から連れていってもらいました。非日常のなかで、電車がなじみになりましたね。小学生の時に九州旅行で乗ったブルートレインの「はやぶさ」は感動しました。車掌さんの真っ白な制服に、ピシッとベッドにしかれたシーツ、食堂車。全部覚えています。

 ――いつからデザインの道を考えていたのですか。

 高校生の時です。雑誌で、ある建物の完成予想図を見て衝撃を受けました。テーブルの上のブドウも一粒ずつ描かれ、「こんな美しい絵を描く人がいるんや」と。デザイナーの水戸岡鋭治さんでした。鉄道雑誌にJR九州の特急「つばめ」をデザインしたことも紹介されていて、鉄道のデザインがまちの風景を変え、それが文化になると知って「この道しかない」と決めましたね。

 ――大学院を経て、欧州で働…

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    佐倉統
    (実践女子大学教授=科学技術社会論)
    2024年8月5日7時0分 投稿
    【視点】

    鉄道のデザインとは、単に見栄えのいい車両や駅舎を作れば良しというのではなく、その地域の歴史や文化に根差し、人々が望むものを実現すること、という川西さんの発言にブンブンブンとうなずいてしまった。エコシステム、生態系としての鉄道ネットワーク。鉄

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