「押し鉄」ショック 駅員いなくなる四国8駅の公式スタンプが廃止へ
JR四国は16日のダイヤ改定にあわせて、香川、徳島、高知県の8駅に設置された公式の駅スタンプを廃止する。駅員を配置しない無人駅となるため。このほか、スタンプが地元の観光協会などに引き継がれる駅も4駅ある。各駅には惜しみながら押印する人らの姿が目立っている。
駅周辺の名所や名産などをあしらった駅スタンプは、旧国鉄が1970年代に観光キャンペーンにあわせて全国の駅に設置したことを機に、人気を集めるようになった。各駅での乗り降りを楽しみながらスタンプを収集する鉄道ファンは「押し鉄」と呼ばれる。
JR四国管内では現在、四国4県の63駅に公式の駅スタンプが設置されている(うち7駅は駅構内や周辺の観光案内所などに設置)。たとえば、高徳線の板野駅(徳島県板野町)のスタンプには「四国霊場三番札所のある駅」と記され、金泉寺と県境の大坂峠の山が素朴なタッチで描かれている。
このうちダイヤ改定前日の15日に廃止となるのは、端岡、高瀬(以上香川県)、板野、勝瑞、佐古、石井、羽ノ浦(以上徳島県)、旭(高知県)の8駅。
背景にあるのは、同社が特急列車が停車するような主要駅を含めて無人化を進めていることだ。駅員が不在になると、駅スタンプの管理が難しくなる。これまでも駅の無人化でスタンプが人知れず姿を消したことがあったが、同社は今回初めて公式X(旧ツイッター)で事前に公表したため、押し鉄らの間に波紋が広がった。
同様に無人駅となる佐川駅(高知県)のスタンプは1日に近くの観光施設に移された。伊予市(愛媛県)、伊野(高知県)、南小松島(徳島県)の3駅のスタンプも観光協会などに預けられ、18日から南小松島駅は駅構内の案内所、他の2駅は周辺にある観光施設で押せる。
「駅スタンプの世界」の著書がある高松市の鉄道カメラマン、坪内政美さん(49)によると、御朱印帳ブームなどの影響で押し鉄人口は増えている。「駅スタンプは現地に来た証明にもなるだけでなく、駅と乗客をつなぐ一期一会の存在。せめて廃棄はせず、イベントなどで押印できる機会を設けてほしい」と話している。