発言謝罪も撤回しなかった川勝知事 後任めぐり「前提が狂った」地元

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青山祥子 田中美保 南島信也
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 職業差別と受け取られかねない発言をして辞職表明した静岡県川勝平太知事は3日、記者会見を開き、「人の心を傷つけたことは大きい」と述べ、改めて謝罪した。その上で、リニア中央新幹線の2027年開業が延期され、議論に区切りがついたことが辞職理由だと強調した。知事は会見に先立って県議会の中沢公彦議長に6月定例会初日に辞職する意向を伝えた。知事選は6月20日告示、7月7日投開票の日程が有力視され、次の知事候補選びに向けた動きが加速している。

「知事になるなら、あなたのような方が」

 川勝知事は辞職表明直前の2日夕、元防衛副大臣の渡辺周衆院議員(62)=比例東海、立憲民主=に電話していた。渡辺氏は3日、東京・永田町で記者団に対し、「知事になるなら、あなたのような方が」と言われたと明らかにした。

 渡辺氏は「突然言われてもお答えできない」と即答を避けたという。そのうえで「自分の原点は静岡県で、あらゆる可能性は排除せずに考えなければいけない」と出馬に含みを残した。

 一方、知事は3日の会見で、渡辺氏に知事選で応援してもらったとして「私が出ない時は連絡を差し上げると話していたので、約束を果たした」と説明した。後継として打診したことは否定し、候補者選びや応援に関わらない考えを示した。

 県議会で知事を支えてきたふじのくに県民クラブは4日に総会を開き、候補者の検討を進める構えだ。田口章会長は「川勝県政で15年間やってきたことは間違っていなかった」と強調し、「川勝知事の『ふじのくにづくり』を高めていくのにふさわしい後継者がいるとしたら、積極的に関わっていきたい」とした。

突然の辞意 「前提が狂った」

 一方、県議会最大会派の自民改革会議は知事と対立し、自民党県連は川勝知事の5選出馬を前提に勝てる候補選定の準備を進めてきた。ある県議は「名前が11人挙がり、これから絞るところだった」と明かす。細野豪志衆院議員(52)=静岡5区=の擁立を模索する動きや静岡市出身の元官僚、県議の名前もあがるが、衆院議員の1人は「突然の辞職表明で前提が狂った」と話す。

 自民は派閥の裏金事件で支持率が低迷し、県内でも安倍派座長の塩谷立衆院議員=比例東海=に離党勧告の処分が下される見通しだ。県議は「自民が先陣を切って候補者を立てられる状況ではない」と打ち明ける。

 自民改革会議が3日の知事会見後に開いた総会では、一刻も早く候補者擁立に向けた努力を求める声があがった。4日も総会を開き、議論を加速させるという。

 増田享大代表は記者団に対し、「対立構図が県民にご迷惑をかけてきたことはあり、できるなら『オール静岡』で新しい知事を誕生させて、新しい静岡県づくりに向けたスタートを切るのが理想だ」と語った。

辞職に伴う知事選、7月にも投開票か

 川勝知事は3日、議長らに辞…

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    曽我豪
    (朝日新聞編集委員=政党政治、教育改革)
    2024年4月4日14時45分 投稿
    【視点】

    首相や閣僚、政党幹部、あるいは首長の辞意表明を何度も取材しました。その実感で痛感することは二つです。政治家は最後の最後、自分には「実績」があると言いたがること。同時に、失言や失政、不祥事の本質は認めようとしないことです。 川勝知事も、自分の

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