現場へ！　「銀河鉄道」100年後の旅①

　漆黒の闇夜の中、青い光に照らされた1台の蒸気機関車が、真っ白な蒸気を巻き上げてアーチ橋を渡っていく。

　東日本大震災の復興を祈念し、2014年からJR釜石線を走り続けてきた蒸気機関車「SL銀河」。

　最終運行となった6月11日夜、機関車が岩手県遠野市の「めがね橋」（宮守川橋梁〈きょうりょう〉、全長107メートル、高さ約20メートル）に差し掛かると、詰めかけた数千人の住民や鉄道ファンから大きな歓声があがった。

　地元の市民団体「宮守銀河まちづくり協議会」の八重樫正昇会長（77）は、「ありがとう」と書かれた横断幕を揺らした。

　故郷の詩人、宮沢賢治の代表作「銀河鉄道の夜」の熱烈なファンだ。

　1943年竣工（しゅんこう）のめがね橋はかつて人里離れた場所にあり、地域でもあまり知られていなかった。ところが、70年前後に付近に国道が整備されると、「銀河鉄道」のモデルになったのではないかと報じられ、観光客が押し寄せるようになった。

　周囲の木を伐採し、景観保全に取り組んだ。震災の日も、住民の安否確認を終えて見に行くと、無事に立っていてくれた。

　最終運行の夜。機関車が別れを告げる汽笛を鳴らすと、見慣れた景色が涙でにじんだ。

　「まるで本物の『銀河鉄道』を見ているみたいだ……」

　今も多くの人を魅了し続ける賢治の名作「銀河鉄道の夜」。

もとになった旅がある

　実はそのもとになったとされ…