佐賀に「都落ち」したお笑い芸人 戻りたくなかった故郷で見つけた夢

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豊島鉄博
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 青空の下に設けられたステージに、ジャケット姿のひと組のお笑いコンビが勢いよく登場した。

 西九州新幹線の開業1年を記念し、嬉野温泉駅(佐賀県嬉野市)の駅前広場で開かれたイベントだ。

 「どうもー! ありがとうございます!」

 「2人とも出身は佐賀県なんですよ」

 「ぼくら、サガテレビとかにちょこっと出ているんですけど、知っていますか?」

 「ちょっと待ってください、僕の昔のバイト先の先輩が来ていますね! 15年ぶりぐらいの再会です!」

 お笑いコンビ・メタルラックの「のなか」(36)と「美意識タカシ」(36)の2人が地元出身であることを前面に打ち出しながらトークを始めると、200人ほどの聴衆からドッと笑い声があがった。

 その後も、客席とじゃんけん大会をしたり、会場にいた子どもの似顔絵を描いたり。最後に漫才を披露し、20分近い舞台は終始、にぎやかに進んだ。

 2人が地元の佐賀県を中心に活動するようになってから、ちょうど10年。

 「最初はずっと、佐賀で芸人として活動するのは嫌でした」

 当初の思いを、タカシさんはそう振り返る。

 地元で就職し、結婚して、子育てをする。そんなレールから飛び出し、お笑い芸人として「M―1グランプリ」の決勝に出て、東京のテレビで活躍する――。

 多くの若手芸人と同じように、そんな姿を夢見ながらお笑いの道に進んだ。

 だから、所属する事務所から佐賀県で活動するようにと言われたときには、「都落ち」とすら思った。

 上京して売れていく同世代の芸人も出てくるなか、自分たちは地方にとどまり、地味な仕事ばかり。

 焦りや不安から、モチベーションを保てなくなりそうなときもあった。

 しかし、いまは違う。

 全力で、佐賀で活動する。

 そんな気持ちを引き出してくれたのは、郷里の人たちの言葉だった。

「まったくウケない」厳しい現実、地元の舞台で目にした光景

 2人が知り合ったのは、高校…

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