乗客100人で呑み鉄 六角精児さんも訪ねた「日本の原風景」の路線

西本秀
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 鉄道ファンの俳優六角精児さんを招いて、中国山地を走る赤字ローカル線、JR芸備線について話し合うシンポジウムが23日、広島県庄原市であった。六角さんも「乗客が少なく厳しい」と危機感を語る路線を盛り上げようと、主催する市民グループは翌24日、お酒を飲みながら鉄道旅をする六角さんの番組にあやかり、「呑(の)み鉄」貸し切り列車を運行。車内で地酒の利き酒会を開催した。

 JR芸備線は岡山県と広島県を結ぶローカル線。六角さんはシンポジウムの冒頭、「素朴な山と川と田んぼの風景」と芸備線の魅力を語った。

 六角さんは昨年、備中神代駅(岡山県新見市)―備後落合駅(広島県庄原市)間を乗車した。山あいの川沿いを走る車窓の景色について、「派手ではないが、日本の原風景が見られる。風が抜け、走ると気持ちいい」と振り返った。

 だが当時、地元の乗客は1人しかおらず、「現実の昼間の芸備線は厳しい」とも感じたという。

 観光列車など各地の成功や失敗を見てきた経験を踏まえ、「ダメもとで遊び心で必死にやることが大切」と語り、「外の人間が乗りに来ようと思うのは、沿線の人たちが熱心に取り組んでいるから。住民が考えることで、これから先につながる」と呼びかけた。

 JR西日本は10月早々にも、国に要請して、芸備線のあり方を見直す議論を始めようとしている。

 六角さんはシンポ終了後の取材に、「住民としっかり話し合ってほしい。国が造った線路なんだから、無くすにしろ残すにしろ、国は慎重に判断して」と語った。

 今回のシンポは、地元住民らでつくる「芸備線魅力創造プロジェクト」(横川修代表)が呼びかけ、2カ月間のクラウドファンディングで約311万円の資金を集めて実現した。

 24日の貸し切り列車は「呑み鉄鈍行ちどり足」号と名付けて運行し、約100人が乗り込んだ。プロジェクトは今後も芸備線の活性化に取り組む。西本秀

【連載】線路は続くか

廃線の危機を迎えるローカル鉄道。いま何が起きているのか。現場から報告するシリーズです。

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