史跡の石垣に謎の数字「26」 文化財に油性ペンで書いたのは誰?

山本知弘
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 三重県鈴鹿市にある県史跡「神戸(かんべ)の見付(みつけ)」の石垣に、謎の書き込みが見つかった。黒々と記されていた数字の「26」。何を意味しているのか。

 神戸の見付は、近鉄鈴鹿市駅から歩いて10分ほど、鈴鹿市須賀3丁目と神戸8丁目にまたがる市所有の県史跡。伊勢街道神戸宿の北の入り口にあたり、江戸期には神戸城下の防御や治安のために木戸が設けられていた場所と伝わる。当時の石垣が街道の両脇に残り、近くには見付の歴史や1988年に県史跡に指定されたことを記した看板が立っている。

 「何か書いてあるんやけど」。石垣の壁面に直径15センチほどの書き込みがあると近隣住民から市に連絡が入ったのは、7月25日午後4時ごろだった。

 200~300メートル離れた場所にあるごみ集積所の看板には、「25」の数字があることも知らされた。文化財課の職員が駆けつけて確認したところ、さらに周辺の看板類に「12」「16」「17」と書き込まれているのが次々と見つかった。

 数字が書かれた場所は、いずれもごみ集積所の付近だった。「ごみに関係しているのでは」と見当をつけた文化財課が廃棄物対策課に連絡。翌日になって、資源ごみ収集の委託業者によるものだと判明した。

 業者は、ごみ収集時に時刻や場所を記録している。数字は集積所の管理番号で、「作業効率を上げたい」と、4月に採用された従業員が許可を得ずに、集積所そばの壁面や看板に油性ペンで書き込んでいた。目の前が集積所の神戸の見付の石垣もその一つで、従業員は文化財とは知らなかったという。この業者は市内全域で資源ごみを回収しており、その後の調査で、ごみ箱や掲示板など、市内700カ所以上に数字の書き込みが見つかった。

 文化財の被害は神戸の見付だけだったが、関係者の衝撃は大きい。廃棄物対策課の高山剛さんは地元学区出身で「あそこには侍がいた」と聞いて育った。「許可なく人のものに書くだけでもだめなのに」という。史跡の「毀損(きそん)届」を県教育委員会に出すことになった文化財課の大窪隆仁課長も「文化財にこうした書き込みがされるのは想定外だった」と話す。

 県教委社会教育・文化財保護課によると、文化財への書き込みは県条例で60万円以下の罰金などと定めている。ただ、業者が文化財と知らず、傷つける意図もなかったとして、条例違反に問えるかはわからないという。担当者は「文化財保護の精神に反する行為」としながらも、地域の文化財の価値についての周知不足も背景にあるとみて、いっそうの普及啓発に努める意向だ。

 県教委の助言を受けた文化財課の職員らは「26」の書き込みが見つかった2日後、除光液を浸したスポンジで石垣を拭った。数字は以前ほど目立たなくなったが、完全には消えていない。どうすれば石垣を傷めずに跡を消せるか、県教委と復旧方針を検討しているという。(山本知弘)

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