リニア残土「先送り」の岐阜県御嵩町 町長選の行方に町民が注視

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本井宏人
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 リニア中央新幹線のトンネル工事で出る残土を巡って、対応に注目が集まる岐阜県御嵩町で、町長選と町議選(定数12)が20日に告示される。4期務めた渡辺公夫町長(69)は決着を先送りして引退する。町長選に立候補を予定する新顔2人はいずれも「地元の意向に沿った対応」を掲げ、違いは見えにくい。25日に投票、即日開票される。

 トンネルの準備工事が始まっている上之郷地区。13日夜、地元の全16自治会でつくる「上之郷地区リニアトンネル残土を考える会」の役員らと、町のリニア対策担当職員4人が、意見交換のため向き合った。

 「フォーラムの総括ができていない。不安解消にはほど遠かった」「町長への忖度(そんたく)か町民か、どちらを向いているのか」。考える会側が迫った。役場側は「組織として町長の考えに沿って動いてきた。新町長には、みなさんの意見を伝える」などと答えるにとどまった。

 考える会が話題にしたフォーラムとは、町が昨年5月~今年3月、有識者を交えてJR東海の担当者と協議したオープンな会合のこと。工事では重金属を含む要対策土が出る可能性があり、渡辺町長は2021年9月、残土受け入れを前提に「町や町民がJRに安全性をただす場にしたい」と提案した。

情報公開めぐる町の姿勢に批判も

 ところがフォーラムは初回から、「受け入れ前提」への反発が町民から相次いだ。さらに、受け入れ候補地に国選定の重要湿地が含まれていることが昨年11月の報道で明らかになった。町は、この事実を把握しながらフォーラムなどの場で公表していなかったため、町の情報公開の姿勢にも批判が集まった。

 考える会は今年3月の最終回の席で、上之郷地区の総意として、要対策土の受け入れ反対と環境保全を求める決議書を、町とJRに提出した。

 渡辺町長は「(JRの残土計画が)フォーラムで十分に安全だと判断する段階に至っていない」と、決着先送りの理由を文書で回答した。考える会の纐纈健史(こうけつけんし)会長(72)は「町は、フォーラムの進展次第では要対策土を受け入れない選択肢もあると言った。町民の理解が得られなかったのは明らかだ」と反論する。

 町長選に立候補を表明している前町議の福井俊雄氏(68)は、「地元住民が反対する以上、要対策土は引き受けない」。元県職員の渡辺幸伸氏(55)は「ゼロベースで地元と対話し合意形成」と、いずれも渡辺町政からの方針転換を打ち出す。

 纐纈会長は「新町長になったらどうやって問題解決に導くのか。選挙戦を注視したい」と話す。

■庁舎移転も見通せず…

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