雪国の鉄路を守るラッセル車、積雪ゼロでも「活躍」する理由とは?

筋野健太
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 青森県西部を走るローカル線、弘南鉄道(青森県平川市)。豪雪地帯で暮らす人たちの生活を守るため、昭和初期製の真っ黒なラッセル車と今年100歳になる電気機関車のベテランコンビが、今年の冬も活躍している。

 「出発進行。警報機オーライ」

 出発する黒石駅(同県黒石市)構内の除雪を終えた乗務員が乗り込むと、ラッセル車は慌ただしく駅を出発した。

 弘南鉄道弘南線を走るラッセル車「キ104」は、車両の前部が操縦室と一体になったラッセル部で、くさび形の先頭部分で線路上の雪をすくい上げ、列車の左右に付いた可動式の排雪翼(ウィング)で線路脇にはね飛ばして除雪する。ラッセル車自体には動力が無く、コンビを組む電気機関車「ED333」に押してもらって雪が積もった線路を進む。ラッセル車は高さ約4メートル、幅約2・6メートルと一般車両に比べて細く、背が高い。見た目から「北の鉄人28号」と呼ぶ人もいる。

 弘南線の終着駅、弘前駅がある弘前市の12月から翌年4月までの平年の累積降雪量は約7メートル。今冬は例年並みの雪の量で、2月24日までに弘南線で21回、大鰐線で20回出動した。

 全国のローカル鉄道と同様、弘南鉄道もその経営は厳しい。旅客数は昭和40年代がピークで、その後マイカーの普及や沿線人口の減少などで右肩下がりになり、2011年度から赤字が続いている。21年度は新型コロナウイルス感染拡大の影響などで過去最大の1億9836万円の赤字だった。

 そんな厳しい経営環境の中、ラッセル車は収益面でも会社に貢献している。

 弘南鉄道では鉄道愛好団体の要望を受け、約15年前から貸し切りの撮影会を企画。撮影日当日の積雪状況にかかわらず必ずラッセル車が撮影できると好評で、毎年数多くの貸し切り撮影が行われている。昨年4月からは、個人でも気軽に参加できる車両基地見学とラッセル車の操作体験を冬の期間以外に行っている。

 「ラッセル車は冬の除雪以外でも、なくてはならない大切な収益源になっている」と同社の中田正志営業課長(51)。

 ラッセル車の貸し切り撮影や操作体験、車両基地見学の問い合わせは同社(0172・44・3136)。(筋野健太)

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