ドクターイエローから宇宙へ、JR西日本の「異端児」が起こした変化

有料記事経済インサイド

松岡大将
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経済インサイド

 「宇宙でなんかやりたい!」

 そう叫んだ一人の社員の情熱が、実を結び始めている。

 JR西日本の宮崎祐丞(ゆうすけ)さん(47)。もともとは新幹線の保守点検を担当し、黄色い点検車両「ドクターイエロー」を走らせて線路のゆがみを測っていた。いまは、デジタルソリューション本部データアナリティクスのチームを担当部長として率いる。AI(人工知能)を用いて、社内に眠るデータを分析し、設備の保守などを効率化したり、そうしたシステムをほかの企業に販売したりする仕事を担う。

 宮崎さんたちは今年9月、JAXA(宇宙航空研究開発機構)に、あるシステムを売り込んだ。

 人工衛星の故障を、AIを使って予測するものだ。故障するとGPSなどの機能に支障がでる。事前に把握すれば、影響を最小限にとどめられる。JAXAへのプレゼンテーションで、メンバーたちは力を込めた。

 実はこれ、改札機の点検に利用しているものの応用だ。社内では、改札の利用状況や故障の記録を分析。以前は1~3カ月に1度必要だった点検を、システム導入によって半年に1度に減らした。費用も約3割減になった。宮崎さんに自信はあったが、「こんな技術、とっくに研究していると言われるんじゃないかと不安だった」。

 心配をよそに10月、JAXAとの協業が決まった。「鉄道の軌道から衛星軌道に進出だ」。スケールの大きさにわくわくした。

 宮崎さんらの部署が立ち上がったのは2017年。鉄道、商業施設の運営に並ぶ新しい柱にする狙いがあった。直前まで新幹線に関係する業務をしていた宮崎さんにとってデータ分析は初めての仕事。一緒に部署を立ち上げたほかの3人も素人だった。

 まず社内の業務を洗い出すことにした。

 立ちはだかったのは、「KKD」の壁。「勘」「経験」「度胸」の頭文字で、社内で重視されている伝統的な考え方だ。

 部署間の壁は厚かった。データを集めようと各部を回ると「門外漢に何が分かる」。それでも「困りごとはありませんか」と地道に聞き回り、保守に関するデータを集めた。

 原点となった経験がある。

 かつて新幹線の保守点検を担…

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