4月13日に開幕した大阪・関西万博。
期間中いつでも入場できる「通期パス」を買ったので、こまめに訪ねていろいろと巡りたいと思っています。
5度目の訪問は4月26日、ゴールデンウィークの初日となりました。日中でもさほど暑くなく、むしろ日陰だと若干ひんやりするぐらいの快適な気候でした。
- 並ぶ暇もない万博
- 「奇跡の一本松」のデジタルモニュメント
- 織物を主題にしたフィリピンパビリオン。圧巻のタペストリー
- 世界の人々を下から支える組織。国際赤十字・赤新月運動館へ
- イギリスのまずくないフィッシュアンドチップス
- 大屋根リングから沈む夕日を眺める
- いつか正面からちゃんと見たい「アオと夜の虹のパレード」
- 不意に始まった伊勢神宮奉納花火
- 世界の国々を上で繋ぐ組織。国際連合パビリオンへ
- 退場時のボランティアの方々の見送り
- 4月26日のまとめ:未来社会をデザインするのは、テクノロジーではなくやっぱり人の力だ
並ぶ暇もない万博
この日は土曜日ですが、17時前にパビリオンの予約を入れていて、夜には「JAPAN FIREWORKS EXPO」として伊勢神宮奉納全国花火大会の花火が上がる予定になっていました。
そのため、早くに行く必要はなかったので、15:30ごろにOsaka Metro中央線の夢洲駅に到着。
そして駅を出て、仕切りに沿って歩いていたらあっという間にゲート前で、すぐに手荷物検査をして入場。この間たった5分で何もする暇がありませんでした。
「奇跡の一本松」のデジタルモニュメント
入場した東ゲートの近くには、復興庁の企画として「3.11を忘れない 想いをつなぐ未来レター」と題したディスプレイが置かれています。
そこには、岩手県陸前高田市の復興のシンボルとして知られる「奇跡の一本松」が描かれていますが、この松の部分は寄せられたメッセージが集まることでできているようです。
メッセージはたぶんディスプレイの下にあるQRコードから送ることができるのだと思いますが、下記のサイトからも送ることができます。
expo2025-portal.reconstruction.go.jp
ディスプレイを見ていると、次々とメッセージが現れては松の木に取り込まれていっていたので、続々と新しいメッセージが来ているのだと思っていました。
この時、メッセージ件数は2,804件だったのですが、退場時に見てみたら2,812件で、5時間ほどで増えたのは8件であり、実は「続々と増えていた」わけではありませんでした。ただ、着実に増えてはいるようです。
一本松の背後、実際にはあるはずの防潮堤がないことになっているのを見て、ちょっと思うところがあったりもしつつ。
織物を主題にしたフィリピンパビリオン。圧巻のタペストリー
パビリオンの予約まで1時間ほど時間があるので、予約なしで見られるパビリオンを見ることにします。東ゲートから大屋根リングをくぐってすぐのところにあるフィリピンパビリオンが、待ち時間25分ほどということなので並ぶことにしました。
その待ち時間の間に当日予約をして、いろいろ苦戦しましたが2つ目のパビリオンの予約に成功しました。


フィリピンパビリオンの外観は、竹籠のように編まれたたくさんのパネルによってできていますが、その1つ1つが織物のようにも見えます。大屋根リングから見えるように設けられた大きなスクリーンには、織り機での作業をイメージしたムービーが流れていました。
内部に入ると、フィリピン国内の各地域の特色を表現したタペストリーが圧巻で、一つ一つじっくり見たくなる作品ばかりでした。
途中には、AIを活用して、目の前の人の動きに反応してキャラクターが動くスクリーンがあったり、顔をデコったりしてくれるマシンがあったりしましたが、最後の販売スペースにあるのも数々の織物製品。
国のいろんな物事を総花的に紹介するより、特定のジャンルに絞った展示の方が見ごたえがあるのかな、という気がしました。
テイクアウトのスペースもあるのですが、どうもまだ準備中だったようです。






フィリピンパビリオンを出ると、通路を挟んで向かいにあるマレーシアパビリオンでは、来場者も巻き込んだ賑やかなダンスが繰り広げられていました。
会場の各所にあるポップアップステージも含め、いろいろなところでパフォーマンスが行われているのも、場内の楽しい雰囲気を作り出していると思います。
世界の人々を下から支える組織。国際赤十字・赤新月運動館へ
この日、3日前予約で予約していたのが16:48からの国際赤十字・赤新月運動館でした。
日本では赤十字として知られていますが、十字はキリスト教を連想させるということで、イスラム教国では赤新月のマークが用いられているそうです。逆に言えば、宗教を超えた普遍的な理念に基づく活動と言えるのだと思います。
当日予約で取れたのが国連パビリオンだったので、違った役割を持つ国際組織のパビリオンを観れるという意味ではよかったと思います。
最初のスクリーンでは、世界の誰にもかけがえのない暮らしがあることが描かれ、次のシアターでは、それを奪い去る紛争や自然災害といったできごと、それに対する赤十字の役割といったことが描かれます。とり上げられていたのはシリア紛争、イスラエルのガザ地区侵攻、そして東日本大震災や阪神・淡路大震災といった日本での自然災害でした。なお、このシアターでは撮影は禁止となっています。
最後の展示では、赤十字の活動の紹介とともに、シアターでも描かれた東日本大震災の後の石巻赤十字病院に掲げられた旗が展示されていました。


(右)東日本大震災の後、石巻赤十字病院に掲げられていた赤十字の旗
赤十字というといつも組織的に活動しているイメージがあるのですが、その組織を構成するのも一人一人の人間です。人間なので当然弱さもあり、それぞれが危機に直面して苦悩しながらも人道支援に向き合っている、ということが描かれていたように感じました。石巻赤十字病院の風雨に晒されて朽ちた旗が、そのシンボルとして力強いメッセージを発していたように思います。
イギリスのまずくないフィッシュアンドチップス
この後は花火に備えて時間を空けていたので、とりあえず夕食をとろうと会場内を歩きます。
イギリスパビリオンのレストランの列がそんなに長くなかったので並んでみたら、その列のそばにいたイギリス人にすぐに「Fish-and-chips?」と声をかけられました。
よくわからないまま「Yes?」と答えてみたら、フィッシュアンドチップスのセットを売ってくれるようだったのでそのまま、「credit card」とか「insert」とか片言の英語でやり取りしつつ購入しました。機会があれば食べてみたかったイギリスの名物料理だし、並ばずに買えたのはラッキーでした。
「イギリスの料理はまずい」と言われ、その代名詞ともなっているフィッシュアンドチップスですが、これはそんなことはありませんでした。カリッと揚がった衣の中にはジューシーな白身魚の身。タルタルソースは当然ピッタリだし、アボカドっぽい緑のペーストも味変になってよかったです。ポテトもホクホクして申し分ありません。結構ボリュームがあって、当面食べなくてもいいぐらい満足しました。
大屋根リングから沈む夕日を眺める
食事の後は大屋根リングの南側に上がって、しばらく風景を眺めていました。
西に沈んでいく夕日の他、南港を出港する貨物船や、大阪と九州を結ぶさんふらわあ号を眺めたりして、ゆったりとした時間を過ごせるのがとてもいいなと思います。
海の向こうに神戸の街のシルエットが見えるのもよかったです。
いつか正面からちゃんと見たい「アオと夜の虹のパレード」
すっかり日が暮れて19時を過ぎ、水上ショー「アオと夜の虹のパレード」が始まりました。水面に聳え立っているのが、水の幕に映像を映すメインスクリーンです。
今回は正面から外れた無料観覧エリアから見ましたが、いつかちゃんと予約をとって正面から見たいと思っています。
不意に始まった伊勢神宮奉納花火
ショーが終わってしばらくそのままとどまっていると、いきなり花火が打ち上がりました。
JAPAN FIREWORKS EXPOとして、全国の花火が月替わりで打ち上がるという企画で、この日は三重県の伊勢神宮奉納全国花火大会による打ち上げでした。
会場に三脚は持ち込めないので長時間露光での写真は諦め、動画で撮ることにしていましたが、次々と打ち上がる花火についていくのがやっとという感じでした。
会場で圧倒的な存在感を見せる大屋根リングすらちっぽけに見える大玉、花火の水面への映り込みなど、この会場ならではの素晴らしい花火となったように思います。


世界の国々を上で繋ぐ組織。国際連合パビリオンへ
20時からは当日予約した国際連合(国連)パビリオンへ。夕方に訪ねた赤十字・赤新月パビリオンの隣にあります。赤十字が世界の人々を下から支える運動だとすれば、国連は世界の国々を上で繋ぐ存在と言えると思います。
国連が担っているさまざまな役割や、世界が抱える様々な課題、国連が目指す将来像などを展示しています。
国連というと国連総会、安全保障理事会、あとはコロナ禍でよく登場した世界保健機関(WHO)、世界遺産に絡んで国連教育科学文化機関(UNESCO)などが日本ではよく知られていますが、最初の展示では、他にもいろいろな組織があり、それが我々の生活のさまざまな場面に影響しているということを知ることができます。


次に案内される、巨大なスクリーンとなっているドームでは、国連が目指す将来像が描かれます。
この日は、国連開発計画(UNDP)の企画として、6500万年前に絶滅した恐竜が国連の議場に登場し、気候変動に警鐘を鳴らし「絶滅を選ぶな」と演説する映像が上映されました。
その後はおそらく通常の映像で、国連事務総長のメッセージの後は、国連が目指す世界の将来像と、そのための呼びかけが描かれました。


最後には、「世界に隠された20の悲劇」として、大きな絵に描かれた様々な課題を探す展示がありました。
その一部を撮影した上の写真の中にも、「海面上昇」「難民の増加」「大気汚染」「人身売買」「教育のジェンダー格差」「児童労働」「食糧難」「いじめの深刻化」「地雷・不発弾」「民間、市民への攻撃」「安全な水の不足」といったことが描かれています。
国連に関しては、安全保障理事会での拒否権を持つ国々の対立により、「機能不全」などと指摘されていることはご存じの方も多いと思います。
当初構想したようには機能していない面はあるものの、国連は、特定の国の正義に肩入れして世界を分断させるための組織ではなく、むしろ「分断させないための組織」と言えます。分断に手を貸すぐらいなら何もできない方がマシ、というのが国連のあり方です。
日本では、国益を実現するために国連に多大な期待をかけたり、それが裏切られた反動で国連など不要というような言説も見られますが、あくまで調整機関というように捉えると実態に近くなるのではないか、と考えます。
ショップで売っていた、国連のロゴが描かれた醤油せんべい(800円)を買いました。こういうよくわからないギャップはとても好物です。


退場時のボランティアの方々の見送り
21時近くなったゲートでは、多くのレーンはふさがれ、退場者は一部のレーンに誘導されます。その時、ボランティアの方々がゲートの前に並んで誘導しつつ、手を振るなどして見送りをされているのがとてもいいのです。「来てよかった」「また来たい」と思えます。
4月26日のまとめ:未来社会をデザインするのは、テクノロジーではなくやっぱり人の力だ
たまたまこの日に体験したものが偏っていたのか、あるいは赤十字パビリオンの影響が大きいのかもしれませんが、世界を動かすのは人の力だ、ということを感じる場面が多かったように思います。
東日本大震災からの復興に改めて思いをはせたデジタルモニュメント。
フィリピンの職人が作り上げた圧巻のタペストリー。
マレーシアの人たちと来場者が一体となった賑やかな踊り。
夕食を買うためのイギリス人との片言のやりとり。
次々と打ち上げられた美しい花火。
分断に直面しつつ愚直に「団結」を掲げる国連。
そしてボランティアの方々の見送り。
万博のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」ですが、デザインするのはテクノロジーなんかではなく、人間ひとりひとりの力なのだということを改めて考えたりしました。