空気バネ式の車体傾斜装置を採用した名鉄2000系「ミュースカイ」は、神宮前ー中部国際空港間33.5kmの所要時間を約2分短縮したと言われています。前回の記事で述べた京阪の新型特急車が同様の装置を搭載すれば、快速特急・特急ともに淀屋橋ー出町柳間51.6kmで3分程度のスピードアップが見込めるでしょう。ただ、いきなりそれが実現できるわけではありません。段階に応じた運用が求められます。
【準備段階】
以前の記事で述べたように、現存する2000系列のうち一本に車体傾斜装置を搭載して走行試験を行います。
【第一段階】
新型特急車を一編成導入し、当初から車体傾斜装置を作動させる前提で国土交通省の認可を得ておきます。京阪本線は約40%がカーブであり、直線の前後で加速と減速を繰り返す「ノコギリ運転」を頻繁に行いますが、新型特急車はカーブ通過速度を向上させる代わりに加減速を抑え、駅間所要時間を従来車に合わせます。ただし、不具合で装置が作動しない場合はこの限りではありません。また、遅れを回復する際は性能をフルに発揮させます。さらに、出町柳行き最終特急だけは、この新型車を用いて5分速く(-2分の理由は後述)走るダイヤを予め組んでおきます。非常時は上記の試験編成で代走します。なお、新型車に近づけるため、プレミアムカーの連結位置を8000系は3号車、3000系は2・3号車に変更します。
【第二段階】
新型車が8編成まで増備された段階で8000系を特急運用から離脱させます。これにより自由席車が3扉車に統一され、昼間時の停車時間が枚方市駅は60→40秒、その他9駅は40→30(30→20)秒に短縮され、全区間の最短所要時間は特急が53分から51分、快速特急が48分から47分となります。8000系のプレミアムカー10両は6000系の3号車に編入し、平日朝ラッシュピーク時の大阪方面でも指定席サービスを提供します。8000系の先頭車4両をVVVFインバーター車に改造し、ダブルデッカーを2両ずつ挟んだ観光列車に仕立て、併結して8両編成も組めるようにします。
【第三段階】
新型車が10編成に達した段階で、快速特急運転時の特急を3分短縮し、全区間を48分で走破させます。快速特急には3000系を充当し、こちらは一時的に1分遅くして所要時間を特急に合わせます。これにより、期間限定ながら等間隔性の高いダイヤが組めます。2031年春のなにわ筋線開業に合わせ、少なくともこの段階までは進めたいところです。
【第四段階】
新型車は最終的に16編成揃え、特急48分・快速特急44分の運転を実現します。離脱した3000系は平日朝ラッシュピーク時を除いて下位列車の運用に就けますが、プレミアムカー2両は供給過剰なので、13000系に編入した車両を呼び戻して2号車と差し替えます。余ったプレミアムカー6両は、6000系の残り4本と13000系2本の、いずれも3号車に組み込みます。
置き換え完了後のダイヤ改正案は以下の通りです。なお、需要次第では中之島発着の特急を毎時2本から4本に増やすこともあり得ます。