京阪電鉄は2025年3月22日にダイヤを変更しました。今回の改正でダイヤが大きく変わりましたが、これについて分析します。なお、本数増減表はプレスリリースをもとに当局が作成し、その他の図は京阪プレスリリースから引用しています。
1.区間急行・普通の減車(4両編成化)
「普通」については、日中・夜間時間帯は4両での運転となります。また朝ラッシュ時も一部列車を除き、「区間急行」「普通」は4両での運転となります。現行の「区間急行」「普通」は6両もしくは7両で運行されているので、減車となります。
2.日中の運行パターン変更(平日・土休日共通)
日中の運行パターンについて、以下の通り変更となります。
改正前は概ね15分サイクルのダイヤでしたが、改正後は毎時5本、12分間隔のダイヤとなります。本線・鴨東線(淀屋橋~出町柳)については、特急・準急が毎時4本から5本へ増発される代わりに、快速急行(毎時2本)が減便となっています。普通列車については、毎時4本から5本へ増発となりますが、中之島~萱島間のみの運転となり、萱島~出町柳間は特急・準急のみの運行となります。
日中の運行ダイヤを、ダイヤグラムでみてみましょう。次の通りです。
横軸は時間、縦軸は距離を示しています(横軸の時間の目盛は1目盛2分)。赤線が特急、青線が準急、黒線が各駅停車を示しており、一点鎖線で示されている線が、短い4両編成で運行されている列車を示しています。
こうしてみると、日中の各駅停車は全て4両編成で運行されており、萱島~中之島間のみの運転となっていることが分かります。ダイヤは12分サイクルの等間隔となっており、分かりやすくなっています。
なお、本線のダイヤ変更と併せて、中之島線、交野線、宇治線の各線も、毎時4本(15分間隔)から毎時5本(12分間隔)となり、1時間あたり1本増発となります。
3.平日ラッシュ時増発
京橋駅(大阪市)に7時台・8時台に着く大阪方面行き区間急行3本、普通2本が増発となります。また、平日17~18時台においても、「区間急行」「普通」計5本が増発されます。
平日朝ラッシュ時(京橋駅7:00~9:00)の様子も、ダイヤグラムでみてみましょう。以下の通りとなります。
上の図において、黒い太線が各駅停車、緑の太線が区間急行を示しており、このうち一点鎖線で示されている列車が、短い4両編成で運行される列車です。こうしてみると、朝ラッシュ時にも短い4両編成で運行されている列車が目立ちます。
実際、京橋駅7:00~9:00に到着する各駅停車・区間急行のうち、各駅停車は14本中12本、区間急行は8本中4本が短い4両編成での運転となっており、4両編成で運行されている列車のほうが多い状況にあります。改正前まで7両や8両での運行だったので、1本あたりの輸送力は概ね半減したことになります。ラッシュ時に列車が増発されましたが、輸送力増強というよりは、両数が減った分、本数を増やして輸送力を維持するという言い方のほうが正しいといえます。
4.平日朝ラッシュ時 守口市駅停車列車拡大
守口市駅に停車する快速急行・準急の停車列車が増えました。
これについても、ダイヤグラムで改正前後を比較してみましょう。次の通りとなります。
<改正前>
<改正後>
太い線で示した列車が、守口市を通過する列車を表しています(茶:ライナー 赤:特急 紫:通勤快急 青:通勤準急)
平日朝ラッシュの大阪方面行き下りピーク時は、快速急行は「通勤快急」、準急は「通勤準急」として走り、守口市駅を通過しています。こうすることで、寝屋川・枚方方面からの乗客と、守口市駅付近からの乗客が乗る列車を分け、混雑を分散させています。今回の改正から、守口市駅を通過する時間帯が縮小し、特に7時台において、停車する快速急行・準急が増えることとなりました。
改正前後を見比べると、7時台中盤~後半を中心に、通勤快急や通勤準急が急行(橙)や準急(水色)に置き換えられていることが分かります。
3で挙げた区間急行・普通の増発も、4で挙げた優等列車の守口市駅停車拡大も、要因は1で挙げた区間急行・普通列車の4両編成化にあります。4両に短編成化されることで、区間急行や普通の輸送力が落ちてしまうため、区間急行・普通を増発して補い、また守口市駅に快速急行や準急を停車させ、普通列車の乗客を快速急行や準急に乗り換えるように誘導し、区間急行や普通の混雑が酷くなり過ぎないようにする狙いがあるとみられます。
5.平日夕方「ライナー」 発車時刻変更
出町柳17:55発「ライナー」の発車時刻が、18:07発に変更となります。発車時間を調整して、より帰宅客を取り込む狙いがあるとみられます。
6.万博輸送
大阪万博の開催にあわせ、中之島発着の臨時特急、臨時快速急行が運行されます。
〇平日
〇土休日
中之島~万博会場間は、予約制のシャトルバスが運行され、これらの臨時列車と乗り継ぐことができます。
7.中之島線 最終列車設定変更(平日・土休日共通)
中之島線上り最終列車(中之島23:50発普通萱島行き)については、列車種別が区間急行に変更となり、23:54発に繰り下がりました。
中之島線の上り最終列車の繰り下げを行いつつ、萱島到着時刻を改正前とほぼ同じ時刻とするために、種別変更も併せて実施したとみられます。最終列車付近の各駅停車は、改正前は8分間隔と日中時間帯よりも運行間隔が短くなっていたため、間の1本を区間急行に変更しても支障が少ないと判断したとみられます。
8.まとめ
いかがでしたでしょうか。まず、区間急行や普通列車の短編成化というのが、今回のダイヤ改正の大きなポイントです。京阪では支線にあたる交野線・宇治線・京津線・石山坂本線でワンマン運転を実施していますが、今年秋にも本線・中之島線の一部列車でもワンマン運転を拡大することを検討しています。
keihan.co.jp/corporate/info/release/assets/241203_keihan-railway.pdf
今回のダイヤ改正で、ダイヤ上は中之島~萱島間で区間急行や普通列車のワンマン運転を導入できる状態となりましたが、朝ラッシュの混雑が捌けるかが一つ懸念されるところです。
また、日中時間帯はダイヤが大きく変わることとなりました。特急通過駅は停車本数が増える駅が多い一方、萱島~枚方市間の各駅のように停車本数が減ってしまう駅もあります。また、京阪間を通して走る優等列車も、毎時6本(特急+快速急行)から毎時5本(特急)に減便となります。総じてみると、本数はそこまで増えていないような印象を受けます。
コロナ禍以前の毎時6本体制(10分サイクル)に戻すのかとも思いましたが、車両や人員の関係で難しいのでしょう。混雑緩和はしないといけない、けれど思い切った増発はできない… 全方位的なダイヤを作るのが困難な状況の中で、12分サイクルというのはある意味折衷案のような形で生まれたような感じもします。
今回のダイヤ改正の大きなテーマは、「4両編成の列車投入」「日中の運行パターン変更」が2大テーマでしたが、実は裏のテーマも存在しています。これについては、次の記事で解説したいと思います。