どうも、いつものYukíです。いや、まだ「いつもの」とか言えるほど投稿してなかった。…お久しぶりです。

 

今回のは2年前…いや、いつに間にか3年以上前だ。嘘だろ。…ともかく、古い話です。しょっちゅう青春18切符でどこらかへ出かけていた頃の話。大丈夫、不正乗車はしていません。裏技的なあれではないので、そういうのを期待している方はお帰りください。なお、伯備線周辺の地図を見ながら読んだ方がいい気がします。

 

時は2022/1/10、当時は新型コロナウイルスが蔓延しており、不要不急の外出はまだまだ憚られていた頃。その少し前までの私は「四国に自粛」などという訳の分からないことをしており、しょっちゅう松山に行っていたのですが、2021年末ごろからコロナも落ち着いてきましたのでしょっちゅう岡山へ足を伸ばすようになっていました。岡山といっても、大体姫路やら福山やらまで行っちゃうのですが、どうもその日の私は「広島と兵庫は感染者数が増えていてやばい」との情報を持っていたらしく、新見方面に行くことにしたようです。まあ、そもそも当時岡山に行きまくっていた理由は「国鉄型車の記録」であり、伯備線には381系やくもが走っていましたので私にとっては新見方面へ行くのも慣れたものでした。新見までは……。

 

当時の岡山の日常。ほんの数年前の話です。

 

13時頃、新見駅にいた私は芸備線がもうすぐ発車することに気づきます。当時の私は備中神代までは芸備線の列車は伯備線を走ること、そして芸備線は極端に本数が少ないことは知っていましたので、ラッキーくらいの気持ちで乗ってみることにしたのです。

 

先ほど「芸備線」と言いましたが、厳密には新見〜備中神代間はあくまでも伯備線です。芸備線の起点は備中神代駅ですが、備中神代発着の列車は存在せず、全ての列車が新見まで乗り入れます。この区間の少し面白い点として、「途中の布原駅には芸備線の列車しか停まらない」ことがあげられます。都会であれば、南海本線の駅であるにも関わらず高野線系統の列車しか停まらない「萩ノ茶屋駅」「今宮戎駅」、京王本線の駅であるにも関わらず都営新宿線直通の列車しか停まらない「初台駅」「幡ヶ谷駅」、また少し違いますが京浜東北線や中央・総武線しか停まらない駅など、運転系統によっては停まらない列車がある駅はいくらでもあるでしょう。しかし、地方、まして県境の近い中国山地の中にこのような駅があるのは極めて珍しいといえます。…というか、他に事例が思いつきません。

 

さて、そんな布原駅に停車することに感動しつつ、列車は芸備線の起点、備中神代駅に到着。ここで降りなければとても本数の少ない区間に入ってしまいますので、当然降りることにしました。そして、伯備線の列車で新見に戻ろうと思ったわけですが…

 

備中神代を離れていく芸備線。

 

ここで当時の時刻表を載せておきましょう。1枚目が芸備線、2枚目が伯備線です。

 

 

 

そう、新見13:02発の備後落合行き(443D)に乗って備中神代で降りてしまうと、備中神代15:46発の新見行き(826D)まで新見に戻れる列車はありません。伯備線も県境区間では本数がかなり少なくなっているのです。当時の私はある程度自由に行動していたとはいえ、門限の概念はありましたので、19時までには仏生山に帰る必要がありました。となると、新見15:55発の播州赤穂行き(858M)には乗りたいところです。15:55から19時までには3時間ほどありますが、この列車に乗ると岡山着は17:22。岡山〜高松に約1時間、高松〜仏生山に30分程度はかかるので、かなり門限ギリギリな列車であることが分かります。858Mは新見にて備中神代15:46発の826Dと接続しているようですので、門限的には何ら問題ありません。しかしながら、そうするとこの日の私はもうひたすら備中神代で列車を待ち、あとは帰るだけになってしまう訳です。それは流石に勘弁なので、なんとかして新見まで戻る手段を考えることに。まずはバスを検索しましたが、まあそんなものがあるはずもなく。なんせ中国山地のど真ん中、そんな需要はありません。というわけで時刻表と睨めっこしていたわけですが、私はあることに気がつきました。そう、下り列車ならあるのです。

 

時刻表と睨めっこしつつも、通過列車は撮影していました。

 

再び上の時刻表を見て欲しいのですが、新見13:26発の米子行き(誰ですか、列車番号を見切れさせた人は)があります。この列車は備中神代は13:38に出発します。そして下り列車に乗ってどうするか、ですが、最初は先ほどの826D播州赤穂行きとすれ違うところまで乗って乗り換えようか、とも思っていました。しかし、その列車交換が行われる駅は根雨駅です。当時の私は「米子まで行けないなら面白くない」との判断を下したようで、少しでも早く新見に戻ることに決めます。では、どうすればいいかというと、この米子行き、途中の生山駅にてやくも18号岡山行きと列車交換を行うのです。やくも号は生山と根雨に千鳥停車を行うのですが、タイミングよく生山駅に停まる便があったわけです。これで、新見に14:38につくことができます。ただ、1つ大問題があります。生山駅で余裕がなさすぎるのです。当時の私はそもそも新見以北にはほとんど(もしかしたら全くかもしれません)行ったことがありませんでしたので、生山駅の構造は知る由もありませんでした。列車交換で対向列車に乗り換えれるかって結構シビアな話で、例えば琴電の場合、高松築港駅から琴電琴平行きに乗り、一宮で対向の築港行きに乗り換えることはできません。これはもうほぼ100%言い切れます。絶対に無理です。なぜならこの一宮駅、高松築港側に少々余裕があるため、琴平行きが到着する前に築港行きが発車してしまうのです。そうでなくとも、この乗り換えをするには構内踏切を渡る必要があり、一宮に着いた時点でこの踏切は築港行きの電車によって下ろされているはずなので、結局築港方面のホームに行くことができないのです。逆に、例えば岡田駅のように、両方向の列車が同時に到着し、また島式ホームの駅であれば列車交換中の乗り換えは余裕でしょう。そういう意味でこの乗り換えは当時の私にとってかなりの運ゲーでした。さらにもう一つ。私が持っていたのはあくまでも青春18きっぷですので、生山の乗り換え時間で新見までの乗車券と特急券を買う必要があります。乗り換えれるかどうかの乗り換え時間で切符の購入までなんておよそ不可能な話ですが、果たして…?

 

…さて、13:38、その時がやって来ました。米子行きの列車の到着です。迷うことなくその列車に乗った私は、正直ワクワクしていました。なぜならしょっちゅう岡山には来ていましたが、鳥取県に少なくとも18切符で入るのは初めてだったのです。伯備線新見以北は、備中神代の時点で私にとって未知の世界でした。

 

そして衝撃の光景です。そう、雪です。雪が積もっていたのです。香川県民にとって雪というのは極めて珍しいもので、冬に毎年うっすら積もる日が1日あればいいなという程度。ちゃんとした雪景色は北陸や東北まで行かないと見れないものだとずっと思っていました。それがまさか、単純に北上するだけで見れるなんて、という感動がありました。もう大興奮です。自分が今結構まずい状況だったことなんてもう頭にありません。実を言うと香川県内でも塩江方面に行けば結構簡単に雪は見れるのですが、それはそれ、です。車で山を登るのではなく、自分の足と公共交通で雪国まで来たのは初めてだったのです。なお、この発見から後に雪狙いで岡山鳥取県境を目指したものの、思いの外暖かかったせいで雪がなく大落胆を喫したのはまた別のお話…

 

 

 

そうこうしている……走行しているうちに(?)、勝負の生山駅です。この生山駅に着いてみると、どうも対面乗り換えはできないことが分ったものの、反対ホームに渡るのは跨線橋でした。先頭付近にいましたので、正面には入線するやくも18号が見えていました。もう列車を降りるやいなや、跨線橋を全力で駆け上がりそして駆け降りたのをよく覚えています。跨線橋を降りてみるともうやくも18号は発車の合図を鳴らしていましたので、切符は車内で買おうと決心し、列車に飛び乗りました。さて、ピンチです。切符が買えませんでした。当時の私はこのままでは不正乗車を疑われる、と言うか実際不正乗車のようなものですので、車内を端から端まで往復して車掌を探しました。2往復はしたんじゃなかったかな。しかしこの生山〜新見間、30分ほどありはするものの生山から乗る人なんてほとんどいませんし、検札などで車掌が出てくることもありません。なので結局新見まで車掌を見つけることはできず、完全にキセル乗車の状態で新見駅で降りたのでした。

 

やくも号からの景色。

 

当時の私は青春18きっぷを持っていましたので、もちろんやろうと思えば新見駅の改札で18切符を見せて完璧なキセル乗車をこなすこともできたでしょう。しかし、人として、乗り鉄として、鉄道ファンとして、不正乗車はしたくありませんので、新見駅の駅員さんにしっかり事情を説明したのを覚えています。当然といえば当然なのですがあっさりと私の話は信じてもらえ、生山〜新見間の乗車券代と特急券代だけを払い、笑顔で再び改札内へ送り出された(送り返された?)のを覚えています。その後その日は1時間以上余裕ができましたので、方谷駅付近で撮り鉄をして帰ったようです。めでたしめでたし、でした。

 

…ところで一つ気になることがあります。当時の備中神代15:46発の便の列車番号、「826D」でしたね。「D」……だと………!?調べてみると、2022年3月12日までは伯備線備中神代以北にもキハ120の運用があったようです。おい、そっち乗っとけよ〜〜〜。