[国立公園鉄道の探索]
国立公園研究所主催のフォーラムへ出かける
骨折で入院する前の3月1日、「国立公園研究所」が主催するフォーラムへ行ってまいりました。
今回はその時の記事を書いてみたいと思います。
テーマは
「生物多様性保全と保護地域」で
「ネイチャーポジティブに向けた連携を考える」
というサブタイトルが掲げられていました。
ちょっとわかりにくいので
「ネイチャーポジティブ」と
「30by30」、
この二つのキーワードに絞って概観してみたいと思います。
「ネイチャーポジティブ」とは、「自然再興」のことです。
多くの生物が絶滅の危機に瀕しているネガティブな状態を回復軌道に反転させ、多様な生物が生息できるポジティブな環境を再興させる取り組みのことをさすキーワードです。
「30by30」とは、2030年までに、地球上の陸地と海洋の30%以上を、生物多様性実現可能な保全地域とする環境保全目標のことです。
この目標達成の一環として行われている取り組みの中から、
「環境省が実施するライチョウ保護増殖事業と他機関との連携」
「なぜ守るのか:奄美大島における希少種保全の取り組み」
「コウノトリの舞う魅力的な地域づくり」
の三つの講演が各分野の専門家から行われました。
「ライチョウの保護増殖事業」が行われているのは、国立公園内ですが、近年は今まで予想されなかった野猿に襲われた事例も紹介されました。
「奄美大島における希少生物保全の取り組み」は、希少生物が多い島の中で大切な事業が行われていることは分かりました。ただハブ対策で生息域に後から連れてこられたマングースを駆除した話を聞いた時は、「身勝手で気の毒だな」とも感じられました。
「コウノトリの舞う魅力的な地域づくり」は、国立公園のような保全地域ではなく、里山に近い農村で行われている取り組みが報告されました。まさに農家や地域の住民の協力なくしては成り立たない事業です。
「コウノトリがやってくる」ということが米のブランドになる、という事例も紹介されました。
コウノトリの餌となる生物の生息可能な自然農法が評価された、ということになりますが、しかしそれは消費者の理解も必要だと思います。
通常の水田では一反あたり9俵の収穫が目指されるはずですが、自然農法では5~6俵が限度とされています。
当然価格は高くなります。こうした取り組みには何らかの形で助成金は不可欠だと思います。
「国立公園研究所」は、千葉県流山市にある「江戸川大学」に設置されています。
最寄り駅は「流山おおたかの森」駅です。
東武野田線とつくばエクスプレス線の交点となる駅です。
駅から学校専用の連絡バスに乗っていきました。
江戸川大学は、全国で唯一国立公園に特化した研究所が開設された大学です。
まず、「国立公園研究所」がどの学部・学科に属しているのか、気になりました。
というのは、今まで国立公園研究は、圧倒的に造園、園芸、林学といった分野の専門家から論じられることが多かったのです。
しかし、江戸川大学では「国立公園研究所」は「現代社会学科」の中に位置づけられていました。
「そういう時代になったのか」、と思いました。
「国立公園」は地球環境の視点から考える必要があり、そして地球環境問題は、既成の学問の枠組みを超えて、「地域社会、資源、制度」の在り方を探求していかなければ解決に至らない、ということなのだと思います。
講演は、E棟で行われました。
近年、国立公園は増え、既設国立公園の指定区域拡張も行われています。
2024年6月24日には、35番目の国立公園として「日高襟裳十勝国立公園」が誕生しました。
区域面積245,668ha、
「大雪山国立公園」の226,764haを上回る全国最大面積を有する国立公園が成立したことになります。
「日高襟裳十勝国立公園」は、従来の「日高襟裳国定公園」をベースにして昇格されたものですが、陸域面積は約2倍に拡張されています。
これは先ほどの「30by30」の環境保全目標実現の場として位置づけられたことによるもので、戦前に指定された国立公園とは性格を異にするものです。
環境省の予算は、このところ増えてはいます。ただそれは特別会計扱いの東日本大震災復興関連であったり、再生エネルギー促進事業に充てられることが多く、限られた「自然再興」向けの予算で、これだけ増えた国立公園の管理を行うためには地域住民の協力なしにはやっていけないと思います。
従来から環境省では「住民参画 public involvement」の施策を検討していましたが、これからは住民だけではなく、幅広い企業の協力も得て連帯を構築しないかぎりポジティブな目標達成は困難な時代に突入した、ということになります。