3月26日にテレビ東京で放送された「バス対鉄道乗り継ぎ対決旅」。第23弾の今回は、早春の群馬・長野を舞台に、群馬県高山村にあるロックハート城から、長野県上田市にある上田城を目指しました。途中、5つのチェックポイントを経由してミッションをこなす必要がありました。

 鉄道チームは新幹線や有料列車以外の列車、バスチームは一般路線バスしか利用できませんが、タクシーを15,000円分使うことができます。チェックポイントに先着すればタクシー代がボーナスでもらえるという設定でした。

 鉄道チームは鬼軍曹こと村井美樹さんをリーダーに、袴田さん、山崎さんが参戦。バスチームはルイルイこと太川陽介さんをリーダーに、元なでしこジャパンの澤さん、丸山さんが参戦しました。

 今回はこの対決旅第23弾の出題ポイントと感想を書きたいと思います。なお、ネタバレ100%ですので、必ず本編をご覧の上でお読みくださいね。

 

<本編>

1.区間別分析・感想

 それでは、各チェックポイントへの移動を振り返りつつ、今回のお題のポイントを書いていきたいと思います。

 

(1)ロックハート城→伊香保温泉

 バスチームは最初、中山本宿行きのバスに乗りました。ルートとしては、実際ルートのように中之条経由で西から回り込むか、沼田・渋川を経由して東から回り込むかの2通りありますが、沼田~渋川間のバスがないに等しいため、沼田へ行ってしまうと劣勢確定でした。実際ルートの乗り継ぎはさほど悪くなく、2~3kmほどしか歩かなくてよかったので、ここは実際ルートが最善手だったと思います。

 鉄道チームのルートは1択なのですが、ロックハート城~沼田駅間の7km、渋川駅~伊香保温泉間の10kmを歩かなくてはなりません。伊香保温泉まで全くタクシーを使わなかった場合、伊香保温泉到着は14時頃になってしまうため、どこかでタクシーを使う必要がありました。

 今回は流しのタクシーをたまたま拾うことができたため、結局タクシーと徒歩を織り交ぜるという軍曹お得意の技を使って、伊香保温泉に先着できました。もし流しのタクシーに出くわさなかった場合は、「沼田9:58発の列車には乗れず、次の11:02発に乗って渋川へ向かい、渋川から伊香保までタクシーを利用し、鉄道チームが伊香保温泉に先着」となっていたとみられ、これが制作陣の想定シナリオだったと思います。

 なお、鎌倉先生の分析では、ロックハート城から伊香保温泉までタクシーで向かうのが最善手だったようです。しかし、碓氷峠区間など、後半にタクシーを使う場面が多いことが分かっている以上、その手を使うことは気持ち的にできないと思います。

 

(2)伊香保温泉→令和いちご園

 令和いちご園は、鉄道駅からもバス停からも2~3kmの距離にあり、一番訪れやすいチェックポイントだったと思います。鉄道・バスいずれもルート選択の余地はなく、お互い堅実に進んだ形です。

 

(3)令和いちご園→下仁田駅

 鉄道チームは、素直に上毛電鉄ーJR両毛線ー上信電鉄と乗り継げばよかったので与しやすかったでしょう。下仁田でのミッションの内容は「5000円分のグルメを食べる」でした。

 鉄道チームは1日目の22:03に下仁田駅へ到達しましたが、既に夜遅くで店も閉まっており、ミッションは2日目に持ち越しとなりました。時間の関係で1日目にミッションを行うことができない設定だったので、1日目が高崎泊で終わっていても問題ありませんでした。飲食店のオープンが昼前であることを知った鉄道チームは、朝8時半から開いている道の駅へと転じました。

 一方のバスチームは、この区間は勝負どころの一つでした。下仁田は他の市町から路線バスでアプローチできず、高崎から路線バスが何十キロとない区間が続きます。そのため、ここで大胆にタクシー移動するというルイルイの判断は正しかったです。 タクシーの使い方も見事で、下仁田町内では路線バスを活用し、うまくタクシー代を温存しました。

 

(4)下仁田駅→軽井沢アイスパーク

 ここは群馬・長野の県境にそびえたつ山を越えるルートです。バスチームは横川駅へ行けば、碓氷峠を越えて軽井沢へ行くバスがあるのですが、そんなことをしていては決定的に遅れてしまいます。あそこは実際ルートの通り、下仁田側から行けるところ(初鳥屋)までバスで行って、タクシーを使うしかありませんでした。

 また、鉄道チームにおいても、群馬・長野県境は在来線が通っていないので、タクシーを使うしかありません。しかし、鉄道チームのルートは2択あり、1つは実際ルートのように千平から下仁田へ鉄道で戻り、下仁田からタクシーで直行する方法、もう1つは千平からいったん高崎まで行き、高崎から横川まで信越本線に乗り、横川からタクシーで直行するというルートでした。

 鎌倉先生の分析によると、時間的に速いのは実際ルート、タクシー代を温存できたのは高崎・横川ルートで、結果的には高崎・横川ルートをとっていたほうがよかったようです。しかし、高崎での乗り換え時間は4分しかなく、少しでも電車が遅れたら間に合いません。そこまでにさんざん歩いていて、足へのダメージも相当なものになっていたので、スムーズに乗換ができたかといわれれば疑問が残ります。

 また、信越本線は1時間1本しかなく、乗り逃すと致命的なダメージになってしまいます。信越本線のダイヤも分からない以上、高崎・横川ルートはとれなかったと思います。なので、下仁田からタクシーでアイスパークへ直行するという選択は間違いとはいえないと思います。

 

(5)軽井沢アイスパーク→蓼科牛いっとう→上田城

 第5チェックポイントのお店「蓼科牛いっとう」は、旧中山道の茂田井宿付近にあります。

 

 

 このエリア一帯は、巨大交通空白地域になっています。昨年、この付近を歩いたことがありますが、交通手段がとても少なく、旧中山道ウォーカー泣かせの区間だったりします。

 

 

 鉄道チームは、実際ルート通りに滋野駅から11kmの道のりを往復するしかありません。碓氷峠越えだけでなく、この茂田井エリアへのアプローチも、鉄道チームにとっては難題だったというわけです。だからこそ、ここまでにタクシーの資金を残しておくことができれば、限りなく勝利に近づくことができました。

 一方、アプローチが難しいのは、バスチームにとっても同じことでした。蓼科牛いっとう付近へ行くバスは、佐久平から乗る必要がありますが、佐久平までのアプローチは、タクシーを使うしかありませんでした。ここでもルイルイの勝負勘が光りました。ゴールの上田城へは、バスチームは路線バスを乗り継いでいけばOKだっただけに、タクシーの使いどころは完璧でした。

 

 結果は、バスチームが15分差で鉄道チームに勝利、最後の最後で逆転勝利となりました。

 

2.鉄道チームの敗因 ~ミスらしいミスはなかったものの、あえて挙げるとすれば~

 鉄道チーム、バスチームの足取りを見ると、どちらも大きなミスをしておらず、がっぷり四つの戦いだったと思います。あえて鉄道チームの敗因を挙げるとすれば2つあります。

 

(1)千平駅での乗り逃し

 やはり悔やまれるのは、千平駅での乗り逃しでしょう。下仁田でのミッションを終えた鉄道チームは、急いで千平駅へ戻るも、9:55発の下仁田行きの電車を30秒差で逃してしまいました。これに乗れていれば、その後を20~30分前倒しで進み、勝利できていたので、悔やんでも悔やみきれないと思います。

 ただ、食事処が開いていないので、鉄道チームは食べるだけでなく、5,000円分の買い物をする時間も必要でした。道の駅しもにたから千平駅までは1.4km、徒歩20分かかるので、8:30の道の駅の開店時間から逆算すると、1時間で商品を購入して食べ切るというのは、そう簡単ではなかったと思います。2日目に入って疲れも出る中、士気も落ちかけていたので、なおさらでしょう。そのあたりに、バス対対決旅の難しさを感じました。

 そう考えると、バスチームは鉄道チームにリードを許す展開が続き、ルイルイも焦りを隠せない状況だった中で、士気を下げず、冷静にミッションを遂行し続けるようアシストした澤さん、丸山さんはやっぱり強いなぁと思いました。

 

(2)高崎・横川ルートの想定

 もう一つ挙げるとすれば、高崎・横川ルートでしょうか。軍曹は高崎・横川ルートをとることも頭によぎりましたが、最終的には下仁田からタクシー直行の道を選びました。

 鉄道チームにとっては、碓氷峠をどう越えるかが勝負のカギの一つになることはスタート時に分かっていたわけで、もう少し高崎・横川ルートについて想定しておいてもよかったかなと思います。

 例えば、1日目に宿泊した常盤館には、上信電鉄の時刻表が貼ってありました。そこには、高崎でのJR線接続列車として横川行きの時刻が書かれていたかもしれません。さらに言うと、1日目に下仁田に行くうえで高崎で乗換をしているので、高崎駅で横川行きの発車時刻をメモすることは確実にできたでしょう。

 横川行きの発車時刻が分かっていて、高崎での乗り換え時間が4分だと分かっていれば、高崎・横川ルートをとった可能性は十分にありました。実際は横川行きの発車時刻の情報を収集、把握していて、その場面がカットされたのかもしれませんが、もし横川行き列車の情報を集めていなかったのだとすれば、もったいなかったと思います。

 

3.総評と感想

 今回はどちらが勝つか最後まで分からない展開でした。ゲーム設定的には、終盤はバスチームのほうが路線バスを活用できるので、制作陣は「終盤まで鉄道チームがリードし、バスチームが追い上げる」という筋書きを立てていたと思います。  

 だとすると、今回のゲームは制作陣の思い描いていた通りにことが運んだといえそうです。一方的な展開になるとテレビ番組としての面白さが半減してしまうので、制作陣は胸をなでおろしたと思います。

 また、バス旅や対決旅シリーズをひっくるめて、下仁田が登場したのは恐らく今回が初めてだったと思います。前述の通り、下仁田は他の市町から路線バスでアクセスできないため、これまでなかなか取り上げられてきませんでした。群馬から長野へのアプローチも、何回も出てきた碓氷峠越えではなく、下仁田から軽井沢へ至るルートが初めて登場しました。タクシーが使えるゲームだからこその展開で、そのあたりは対決旅だからできた企画だったと思います。とても新鮮でした。

 

 これで通算成績は鉄道12勝、バス11勝となり、バスチームの3連勝となりました。次回の戦いはどうなるでしょうか、楽しみです。