小田急電鉄は2024年12月13日、2025年3月ダイヤ改正の概要を発表しました。今回はこれについて分析します。なお、記事中の図は小田急プレスリリースから引用、時刻表については東京時刻表などをもとに当局が作成しています。

h3de7600000005kh.pdf

 

1.一般列車

(1)準急 停車駅追加

 朝夕時間帯に運行されている準急が新たに喜多見・和泉多摩川に停車となり、準急は経堂以西の各駅に停車することとなりました。

 

(2)平日夕方時間帯 種別変更

 平日18~20時台の下り準急5本が、急行伊勢原行きに格上げとなりました。これらの準急は、東京メトロ千代田線から直通する列車で、代々木上原駅から小田急小田原線に入ります。

 

(1)(2)をあわせ、どのようにダイヤが変わるのか、18時台のダイヤを比較してみましょう。

 

 準急は、複々線区間の代々木上原~登戸間で一部の駅を通過しています。しかし、快速急行や急行と異なり、準急は各駅停車用の線路を走行するため、快速急行や急行ほどスピードが出せません。また、途中駅で各駅停車を追い越せないため、各駅停車の後をついて走ることになり、所要時間は各駅停車と大きな差はありません。そこで、喜多見・和泉多摩川に停車させることとして、経堂から先は各駅停車の役割を担うように変更することにしたとみられます。

 また、準急5本(代々木上原発18:10,18:30,19:10,19:30,20:10)が急行へ格上げとなりました。これにより、優等列車の比率を上げ、他の急行や快速急行の混雑を緩和させる狙いがあるとみられます。

 

(3)多摩線 急行の全駅停車化

 急行が新たに五月台・黒川・はるひ野に停車となり、急行は多摩線内の各駅に停車することとなりました。

 

(4)多摩線~小田原線~東京メトロ千代田線 直通列車新設

 日中の東京メトロ千代田線と直通している急行が、向ヶ丘遊園発着から唐木田発着に延長されました。多摩線では久しぶりに、東京メトロ千代田線直通列車が設定されました。

 (3)(4)をあわせて、改正前後の変化を時刻表でみてみましょう。

 

 

<下り>

 

<上り>

 

 上記時刻表は、千代田線~小田急線直通列車、多摩線列車及び急行・快速急行を抽出して掲載したものです。

 改正後の急行は多摩線内各駅停車となるため、新百合ヶ丘での種別変更がなくなり、分かりやすいダイヤとなりました。また、線内完結の普通列車である3本は、東京メトロ千代田線直通の急行列車に変更となり、日中は全列車が都心へ直通することとなりました。多摩線内が10分等間隔になったのも評価ポイントです。

 多摩線内は普通列車の追い越しができないこともあり、多摩線内においては急行列車も普通列車と比べて1~2分しか速くありません。急行が運行されていることにより、夕方時間帯は普通列車の運転間隔が10分以上が空いているところもあるので、急行を多摩線内各駅に停車させ、急行通過駅の利便性向上と混雑緩和を図る狙いもあるとみています。

 

(5)快速急行 開成駅停車

 快速急行が新たに開成駅に停車となりました。とはいえ、ダイヤは大きな変更はありません。下図をご覧ください。

 

 

 新宿~小田原間を走る快速急行は、新松田で種別変更を行っており、新宿~新松田間は「快速急行」、新松田~小田原間を「急行」として運行することで、開成駅に停車していました。今回の改正により、開成駅を正式に快速急行停車駅にして、新松田での種別変更をなくすことで、分かりやすくなりました。

 

(6)下北沢駅 一部列車発車ホーム変更

 早朝深夜の急行列車の下北沢駅の発車ホームが一部変更となりました。

 

 

 快速急行や急行が発着するホームは地下2階にあり、外部との出入りに時間がかかります。そこで、列車本数の少ない早朝深夜については、準急や各駅停車が発着する地下1階のホームから発着することとし、下北沢駅利用者が乗り降りしやすいように変更されました。

 

2.特急ロマンスカー

(1)平日22時台 増発

 新宿駅を22時台に発車する特急の本数が、毎時2本から3本へ増発されました。

 

 

 増発となったのは、本厚木行きの特急「ロマンスカー」です。22時台の利用が回復していることを受けての増発となりました。

 

(2)伊勢原駅・秦野駅 停車本数増加及び土休日1往復運行区間延長

 伊勢原駅、秦野駅に停車する特急「ロマンスカー」の本数が増えました。また、土休日に運行されている特急1往復が、小田原発着の「さがみ」から箱根湯本発着の「はこね」号に変更となり、運転区間が延長されました。

 どのように変化したのか、改正前後を比較してみましょう。

 

<平日>

 

 

 伊勢原駅では下り2本上り・4本、秦野駅では上り1本、特急の停車本数が増加しています。上りの停車が多くなっています。

 
<土休日>

・土休日は伊勢原駅に下り4本・上り10本、秦野駅には上り4本が新たに停車となりました。伊勢原駅の停車本数が大きく増えていますが、これは大山への玄関口である伊勢原駅に特急を停車し、大山への登山客、観光客を特急へ誘導したいという狙いがあるとみられます。

 その一方、本厚木駅は通過となった上り列車が多く、2時間近く空いている時間帯もあります。かつては伊勢原駅や海老名駅に停車する特急列車はなく、本厚木駅に全て停車していましたが、近年はその構図もかなり変わってきています。今回のダイヤ改正では、海老名駅に停車する特急列車も増えています。

 また、特急メトロはこねが全列車伊勢原駅に停車することとなったのも特筆すべき点といえます。これにより、大山エリアへの行き来や、伊勢原から都心部への行き来がさらに便利になりました。特急列車の本数増加、というだけでなく、「メトロはこねが全列車伊勢原に停車する」というアピールをしても良かったように思います。

 

・加えて、小田原発着の特急列車1本が、箱根湯本まで延長されます。夕方時間帯に箱根から東京方面へ帰る観光客の利便性を向上する狙いがあるとみられます。

 

3.まとめ

 いかがでしたでしょうか。停車駅設定が大きく変わることになりますが、一般列車については改正前ダイヤを踏襲しつつ、細かいところを修正し、分かりやすさを追求した印象があります。ダイヤの実態に合わせた停車駅設定をした、ということができ、その点は利用者目線の改正だといってよいでしょう。

 また、特急列車については、伊勢原駅や秦野駅への停車列車を増やす施策がとられました。大山観光、登山客を取り込みたいことに加え、伊勢原や秦野から都心へお出かけする際にもロマンスカーを利用してほしいという狙いがあるとみられます。

 特急も一般列車も、停車駅設定がかなり変わりましたが、今後どのような利用がなされるのか注目です。