運行再開年単位遅れも 工事費は十数億円相当 全線運休中のいすみ鉄道 | 千葉日報オンライン

 

昨年に脱線事故を引き起こしたいすみ鉄道は、半年近く経った今も依然として運休しており、運転再開の目途は立っていない。

 

何よりも驚きなのは、工事費が十億円を超えるということだ。いすみ鉄道というのは、国鉄が手放した木原線という赤字路線を引き継いだ、黒字になる要素がない赤字企業であり、沿線自治体からの補助金によって維持されてきたいわば公金チューチューである。当然、この十億円を超える工事費も、税金から拠出される。また、2023年の台風で被災した際にも2億円が拠出されている。

 

果たして、血税を投じてまでいすみ鉄道を復旧させる価値はあるのだろうか。鉄道のメリットは大量輸送であり、税金を投じてまで鉄道として復旧させるには、バス、乗合タクシー、ライドシェアなどの交通手段では果たせない役割を証明できなければならない。

 

いすみ鉄道の主たる客は、外房線沿線から大多喜高校へ通う学生さんである。しかし、学生さん方がいない時間帯は閑散としている。いすみ鉄道の輸送密度は、コロナ前の2019年度でさえ385である(全国ローカル私鉄「輸送密度ワーストランキング」。2000未満の路線全リスト | 旅行総合研究所タビリス)。ここで、路線バスの定員を見てみよう。私は路線バスに乗ることも多少は好きであるものの、車種については詳しくない。そんな私でも知っている車種がいすゞのエルガミオである。このエルガミオの定員は、乗務員を除くとだいたい60人くらいである(エクステリア / インテリア | ISUZU:エルガミオ(中型路線バス))。この385人全員が朝と夕方のピーク時間帯に一斉に乗車すると仮定すると、ピーク時間帯の乗客数は193人程度であり、頑張ればエルガミオ3台で輸送可能だ。また、エルガミオは中型路線バスであり、さらに大型のエルガを使用すればゆとりが生まれる。要するに、2019年の時点でもいすみ鉄道はバス転換が可能である程度の乗客数であるということだ。現在はさらに少子高齢化が進み、乗客数はさらに減少していると考えられ、2019年よりも少ないドライバーで対応できるはずだ。2024年問題がメディアに取り上げられたことで、路線バスドライバーが不足していることは広く知られているが、鉄道員も不足していないわけではない。鉄道でも、人手不足による運休・減便は発生している。上総中野駅でいすみ鉄道と接続する小湊鉄道もその一つだ。

 

そもそも、大多喜高校がいすみ鉄道沿線に存在する意義がわからない。房総半島の人口は海沿いに集中しているのにも関わらず、大人数が通学のためにわざわざ内陸部に移動しなければならないからだ。大原駅の近くやJR外房線沿線に移転できないだろうか。大原駅の近くには同じ県立の大原高校があるため、大多喜高校がもし大原に移転すれば、大原第二高校にでもなるのだろうか。悪くはない。杜撰な運営をしている鉄道に血税を投じるよりも、高校を移転させる方が生徒にとっても教師にとっても良いし、未来ある子供たちのための投資に対して納税者が反対するはずがないのだ。