新京成が京成松戸線化となった後の、急行列車設定可否について考えてみました
京成松戸線は駅間距離が短く、走ってはすぐに次の駅に到着というイメージがあります。
松戸-京成津田沼は26.5km、途中23駅停車、所要44分です。
松戸線からの乗り入れ先、京成千葉線の京成津田沼-千葉中央は12.9km、途中9駅停車、所要17分です。
松戸-千葉中央は直通電車で途中32駅停車39.4km、所要62分(京成津田沼での1分停車を含む)の状況です。
そのため、京成松戸線に主要駅のみに停車する急行列車(JRで言えば快速列車)の設定を望む声は、以前から多いものがあります。
松戸から千葉中央までならば、なおさら急行は欲しくなります。
八柱から千葉ならば京成松戸線・千葉線で一本であっても、停車駅の少ない武蔵野線・総武線で新八柱から乗るルートを選ぶ人もいます。
同じ千葉県内でも、京成本線では快速等の通過列車が設定されています。
北総線では特急料金不要の「アクセス特急」、東武野田線(アーバンパークライン)でも急行の設定があります。
JR総武線、JR常磐線は複々線設備を活かし、快速は終日頻繁に運転されています。
だから京成松戸線にも急行があってよいという流れになってきます。
今回は、京成松戸線の急行設定の可能性について考えてみたいと思います。
2023年度の新京成各駅の乗降人員をみる
急行設定の場合、停車駅はどこにするかがポイントです。
各駅の乗降人員が急行停車駅選択の一つの要素になります。
2023年度の各駅の一日当たりの乗降人員は以下のとおりです。
順位 駅名 乗降客数(単位:人)
1 松戸 89,715
2 新津田沼 58,399
3 北習志野 40,551
4 八柱 39,437
5 新鎌ヶ谷 34,234
6 五香 25,976
7 常盤平 16,787
8 二和向台 15,497
9 元山 14,881
10 高根公団 13,750
11 薬園台 13,748
12 鎌ヶ谷大仏 13,127
13 三咲 12,998
14 習志野 11,996
15 前原 9,360
16 みのり台 8,568
17 高根木戸 7,832
18 滝不動 7,043
19 松戸新田 6,737
20 くぬぎ山 6,629
21 上本郷 6,602
22 北初富 5,015
23 初富 4,902
※京成津田沼は京成に含まれるため、新京成単独の記載なし
仮に急行設定するとしたら停車駅は?
あくまで仮の想像話です。
松戸線に急行が設定されるとすれば、誰しも自分の利用する駅に停まってほしいのは当然ですが、それでは急行設定は成り立ちません。
沿線全体を見て、乗降実績の多い駅、他路線との乗り換え駅を中心に停車駅を考えていくことになります。
ちなみに、柏-船橋間の東武野田線の急行は、高柳と新鎌ケ谷だけの停車です。
同区間の速達を最優先にした結果と言える、停車駅最小限の選択ます。
高柳の停車は、利用者数ではなく、急行と普通(各駅停車)との相互接続(緩急接続)、高柳での急行の追い抜きによるものです。
以下、二つの松戸線停車駅案を示しますが、単なる机上一案です。
〇〇駅を通過するとはけしからんという次元のものではありませんので、ご了承ください。
(1)他路線乗換駅と、15,000人以上の乗降人員のある駅のみ停車の場合
理想としては、他の鉄道路線乗り換え駅と、乗降人員15,000人以上の駅が目安になると思われます。
この場合の急行停車駅は、松戸-八柱-常盤平-五香-新鎌ヶ谷-二和向台-北習志野-新津田沼-京成津田沼、となります。
通過駅は、上本郷・松戸新田・みのり台・元山・くぬぎ山・北初富・初富・鎌ヶ谷大仏・三咲・滝不動・高根公団・高根木戸・習志野・薬園台・前原、となります。
(2)1万人以上の乗降人員のある駅のみ停車の場合
乗降人員が1万人以上の駅に停車する案です。
なお、くぬぎ山については乗降人員は少ないものの、乗務員交替駅であることから急行停車駅としています。
この案の急行停車駅は、松戸-八柱-常盤平-五香-元山-くぬぎ山-新鎌ヶ谷-鎌ヶ谷大仏-二和向台-三咲-高根公団-北習志野-習志野-薬園台-新津田沼-京成津田沼、となります。
通過駅は、上本郷・松戸新田・みのり台・北初富・初富・滝不動・高根木戸・前原、となります。
八柱〜くぬぎ山を筆頭に、連続停車駅が多く、急行としての停車駅削減による利用者側の精神衛生的効果は薄いかと思われます。
先行列車追い抜き設備のない京成松戸線
松戸-京成津田沼間には、先行列車を追い抜く3線以上の番線配置のある駅はなく、上下線とも各1線のみです。
ただし、先行列車を追い抜きはしないものの、駅の一部を通過するという急行設定方法もあります。
一例として、都営浅草線押上-泉岳寺の京急羽田空港直通「エアポート快特」、成田空港直通の「アクセス特急」は、地下鉄線内での先行列車追い抜きはしないものの、通過駅設定により羽田空港-成田空港間全体の停車駅を減らし、地下鉄線内各駅停車によるじれったさの苦情措置ともなっています。
同じ手法でいけば京成松戸線でも、例えば松戸を00分に急行が発車後、03分に各駅停車が続行というダイヤ手法がとれないことはありません。
【結論】
京成松戸線の急行設定はないと思われる
新京成の京成松戸線化により、松戸-京成津田沼だけを考える新京成とは状況が変わりました。
今後は、京成線全体の大きな枠の中で松戸線を捉えることになります。
以下、急行設定をしない事由を順不同で列記します。
〇 京成全体で多くの事業を抱えていること
京成では、成田空港輸送需要の今後の増大による対応をはじめ、押上線の京成立石付近の立体交差、各駅のバリアフリー化促進、ホームドア整備、既存車両置き換え、宗吾車両基地(京成本線宗吾参道駅付近)拡充、ワンマン運転、千原線の将来等、多くの事業や課題を抱えています。
〇 松戸線の急行設定に対する費用対効果のこと
そうした京成での多くの事業や課題の中での京成松戸線の急行設定については、先行列車追い抜き駅が皆無の中で、新たな追い抜き設備駅の追加は、事業の優先順位的にも困難です。
松戸線で先行列車を追い抜かない前提での設定費用に対し、新たな需要、収入増が見込めるかという点では積極的にできないというところかと思われます。
〇 新鎌ヶ谷駅高架化の際、2面3線構造にはしなかったこと
松戸線のどこかの駅に、新たにその設備を設けるための用地買収等も困難です。
新鎌ヶ谷駅の高架化が唯一、ホーム2面、線路3線化の絶好の機会ではありましたが、新京成にその機運はなく、今後とも1面2線ホーム構造は変わらないと思われます。
〇 京成千葉線にも追い抜き設備がないこと
急行を設定するなら松戸-京成津田沼でなく、距離の長い松戸-千葉中央の区間でこそ効果を発揮すると言えます。
しかしながら、京成千葉線も追い抜き設備がないのは松戸線と同じです。
所要時間的にも、急カーブの多い線路状態では数分程度の短縮にとどまりそうです。
〇 急行設定により車両運用や乗務員勤務の増加が伴うこと
現状の日中10分間隔ダイヤのまま、一部を急行に変えるならば車両使用数や乗務員数自体は変わらないものの、急行通過駅の列車本数が減るため不可能と思われます。
その分、要員の確保、人件費の増加、労務管理体制のことも考えなければなりません。
東武野田線同様、各駅停車をそのままの本数にして、急行を増発するのが望ましいということになります。
〇 東武野田線の1両減車の5両編成化が、京成では2両減車の4両編成となること
東武野田線の場合、急行設定と本数増の結果、今後は6両編成を5両化して、輸送力を調整している状況があります。
6両編成のまま各駅停車の10分間隔を維持しようとすると、急行設定が難しくなる面を抱えています。
京成松戸線で急行設定により5両化、4両化への減車は、新たな議論を生むことになります。
かといって6両編成で各駅停車6本、急行2本では輸送力過剰という、東武野田線と似たような事情があります。
なお、京成松戸線で減車の場合、車両構造上等から5両編成でなく4両編成になると思われます。
かつての8両編成全盛期からすると、6両編成から更なる減車による通勤・通学時の混雑増も課題になります。
〇 踏切が多いことと列車選別装置導入経費のこと
京成松戸線は踏切の数がとても多い路線です。
千葉線も同様です。
抜本的な踏切対策は道路との立体交差化ですが、松戸線での道路立体交差箇所はわずかで、今後もその整備を望むのは難しい状況にあります。
急行を設定するならば、踏切の改造は要件であり、急行と各駅停車とで、踏切の閉じる時間設定を変える列車選別装置等の投資が不可欠になってきます。
松戸から千葉中央まで先行列車の追い抜き設備がない中、松戸から京成津田沼・千葉中央への移動需要が、列車選別装置等の新たな投資費用に対して、急行設定による利用増がどの程度かということになります。
複線用地は確保してあるように見受けますが、総武線と道路の立体交差があり、工事を行なうには規模が大きくなります。
千葉線直通は線路がつながっている5番線を活用していますが、新津田沼-京成津田沼の単線状況と併せて、ダイヤ設定のネックになっています。
6番線の線路を千葉線側に延ばすのは、外見からするとさほど困難とは思われませんが、京成側は現状の5番線のみの接続で当面はフル活用というところかと思われます。
〇 京成千葉線では4両編成もある輸送状況
〇 京成千葉線接続の千原線ではワンマン運転も行なっている状況
以上を総合すると、急行設定はないだろうと思われます。
急行設定により、クルマや武蔵野線等からの新たな転移による松戸線の利用増が大きく見込まれればまだしも、既存の各駅停車の利用者が急行に転移しただけでは、千葉線を含めて松戸線の利用増にはつながらず、急行設定はないだろうと考えられます。
(※ 筆記にあたり、新京成ホームページの各駅の乗降人員情報及び統計情報リサーチの乗降人員データ等を参考にさせていただきました。)