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京成3200形 営業運転開始

2025.03.24

まさに「令和の赤電」。

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京成3200形 3204編成
2025.2.23/菅野〜京成八幡

▲2月22日にデビューを飾った新型車両3200形。主に3500形の置き換え用として、来年度以降も継続して導入される予定である
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京成3200形 連結器
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▲京成で初採用となった電気連結器付きの密着連結器。電気連結器は縦2つに加えて、左右にも1つずつ付くモリモリ仕様。急行灯と尾灯のライトユニットは3100形と同一品
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京成3200形 連結部
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▲「令和の赤電」であることを象徴する、3200形の先頭車〜中間車連結部。これを実現するため、中間車側にも先頭車と同じ電気連結器付きの密着連結器を装備している。近年では先頭車にも転落防止用の外ホロを付けた車両が見られるが、3200形では採用されなかった。その代わり、停車した状態で開扉すると先頭車側から\テンテンテン・・・車両連結です、ご注意ください/という転落防止のための放送が流れる

2月22日、京成電鉄の新型車両3200形デビューした。2024年度導入分の6両が、3204+06-05という編成を組んで6両編成として運用に入っている。遅ればせながらようやく乗ったり撮ったりできたので、改めて3200形がどういった車両なのかを写真を交えながら見てみよう。

デビューまでの動き

今回導入された6両は、いずれも日本車両製。7月14日から28日にかけて豊川から越谷貨物ターミナルまで甲種輸送の後、北総鉄道印旛車両基地に陸送、宗吾車両基地まで3000形の牽引によって回送されている。初めて本線を自走したのは3204〜01が9月11日の終電後、3206と05が10月24日だが、入籍はいずれも9月9日付。その後は試運転や乗務員教習、試乗会、報道公開など新型車両ならではのイベントをこなしているが、他社局への貸出は行っていない。これは今のところ直通運用への投入予定がないためだろうか。

デビュー初日となった22日は京成上野〜京成臼井を中心に走る09運行に充当し、芝山鉄道線に初入線。翌23日には21運行からの流れでA31運行の快速として走ったほか、さらに97K運行として押上線に入線した。24日にはB11運行として夜にちはら台まで入線。3連休に顔見せのような格好で各線でそれぞれ初となる営業運転を行った。

その後は初期不良のためなのか終日予備や朝晩のみの運用となる日が続いたが、3月中旬から終日運用に入る日も増え、徐々に馴染んできている様子である。

機器構成

3200形導入のプレスリリースの時点で明らかになっていなかった、機器構成について見てみよう。以下の通りになっている。

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京成3200形 編成表

▲3200形の編成表。2両単位で編成組み換えが可能なような機器構成になっている(筆者作成。図中の表記は、○○:M台車、●●:T台車、+:電気連結器付き密着連結器、-:永久連結器、VVVF:制御装置、SIV:補助電源装置、CP:コンプレッサー、BT:蓄電池)

「人や環境にやさしいフレキシブルな車両」をコンセプトに導入された3200形。3500形と同じような編成組み換えができる仕様を実現するため、編成は2両単位のユニットを繋いだ構成となっている。ただし、3500形が4両編成でユニットが背中合わせになるのに対し、3200形ではユニットを同じ向きで繋いでいる点が異なる。オールドファンには、(先代)3150形以前の繋ぎ方と表現すればわかりやすいだろうか。

表記上は全M車となるが、各ユニット成田方車両の上野方台車をT台車としていて、MT比率は4両編成あたりで3M1Tとなる。この考え方は先代3200形の3224編成以降で採用された、いわゆる「6M車」と同じ。こうした点からも、3200形はまさに「令和の赤電」だ。

ユニットは上野方の車両をM1系、成田方の車両をM2系として、機器構成は基本的にはこのユニット内で完結するようになっている。制御装置は、1C4Mまたは2Mの2群構成のVVVFインバーターをM1系車両に搭載。東洋電機製のハイブリッドSiCを適用したものが採用されている。補助電源装置(SIV)やコンプレッサーなどの補機類はM2系車両に搭載されている。パンタグラフは、M1系車両の成田方に1基ずつ載る。

ユニット間の連結には、京成では初となる電気連結器付きの密着連結器が採用された。ただし、これは車庫内での分割・併合作業の簡略化のための装備となり、営業列車での運行中に切り離したりくっつけたりする考えはないようだ。

車内
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京成3200形 車内
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▲基本的には3100形の色違いとなる車内。走行音も3100形とほとんど同じなので、気分的には京成本線で3100形の列車に乗車している感じ
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京成3200形 運客仕切り
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▲先頭車、乗務員室との仕切りを客室側から見る。京成車と言えば乗務員室後方の座席だが、搭載機器の増大に伴い乗務員室が拡大したため3200形ではこれを廃止した
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京成3200形 運転台
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▲貫通型とするためコンパクトにまとめられた運転台。上部にもモニターが設置されていて、監視カメラのリアルタイム映像確認や将来的にはワンマン運転にも使用する予定となっている

車内は、荷物スペースの有無やハイバックシートでないことを除き、基本的には3100形の色違いとなる。暖色系でまとめられた3100形に対し、3200形は寒色系を使用。シートも3100形では成田スカイアクセス線を意識したオレンジ色を用いているが、京成本線を走る3200形は青色となる。優先席は赤色。走行音も3100形とほとんど同じなので、私が初めて乗車した際の印象は「3100形やんけ」。

京成車の特徴のひとつとも言える乗務員室後方の座席は、3200形では搭載機器の増加に伴う乗務員室の拡大により廃止された。座席の代わりに、フリースペースで使用されているものと同形状の腰当てが設けられている。運客仕切りの扉はオフセットして設置されていて、連結時には乗客は貫通路を斜め方向に通り抜ける格好となる。

貫通構造とするためコンパクトにまとめられている運転台は、計器類やスイッチの配置など他社線への直通運転にも対応した仕様である。 乗務員室内には3500形と3600形3668編成で見られるワンマン〜ツーマン運転の切り替えスイッチもあり、4両編成の一部列車で実施されているワンマン運転にも対応していることをうかがわせる。運転台の上部にもモニターが設置してあって、リアルタイムで確認可能な車内の防犯カメラ映像はこのモニターで見られるようだ。また、将来的に車外カメラを設置した際にもこのモニターで映像確認することができるようになる模様。

案内機器類
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京成3200形 行先表示「普通京成上野」(側面)
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▲車体側面の行先表示器。3100形と同じ大型のものを採用。3100形で実施されている多言語での表示は行わず、代わりに次の停車駅を案内するようになった。日・英を4秒おきに切り替えて表示する
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京成3200形 LCD案内表示器
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▲ドア上のLCD案内表示器も3100形と同じ2画面仕様。右の側面を案内用に、左の画面を広告用に使用する

車内外の案内表示器は、基本的には3100形に準じているが、側面の行先表示器については3100形で実施している4か国語での表示を行わず、都営5500形で実施しているような次の停車駅を案内するようになった。また、3200形での新機能として途中駅で種別・行先が変更となる列車における案内表示にも対応した。例えば、快速京成高砂行で京成高砂到着後にそのまま普通京成上野となる列車では、「京成高砂から普通上野行」などと表示を行う。なお、行先表示器は3100形までとはメーカーが異なる模様で、同じ行先でもドットの点灯パターンが異なる。

このほか、自動放送装置が搭載された。タブレット端末で実施しているものと同一の内容が、自動放送装置より車内に流れる。

新京成車も置き換えへ

まもなく京成と合併する新京成電鉄の車両についても、経年の車両を3200形で置き換えていくこと予定であることが明らかになっている。

ただし、このことで直ちに3200形が松戸線(3月から新京成線)を走るようになるかどうかはわからないところ。松戸線で営業運転を行うためには、行先表示や無線操作器などの仕様が同線に対応している必要になるが、現在のところ松戸線に対応した京成車は1本もおらず、3200形も同様に現時点では同線での運転には対応していないものとみられる。

松戸線を走る車両の共通仕様化は中長期的な課題になるだろうから、3200形が松戸線を走るかどうかもここらへんとの兼ね合いになるだろう。

◆ ◆ ◆

以上、3200形を簡単にまとめてみた。3200形をひとことで言い表すならば、「贅沢な車両」である。上でご紹介した以外にも、定速運転や8両編成運転時の京成本線空港第2ビル駅用ドアカットなど、とにかく欲しい機能を将来的に必要なものも含めて惜しみなく搭載している印象だ。自動放送にしてもタブレット方式で十分機能しているにもかかわらず車載の装置を載せちゃうし、おまけにプラズマクラスターイオン発生装置まで付いているあたりに、成田空港輸送が絶好調な「今の京成」を強く感じるのである。

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