どうもこんにちは。
今年3月14日で、北陸新幹線長野~金沢間と、IRいしかわ鉄道、あいの風とやま鉄道、えちごトキめき鉄道、しなの鉄道北しなの線が開業10周年を迎えました。
当時20歳、まだ大学2年生だった私も今や30歳。30代の自分の姿なんて想像もできなかった、というのは以前の記事でお話しした通りです。しかし20歳が30歳になっても別段どうということはなく、大学へ行っていたのが会社へ行くようになっただけで、結婚はおろか彼女もおらずアパートで1人暮らしをし、時々は平日に休みを取って電車に乗りに行くだけの人生を送っています。……やめよっか、この話(^^)
で、2015年3月14日に私は何をしていたか、というのが今回の記事。北陸新幹線の、そして北陸3セクの開業日をどのように迎えたのか、備忘録として振り返ってみます。
2015年3月14日(土)
朝9時前。春の北陸らしい、薄曇りのパッとしない空の下、私は金沢駅にいた。前夜、在来線特急〈はくたか〉のラストランに乗車し、駅前のビジネスホテルに泊まったのである。一夜明けてホテルの部屋で見たニュースは、北陸新幹線開業の話題一色だった。カーテンを開けると窓からは金沢駅が見え、真新しい新幹線車両――E7系かW7系か――がちょうど発車していくのが見えた。ああ、北陸新幹線がある世界、そして特急〈はくたか〉がいない世界に本当に来てしまったのだな、というのを実感した。
駅のコンコースは当然ながら人でいっぱいで、新幹線はもちろん、今日から一部が第3セクターとなった在来線の券売機でも、きっぷを買い求める人の行列ができていた。ゆうべは隠されていた「IRいしかわ鉄道」の表示がお目見えして、同じ駅の同じ改札口とは思えない。今日は在来線の3セクを乗り継ぎ、〈はくたか〉のたどってきた経路がどのように変貌したか見物するつもりである。
まずはIRいしかわ鉄道の普通列車に乗車する。金沢周辺ではすでにおなじみだった521系電車だが、「泊」という見慣れぬ行先を掲げて停まっていた。泊は富山県の東端のほうにある小さな有人駅で、えちごトキめき鉄道との乗り換え駅になった。今日からは多くの列車がここを目的地として走ることになる。
列車はJR北陸本線改めIRいしかわ鉄道の線路を走って行く。と言ってもレールに名前が書いてあるわけではないし、車両も昨日までと同じ521系だから、黙って乗っていてもあまり新鮮味はない。しかし駅頭で開業記念イベントが行われている駅も多く、新幹線だけでなく生まれ変わった在来線にも地域住民が期待を寄せているのがよく分かった。
倶利伽羅駅を過ぎ、県境を越えて富山県に入ると「あいの風とやま鉄道」に変わる。会社が変わっても特に乗り換えは必要なく、昨日までと同様にすべての列車が直通するので、駅名標のデザインが変わるのに注意していなければそうとは分からない。高岡で一旦下車して、駅周辺の様子を眺める。
駅前では再開発工事が行われている真っ最中で、昭和の香りを色濃く残す建物たちが姿を消そうとしていた。高岡駅は名前の通り高岡市の中心部にあり、すべての特急が停車する玄関口であった。
しかし今日からはその役目を北陸新幹線の新高岡駅に譲り、高岡駅はローカル列車だけが発着する。2つの駅は直線距離にして約1.5km離れており、JR城端線かバスに乗り換えねばならない。高岡駅と新高岡駅、2つに分散した「核」がどのような変化を街にもたらしたのかは、10年経ったいまぜひ現地を訪れてみてほしい。
再び列車に乗り、富山駅で下車。あいの風とやま鉄道のデザインになった駅名標が、昨日までとは一味違うぞ、というのをアピールしているように見える。しかしその後ろには〈はくたか〉や〈北越〉の乗車口案内板が残っており、昨夜の余韻が続いている錯覚に陥る。
人込みをかき分けてロータリーに出、新装成った富山駅を外から眺める。とは言え新装成ったのは新幹線の部分だけで、在来線はまだ地上駅であった。富山地鉄の路面電車は高架下から発着していたが、ライトレールとの直通運転も開始前だったから、まだまだ「仮の姿」の感は否めない。それでも駅前にはステージが設けられ、新しい「春」の訪れを祝う大勢の人でにぎわっていた。
時間はそろそろ12時近く、腹が減ってきたが駅周辺の店舗は人・人・人である。とりあえず屋台で売られていた白えびかまぼこを食い、笹寿司を買って再び列車に乗った。
終点の泊で下車。前述の通りここは富山県の東端にあり、JR時代は1日数本だけこの駅止まりの列車もあった。今日からはほぼすべての列車がここで折り返す。本来は2つ隣の市振駅が「えちごトキめき鉄道(トキ鉄)」との境界だが、市振は無人駅のため、泊が乗り換え駅となった。
少し時間があった(と思う)ので、待合室で笹寿司を食い、ホームの様子を眺める。かつて長大編成が停車していた名残が奏功し、同じホーム*1に富山方面と糸魚川方面の列車が縦列停車するため、階段の上り下りなく乗り換えできる。もっとも、改札へ向かうには必ず階段を上り下りせねばならぬ*2のだが……。
それにしても、こうして当時の写真を見返してみると、変わらないように思えて変わったところがいろいろ見つかっておもしろい。まず、トキ鉄の乗車口に至っては完全に吹きさらしである。雨や雪の日も多いのにこれはひどい(笑)。あいの風の列車が停まっているところでさえ、直江津寄りには屋根がなかった。
今はホームの屋根が延長され、トキ鉄の乗車口にも申し訳程度にドア1枚分だけ屋根がある。喫煙所(灰皿)も撤去されたし、列車が停まらぬ余分なホームの端には柵がついた。「長大編成が停車する北陸本線の途中駅」から「短編成の3セク同士の乗り換え駅」にふさわしい姿へ、少しずつ改良されてきたのが分かる。
さて、折り返し直江津行きとなる列車がゆっくりとやってきた。一番の変貌を遂げたと言っていいトキ鉄区間へ、いよいよ乗車しよう。
後編へつづく