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蒸気機関車は生き物のような機械だと、よく言われています。その所以は色々ありまして、石炭と水といった燃料を使うところだったり、シリンダと動輪の脈動だったり、煙室扉の丸い顔だったり、機嫌の良いとき悪いときがあるとかだったり……。


そんな様子を描いたのが、ウィルバート·オードリーのThe Railway Series「汽車のえほん」です。

1945年5月12日に英国で第一巻が発売され、以降今日に至るまで80年も世界中で読まれています。

イギリスではあの「ハリー・ポッター」に次ぐ売上だという話も聞いたことがあります。(要出典)

1973年11月10日にはポプラ社より日本語版が発行開始されます。翻訳には当時の京成電鉄取締役であった黒岩源雄氏が監修し、鉄道用語に正確でした。


例として「発雷信号機」「緩衝器」が挙がりやすいですが、肝心の説明がないので紹介しておきます。

発雷信号機(信号雷管)とは、レール面に取付けて車両が踏むと爆発する、いわゆるかんしゃく玉です。英国だとDetonator(爆薬)、米国だとTorpedo(魚雷)と異なります。(トルペードベンチレーターと同じ)

緩衝器とはねじ式もしくは連環連結器の左右にある、黒丸の円盤状のものです。このブログでたまに登場する明治大正期の車両にも必ず付いています。

Bufferといいまして、ビジネス用語でも「余裕」「予備」というニュアンスで出てくると思いますが、鉄道ではこういう部品を指します。


鉄道作品としての描写はもちろんのこと、各機関車などキャラも非常に良いものです。

小柄でやんちゃ、しかし熱心な活躍により主力となったトーマス。

ベテランで面倒見の良い、信頼の厚いエドワード。

病弱さを克服し、牽引力で活躍するヘンリー。

最優等の任に就く、威張りやなゴードン。

ご自慢の赤と自惚れやのジェームズ。

小さくいたずら者ながら苦労者、パーシー。

よそから移籍してきたベテラン、トービー。

仕事へのプライドは人一倍、ダック(モンタギュー)。

北国育ちの黒い紳士、ドナルド。

その双子の亡命者、ダグラス。

クールと熱さの二面性、オリバー。


他にもかなりの機関車や客車、貨車、気動車、もちろん人間も登場します。バス、自動車、トラクター、重機、定置クレーン、……。

それぞれの個性も、この作品が80年続くまでの人気を呼んだ理由のひとつでしょう。


1984年に大型の鉄道模型(一番ゲージ、1/32 軌間45mm)を使用した映像作品「きかんしゃトーマス」シリーズが英国でテレビ放映開始されます。第二期までは、かつてThe Beatlesのドラマーだったリンゴ・スター氏による読み聞かせの形式でした。

日本では1990年より、フジテレビの「ひらけ!ポンキッキ」にて放送されました。豪華声優陣による吹替、オリジナルソング制作、番組キャラクターとの積極的なコラボと、非常に力の入ったものでした。


制作会社や、人形劇からCGI、2Dアニメーションへの変化。日本でも放送局や声優陣の交代など、様々な動きがありながらも、ここまで続いてきました。大人の事情に振り回されながらも、子供達はもちろん様々な世代に大人気です。



さて、1992年にトミー(現タカラトミー)のプラレールブランドにて、きかんしゃトーマスシリーズの製品化が開始しました。プラレール自体も1959年頃から続く長寿商品であり、手持ちの線路が使えることから爆発的な人気となりました。現在も通常のプラレールとプラレールトーマスが店頭にて双璧を成しています。


キリの良い周年では特別な製品を用意してきます。

60周年ではメタリック仕様のトーマス、アニー、クララベルの3両セットが登場しました。

65周年ではトーマス、オールド・スローコーチ、無蓋車、タンク車、車掌車(いずれも装飾つき)と、プラキッズのトップハム・ハット卿(白い衣装)のセットでした。

70周年では残念ながらありませんでした。

(なおこの年はラーニングカーブが「牧師お手製のトーマス」を製品化というヤバイものがありました。)

75周年はトーマス、ジェームス(無動力)、パーシー(無動力)、ウィンストン(無動力)のクリアラメ仕様、プラキッズのトップハム・ハット卿のセットでした。

80周年は二つあり、片方はトーマス、ハロルド、タンク車、ケーキの貨車、車掌車(いずれも装飾つき)のセットと、


こちらになります。


プラレール えほんトーマス 2025年3月15日発売

なんと汽車のえほんの立体化です。

以前カプセルプラレールでもありましたが、ついに本家プラレールにも来ました。


今回は目に見えて売れているのか、それとも販売店舗を絞ったのか、初日から「見つからず数店舗ハシゴした」との声が多数です。

午前中の鶴見線の車内で甘く見ていた私、午後の東京モノレールの車内で若干気がかりでした。都内で宿泊中に焦り始め、翌朝に上野のヨドバシに駆け込み無事ゲット。



この顔ですが、原作第二巻の表紙および「トーマスと貨車」の挿絵を再現しています。
元々はレジナルド・ペインという挿絵画家によるものです。重版の際にレジナルド・ダルビーという挿絵画家により描き直されましたが、ほぼ変わりありません。
※パッケージはダルビーの挿絵です。

黒目にV形のハイライトがあるのが1992年の初回品を連想させます。あれ原作リスペクトでもあったんですね。あとオーウェン・ベル作品。


通常品をお持ちの方は見比べていただきたいのですが、成型色が異なるというこだわりよう。
なお炭庫後面の飾り帯とライトはありません。(本来なら側面と同じく赤い四角がある)
本編では第三期の途中で消えたため、プラレールも反映されていました。
その後本編では70周年記念作品で再び飾り帯が付きましたが、プラレール製品には反映されていません。記念作仕様の「みどりのトーマス」にも付きませんでした。


アニーは汽車のえほん内では顔が描かれたことがないため、挿絵のクララベルの顔を加工したようです。
台枠のグレー塗装は通常製品にはありません。後述のクララベルの挿絵で乗降用のステップ(もしくはクツズリ)がグレーで描かれており、それを反映しています。


クララベルは第四巻「がんばれ機関車トーマス」の「トーマスと車しょう」の挿絵の顔になっています。
なおその挿絵を見るとわかるのですが、原作のアニーとクララベルはボギー客車です。46フィート(14m)で、テレビ版のアニーとクララベル(LBSCRの二軸客車)の約1.5倍です。三軸客車の車体を延長しボギー化したというゲテモノです。
また「プッシュプルセット」といって、クララベル側からトーマスを操作し運転することが可能です。
(日本の小湊鐵道の里山トロッコ、JR西日本の奥出雲おろち号、きのくにシーサイド号を想像するのが早いです。
実際にトーマスのモデル、LBSCRのE2形機関車では試験的にこのような運転をしていました。)


汽車のえほんでは貨物列車の先頭立っています。以下、編成表です。

※編成はあくまで一例です。


←ウェルズワース       ヴィカーズタウン→

トーマス+無蓋車(橙·石炭積載)+有蓋車(灰色)+無蓋車(黄色·木材積載)+無蓋車(灰色·木材積載)+無蓋車(小·灰色·積載品不明(石炭?))+無蓋車(灰色·積載品不明(袋詰品?))+無蓋車(赤·石炭積載)+無蓋車(黄色·石炭積載)+無蓋車(灰色·防水シート)+無蓋車(橙·石炭積載)+車掌車(LMS箱型)



5月の80周年を前に日本公式が出してきたこの製品には、他国のファンからも驚きの声が上がっています。

この一度だけなのか、はたまた他の機関車にも波及するのか、注目です。