「世界史探究」の勉強法 | 京阪大津線の復興研究所

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1.世界史を選ぶか否か

今回の記事では、大学入試レベルの世界史探究の勉強法について、実体験を踏まえて説明していきたいと思います。ちなみに、私が現役の時は単に「世界史」という科目でした。だからというわけではありませんが、本文では便宜上、世界史探究を「世界史」と表記させて頂きます。
 

まず、入試科目として世界史を選ぶかどうかの判断基準ですが、序盤に出てくる古代ギリシア人の名前を覚えられるかどうかが一つの目安になります。エウリピデスやトゥキディデスなど、覚えにくい名前が続出しますが、古代ギリシア人より複雑な名前は世界史に出てきません。
 

よって、この壁を越えられるかが最初の関門になるでしょう。こんなものはとても手に負えない、と感じる方には日本史探究など他科目での受験をおすすめします。

 

世界史の選択者数は減少傾向にあると言われています。暗記量が増加して負担が大きくなったのが理由との報道もありますが、具体的にどれくらい増えたのかは不明です。


ただ、河合塾が公表している最新データによれば、大学入学共通テストの「歴史総合,世界史探究」の平均点は66.12点です。「旧世界史B」 の68.20点と大差ありません。「歴史総合,日本史探究」は56.99点なので、どちらが点を取りやすいかは明らかです。

 

私の場合、高校の世界史の先生が、2年生の1学期にいわゆる「関関同立」の過去問題を解かせてくれたことが、選択の決定打となりました。さすがに難解で、72点しか取れませんでしたが、「今の勉強法を続ければ手が届く」との確信が得られたのです。

 

2.人名の覚え方

さて、世界史を選んだ場合、複雑な人名を覚える方法ですが、私が独自に考案したものとして「万葉仮名方式」があります。

 

学習を進めていくと、「インノケンティウス3世」という絶頂期のローマ教皇が出てきます。これに適当な漢字、例えば「院之検定臼」を当てはめるのです。こうすれば「インノケティンウス」と間違えるような凡ミスを防ぐことができます。

 

「定」は「ティ」ではなく「テイ」ではないかとのツッコミが聞こえてきそうですが、「ィ」を「イ」と書いたことで不正解になったという話は、今までに聞いたことがありません。あのCannonでさえ「キヤノン」と書いて「キャノン」と読まれているではないですか。ご心配には及びません。

 

前項で触れた古代ギリシア人の場合、エウリピデスには「絵売非°死」を当てましたが、トゥキディデスはさすがに困難です。「ツキディデス」が許容されるなら「月出井死」で済みますが。

 

いずれにせよ、すべての人名や地名、重要語句にこの手が使えるわけではありません。ことごとく当てはめようとすれば、「万葉仮名」を考え出すほうに時間を取られてしまうからです。
 

手段が目的にすり替わってしまうほど無駄なことはありません。同じ理由で、ノートの書き方などにこだわりすぎるのも考えものです。

 

3.暗記科目で重要なこと

暗記科目で大事なのは、「一つの方法にこだわらないこと」です。「万葉仮名方式」もあくまで選択肢の一つに過ぎません。


例えば昔、「記憶術」と呼ばれる暗記方法が話題になったことがあります。端的に言えば「こじつけてイメージを思い浮かべて覚える」というものでした。


この手段を全面的に否定するつもりはありませんが、「記憶術」に限らず、一つの方法ですべてを暗記しようとすれば、必ず挫折します。

 

語呂合わせでも暗唱でも書いて覚えるのでも構わないので、とにかく複数の方法を組み合わせるのです。どの語句をどの方法で覚えるかは自由であり、気分次第で選んで構いません。


ただ、年号の暗記は語呂合わせが最も効果的です。各種の参考書で紹介されている語呂合わせはそのまま使えばよく、自分で新たに考える必要はありません。その時間があるなら、参考書に載っていない年号の語呂合わせを作るべきでしょう。


大学入試レベルの問題で、「この出来事は⻄暦何年に起こったか」と直接聞いてくることはめったにありません。ただ、年代順に並べ替える問題や、同時代の他地域で何が起こっていたかといった問題には、年号暗記が役に立ちます。

 

出題側からすれば、歴史のつながりを正確に把握する思考力を求めているのでしょうが、解く側からすれば、機械的に処理できるならそれに越したことはありません。次の項目で紹介するような、否応なしに思考力を求められる問題もあるので、脳の体力をなるべく温存しておきましょう。


ちなみに私の場合、ローマ帝国の末期について、「さざれ(330)石の巌とならぬローマかな(コンスタンティノープルへ遷都)」「キリスト国教化を策に(392)する」「東⻄⼆分 試行錯誤(395)」などを作ったことがあります。

 

4.知識と知恵

かつて、ある大学の入試で以下のような問題が出されたことがあります。

 

次の文を読んで、(A)と(B)の空欄を埋めよ。
 東ローマ帝国は、その首都の旧名にちなんで(A)帝国と通称されることもあったが、正式名称は最後まで(B)帝国であった。
 

「その首都」とは、コンスタンティノープル(現・イスタンブール)です。旧名はビザンティウム(ビザンティオン)で、ギリシア人の植⺠都市でした。それをローマが征服し、のちに改称したのです。


よって、(A)帝国とは「ビザンツ帝国(ビザンティン帝国)」です。これは知識があれば解ける問題です。


一方、(B) 帝国とは何でしょうか。答えを先に示すと、「ローマ帝国」です。では、⻄ローマ帝国の正式名称は何かというと、こちらもローマ帝国なのです(注:「西方正帝の領土」だったという説もあります)。


例えば、韓国の正式名称は「大韓⺠国」、北朝鮮は「朝鮮⺠主主義人⺠共和国」です。また、かつての東ドイツは「ドイツ⺠主共和国」、⻄ドイツは「ドイツ連邦共和国」でした。


いずれも正式名称に方角は含まれていません。我こそは朝鮮半島ないしドイツの正当な継承国家である、という自負がそうさせたのでしょう。


ローマ帝国の場合は、仲が悪くなったというよりも、広すぎて統治が行き届かなくなったから東⻄に分裂したのですが、東ローマ帝国も⻄ローマ帝国も我こそが正当継承者、という思いがあったはずで、だからどちらもローマ帝国が正式名称なのです。


世界史の専攻者で、「ローマ帝国」という単語を知らない人はいないでしょう。しかし、それが(B)に入ると判断するのは簡単ではありません。(B)の空欄を埋めるには、知識だけではなく知恵、すなわち思考力が不可欠です。

 

こういう角度から真の学力を問うてくる出題があることを、覚えておいて損はありません。世界史は単なる丸暗記の科目ではないのです。

 

もっとも、これは高校時代の国語の先生の言葉ですが、「暗記もできないのに思考力が身につくわけがない」のも真理です。

 

5.頭の中の地球儀?

世界史選択者を縛るものの一つに、「ある国や地域の歴史を一定期間学習し終えると、今度は時代をさかのぼって別の国や地域に移るので、同時代に何が起こったのか分からなくなる」という固定観念があります。

 

私自身も中学時代には、日本史と世界史の年表を横に並べたノートを自作するという虚しい行為を続けていました。高校に入ってからはそんな暇がなくなったので止めましたが、わだかまりは解けないままでした。


そんな私の迷いが晴れたのは、大学受験前に予備校の冬期講習に通っていたときのことでした。そこで世界史の先生が、こう仰ったのです。


我々世界史の受験のプロでも、頭の中に各時代の地球儀があるわけではない。例えばヨーロッパでスペイン継承戦争が起こっている時に、地球儀をクルッと回したら同じ時代の中国の事件が出てくる、というふうにはなっていない。だからそんなことは目指さなくていい」


これを聞いて、私は気持ちが楽になりました。そもそも、同時代の他地域で何があったか、といった類の問題は、数の上では知れています。3.で述べた年号の暗記で補えば十分です。「各時代の地球儀」などという虚像を求めるよりも、各国や各地域の歴史を縦に系統立てて頭に入れるほうが、はるかに重要かつ実用的なのです。

 

6. おすすめの参考書

暗記、すなわちインプットが完了しても、世界史の学習は終わりではありません。より大切なのは、アウトプットです。
 

いくら知識を頭に叩き込んでも、問われたときに回答を引き出せなくては意味がありません。私の場合は、重要語句をプリントに赤系統の文字で書き、赤い透明の下敷きやシートで隠して答える方法を繰り返していました。

 

広く知られた手段ですが、地道に続ければ高みに到達できます。私の高校の世界史の先生は、丁寧な構成のプリントを作成して、生徒が空欄に穴埋めをすれば済むようにしてくれたので、大変助かりました。

 

これと同様の効果を生む参考書として私が推薦するのは、山川出版社の『世界史探究 書きこみ教科書詳説世界史(世探704準拠)です。ただ、空欄以外の用語を覚える場合、市販の赤シートに付属している緑のペンで塗ると、文字が読みづらくなります。水色のサインペンを用いるのがおすすめです。

 

なお、赤のボールペンや赤のサインペンは、シートを被せたときに筆跡が透けてしまうので、必ず赤鉛筆で記入してください。もちろん、自作のノートに書きこむ場合も同じですが、例えば「基本」を赤、「応用」を朱、「それ以上」をオレンジの色鉛筆で分けて記すのも一案です。


加えて、全国歴史教育研究協議会の『世界史用語集』、第一学習社の『世界史図表』あたりを揃えれば、参考書は事足ります。


後は、過去問を徹底的に解いてください。特に有名私立大学はそれぞれ癖が強く、その学校の傾向に慣れておくことが不可欠だからです。

 

7. 目指すべきところ

大学を受験するなら、目標はもちろん合格です。最高点で受かろうと、ボーダーラインぎりぎりで受かろうと関係ありません。要は合格すればいいのです。


もっとも、世界史が得意科目になった場合、高得点を取るに越したことはないでしょう。当然そのほうが合格に近づくし、他の科目を補うことにもなるからです。


ただ、これだけは肝に銘じておいてください。狙うべきは100点ではなく、99点です。なぜなら、90点を99点に上げるより、99点を100点に上げるほうが、はるかに難しいからです。たった一つのミスさえ許されないのですから。


しかし、見方を変えれば99点と100点はたったの1点差です。その僅かな差を埋めるために労力をつぎ込むのと、他の科目に時間を割くのと、どちらが有益かは比べるまでもありません。


私は中学校の時に、社会科の定期テストで一度だけ100点を取ったことがあります。それまであと一歩で逃し続けていたため意地になってしまったのですが、他の教科を犠牲にしてまで時間をつぎ込んでしまいました。そんな不毛なことをするなら、苦手な数学などに力を注ぐべきだったと今でも後悔しています。

高校では、定期テストと全国模試で一回ずつ100点を取りました。ただ中学の時と違うのは、あくまでも99点を狙った結果としての100点であることです。もちろん、他の教科の勉強時間は一切削りませんでした。

皆さんも、世界史が得意であろうとなかろうと、他の教科とのバランスは忘れないようにしてください。特に英語は、文系でも理系でも避けて通れないので、最も時間を費やすべき科目です。国語と数学は少なからず適性や才能に左右されるので、必ずしも学習時間と成績は比例しませんが、英語は努力だけで十分に大学受験レベルへとたどり着けます。

昨今は、とかく日本人の英会話能力の低さばかりが指摘されがちですが、日本の英文法教育は昔から一貫して高水準です。私個人、かつて勤めていた会社では、海外の現地法人と英文のメールをやり取りをするのが日常だったので、「受験英語」には多いに助けられました。

最後は話が世界史から逸れてしまいましたが、皆さんの今後のご健闘をお祈りしています。勉強に疲れたときは、気分転換にこちらの記事を読んでみてください。学校では習わないことが書いてあります。

 

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