年号の記載はありませんが、1957(昭和32)年6月に中央線車内で中野車掌区の車掌によって発行された、車内乗換券です。

青色こくてつ地紋の駅名式券で、概算鋏でせん孔して発券する様式になっています。
御紹介の券は、国鉄がまだ3等級制であった当時、京浜東北線とともに最後まで2等車を連結していた中央線の2等車(現在のグリーン車相当)の車内で、3等の乗車券を所持している旅客が、乗車後に2等車へ変更した際に発行されたものです。
御紹介の券の場合、「下り」の欄に入鋏がありますので、御茶ノ水駅で乗車し、新宿駅までの区間についての変更になります。
現在で言えば、グリーン券を持たない旅客が、車内でグリーンアテンダントからグリーン券を買い求める行為と同様です。
現在では中央線の快速電車には乗務していないようですが、当時は中野車掌区の乗務員が中央線の快速(当時は急行線)電車の乗務を受け持っていて、2等乗車券を所持していない旅客に対して差額および精算手数料を徴収していました。
ただし、ここで言う中野車掌区は、国鉄時代に三鷹車掌区が設立された際に廃止されており、JR民営化後の平成10年代に、新宿運輸区から中央・総武線各駅停車と地下鉄東西線直通電車(中野駅~三鷹駅間)の行路が移管されて発足した現在の中野車掌区(現・中野統括センター 中野北乗務ユニット)とは全く別の組織ということになります。
中央急行線の2等車は、この券が発行された1957(昭和32)年6月19日で共に最後まで残っていた京浜東北線の2等車と同時に廃止され、以後、今回の中央線のグリーン車営業が始まった昨日の2025(令和7)年3月15日までの約68年間、首都圏の「国電」と呼ばれた通勤電車は3等車(後に2等車、そして普通車)だけの運用が続けられていました。