海外の路面電車では、超低床化によるノンステップ車両が早い時期から導入されていましたが、日本ではその時期でもステップ付き車両が導入され続けていました。そんな日本国内の路面電車で初めて導入された超低床車両が、熊本市交の9700形です。ドイツで製造されていた超低床車両をベースに、熊本市交用に仕様を変更して新潟鐵工所で製造されました。近年では海外製の部品のサポートが終了して故障が増え、先輩の吊り掛け駆動の高齢車両がかくしゃくとする中で一部は引退が進んでいます。
車内です。撮影の都合でショートショートですが、A・B2両で1編成を組んでいます。こちらは最後期に投入された3次車で、座席や握り棒の色調がそれまでに増備された編成よりも明るく賑やかになっています。パッと見で分かりにくいですが、車内デザインには意外にも水戸岡さんも関わっているとのこと。
ドアです。明るい黄色に塗装されたプラグドア、色調だけ見るとJR北海道っぽい気がします。窓が非常に大きく解放感がありますが、残念ながら日暮れでその解放感もあまり実感しにくく…(汗) それでも、ドアから入ってステップを上がらなくて良いというのは、当時の乗客も驚きと歓喜をもって迎えたことでしょう。
最前面です。従来(国内在来)車は運転台のほぼ横に出口のドアが配置されていましたが、海外仕様車を多少の設計変更の上で投入したためか、出入口のドアがやや後ろに設置されています。運転台周りが広くなり運転士さんの居住性が改善された一方で、運賃収受の際は後ろを向かないといけなくなったデメリットもあります。はてさて、運転士さんはどう思われているのでしょうか。
天井です。握り棒はドアと同じく黄色塗装となっていて非常に目立ちます。照明はカバー無しの蛍光灯、天井高さがそこまで無いためか少し埋め込む形で設置されています。冷房の吹き出し口はラインフロー式でスッキリしました。
窓です。二段式で、下段は面積の大きい固定窓、上段は換気のため横引き式で開閉可能です。
日除けはロールカーテンタイプのものが備わっていますがカーテンレールは無く、柱に付けられた金具に爪を引っ掛ける方式です。柱に降車ボタンが備わりますが、この頃はまだボタンが比較的小さいタイプですね。
座席です。鉄道は車体を支える、そして走るために輪軸を必要としますが、超低床車は床面を下げる代わりに輪軸が通る部分は必ずデッドスペースとして付き纏います。そこでこの車両は思いきって車軸を廃止し、自動車のように独立した車輪を取り付けることで通路を極力平坦にしています。しかし車輪部分はどうにもならないことからタイヤボックスを設け、その部分にはクロスシートを置いています。かつて8200形などでクロスシート搭載経験はありましたので、クロスシートの導入は特に問題は無かったのでしょう。
ドア付近には固定クロスシートがあります。後方車両の左側はトラムガイドさんの乗務スペースとなることから、乗客が座ることが出来ません。なおこのグループからは緑地に江戸紋様のひとつである松葉柄を配したモケットを採用しており、このモケットは既存車両にも広がって来ております。また2次車までは片側1人掛けであったため着席定員が少ないことが不満点として挙げられたことから、横幅を広げています。が、いいとこ1.5人掛けくらいのものなので、クロスシート配置でしっかり座れるのは大人と子どものペアくらいです。
ロングシートです。車端部側のドア向かいは優先座席、最前面側のドア向かいは折り畳み可能な一般座席で車椅子スペースにもなります。画像は優先座席で、一般座席とモケットを区別しています。クロスシートも含めて背ズリは高めになっておりホールド性は向上していますが、クッションは薄く硬めです。乗車時間は長くならないしいっか、って感じではありますけどね。
さて、今回乗車したのは水道町止めの臨時便、このあと車庫に入る回送電車となります。幕回しで数コマ撮影してみました。まずは臨時便の西辛島町行き、熊本マラソン開催に伴う交通規制時に運転されるのだそうな。
お次は試運転、これは検査後などで見られそうですね。
続いて教習車、新人運転士さんの対応ですね。必ずしもこの系列が充当されるとは限らないので、見られるチャンスはあまり多くないかもしれません。
最後はこの車両が一番ビクついてるであろう故障車。まぁ、見ないに越したことは無いですね…。