9102М飯田線秘境駅号豊橋行きは為栗駅、平岡駅、伊那小沢駅と停車する。前回秘境駅である田本駅でJR東海の案内氏が下車したがその”謎解き”が出来た。為栗駅は鏡のように輝く天竜川が絶景だ。12分の停車時間があるがそれでは物足りないので当日朝に事前見学した。為栗駅は自動車で直接来れない駅とされるがそれは本当の話か?平岡駅では南信州の物販大会が行われ幻の茶と言われる中井侍駅付近で収穫される茶を飲むことが出来る貴重な機会だ。伊那小沢駅は相対式ホームであるが反対側のホームに行くと下手すれば車内に戻れなくなってしまう恐怖の踏切が待ち構えていた。

2024年5月25日(土)乗車

 

【秘境駅でJR東海の案内氏が下車した飯田線秘境駅号】

 

↑前回も述べた通り秘境駅である田本駅(秘境駅ランキング全国第5位)で運転扱いの乗務員とは別にJR東海の案内氏(制服姿)が4名乗務していたが、何故かこの駅で下車。田本駅の外に出るには獣道を約20分歩かないといけない。案内氏だけが田本駅に残された形となった。どうやって脱出するのか?と言う話である。この理由は飯田駅発車直後の放送でその旨の案内があったが、そうなる理由はスグにわかった。ここでは「案内氏が田本駅で下車」と言う事実だけ伝えて話を進める。

 

【温田駅で豊橋発の飯田線秘境駅号と交換】

 

 

↑田本~温田

引き続きクネクネした線形が続く。それでもしっかりと線路設備は整備されている。マクラギはPC化されているし運転用の架線に加えて斜面沿いには通信ケーブルが張り巡らされている。これが当然の姿なのかもしれないが、地方路線だとしっかりと整備されている路線の方が少ない。安全運行のためには設備の定期的な維持管理作業は必要だし、不良品は交換も発生する。だがそれは最低条件であり、諸々の最新設備を追加で導入する設備投資までやるのは、鉄道会社や路線によってどうしても差が生じる。収支が良い路線を中心に実施する事が多い。JR東海は地方路線でもこの種の設備投資に積極的である。これがJR西日本(主に中国地方)やJR九州(都市部以外)だとかなりこれが消極的であったりする。JR東海のこの積極的な姿勢は前面展望からも伝わるし、見ていても気持ち良いものである。

 

 

↑特急伊那路停車駅の温田駅で豊橋発の飯田線秘境駅号飯田行き(9101М・373系F7編成)と交換する。時刻表上は両方とも「レ」(通過)となっている。9101Мの方は運転停車で乗務員がホームに出てJR(東海に限らず)では珍しく「通過監視」を行っている。乗車中の9102М(豊橋行き)の方はそのまま通過である。前方の出発信号機もG現示(青信号)になっているので停車する必要も無い。

 

 

 

 

 

 

↑温田~為栗

為栗駅手前で渡る橋が飯田線の中では有名な撮影地でもあるが、前面展望から見るとこんな感じである。

 

【秘境駅ランキング全国第13位の為栗駅・別のJR東海の案内氏が待っていた・実はジャングルなホーム・鏡のように輝く天竜川を見ることが出来る・自動車で来れない事は本当の話か?】

 
 
↑為栗駅は秘境駅ランキング全国第13位である。大きくカーブしている駅である。有効長は4両分程度であるが見通しが非常に悪い。ホームの端から見ると前2両分も満足に見えない。都市部の駅ならばITV(車掌用ホーム監視画面)が設置されているが、秘境駅にはそんなものはあるわけがない。死角が多いのでドア閉め作業も気を使うだろう。
飯田方のホームの端には別のJR東海の案内氏が9102Мの到着を待っていた。これで”謎解き”だ。田本駅で下車した案内氏は温田駅で交換した9101Мの方に乗り換えた。逆に9101Мでは為栗駅で豊橋から乗務の案内氏が下車し折り返し9102Мに乗り換えた。つまり、飯田~田本の往復乗務と豊橋~為栗の往復乗務と言う形で案内氏が別々に用意されていた。前者は伊那松島運輸区(または飯田支店)、後者は豊橋運輸区の担当である。2021年4月に飯田線秘境駅号に乗った時は途中交代無しで全区間通しで案内氏が乗務していたので、これは前回との変更点である。これは単発的な臨時列車と言う性格上、人員確保の都合によるものである。そのため毎回同じ体制ではないため、次回以降はまた違うのだと思う。
 
 
 
↑下車すると恐ろしいほど車両とホームの隙間。広角にして撮影すると迫力ある記録で、写真からもこの隙間の大きさがわかるだろう。
 
 
 
↑クモハ(3号車)とサハ(2号車)の連結部分は先頭部分以上に相当な隙間が出来ている。ドア扱いをした状態で「逆”く”の字」の姿もなかなか見応えがある。
 
 
↑「為栗」の表示も記録しておく。為栗駅は14時26分~14時38分の停車である。為栗駅は個人的には好きな駅で12分では物足りない。秘境駅は人が居なくて当たり前だ。本来の姿を見るべく当日朝に事前に現地調査した。
 
 
 
 
↑為栗7時58分発1507М天竜峡行き(213系5000番台・大垣H3編成・クモハ213-5003)から下車する。9102М飯田線秘境駅号豊橋行きと全く同じ場所から撮影したが、JR東海では珍しく運転士も後方監視している。やはり死角が多すぎるため2両しかない編成でも前後で列車監視が必要である。2026年度から飯田線の中部天竜~天竜峡間でもワンマン運転が始まるが、ホーム上に鏡を設置する以外の死角の対策は行うのだろうか?今の所313系に側面カメラ設置の予定は無いのでどのような対策を行うのか気になる所だ。
 
 
 
↑ホームの飯田方はジャングルである。為栗駅がこんなに鬱蒼としているとは思いもしなかった。過去に何度も訪問しているが、この事は今まで案外発見出来なかった。ホーム全体が曲線のためレールの内側には脱線防止ガードが設置されている。
 
 
 
↑新しい「電灯」があった。2022年6月製造との事で近くにある高圧ケーブルは2023年製である。為栗駅の照明はLED化されていた。長い目で見ればLED化した方が維持管理費は安くなる。しっかりと設備投資している事に安心した。
 
 
↑ジャングルである事を見せつけた駅名標
 
 
 
↑待合室付近にも新しい高電圧配電盤があった。駅舎と言うものは存在せずホーム上に待合室がある。ここにベンチと時刻表・運賃表・諸注意が掲示されている。ホームの豊橋方に出入口があるのでここを通る。
 
 
↑これは列車内からも見ることが出来る風景(車窓)であるが、大きくカーブして奥には橋があるみずみずしい天竜川が絶景と思ってしまう。飯田線の車窓の中で素晴らしい場所と言えば、為栗駅は確実に上位候補に出てくる。だが停車本数は少ないので下車して現地調査…は少々の勇気が必要である。
ところで、為栗駅は秘境駅と言われるには理由がある。停車本数以外にも当然要素があり、特に大きいのが「直接駅前まで自動車で近づくことが出来ない」と言う事だ。これは事実である。徒歩出ないと為栗駅に出入りする事は出来ない。では田本駅みたいに獣道を何十分も歩かないと連絡道路にたどり着かないのか?と言うとそうでもない。天竜川に架かる橋を渡ればすぐに連絡道路にたどり着く。しかも少々ではあるが駐車位置もある。為栗駅までの道路は決して酷道とか険道では無く整備された走りやすい道路である。自動車で直接訪問する事はむしろ容易であったりする。
 
 
↑ホームを出るといきなり柵が無い線路と並走する。入ろうと思えば容易に線路内立入は可能である。すると温田駅側から列車の走行音が聞こえてきた。
 
 
 
 
↑528М豊橋行き(為栗駅は通過・8時09分・213系5000番台H6編成)が通る。時刻表をじっぐり読み解けば528Мの存在はわかるが、事前調査(事前予習)が足りず直前まで気付かなかった。快速とは称していないが通過駅がある普通列車で金野、田本、為栗、出馬、池場、柿平、下地、船町は停車しない。
 
 
↑橋までの道路。自動車1台が通れるような幅は確保されていない。事実上「歩道」である。
 
 
 
↑これが天竜川に架かる橋である。長さは117メートルあるとされる。つり橋である。通行人数が多ければ橋が揺れる事もある。それは飯田線秘境駅号停車時くらいで、普段は多くの人が一斉に通る橋でもない。
 
 
 
 
 
↑飯田線(駅間で言うと為栗~温田)にも橋が架かっており、望遠レンズが有利ではあるがここを通る列車を被写体とする写真は有名である。
 
 
↑歩行者専用の天竜川に架かる橋を渡ると車道になる。
 
 
↑記録(撮影)するのを失念していたが、為栗駅に連絡する天竜川に架かる橋は事実上の歩道なので車両通行止めの標識がある。これが名物であったりもする。
一通り為栗駅周辺を現地調査した後は、8時39分発501М天竜峡行き発車までの間、鏡のように美しく輝いた天竜川をボンヤリと眺めた。ボンヤリと過ごすのが秘境駅の楽しみだ。
 

【平岡駅では南信州の物販大会を開催】

 
↑9102М飯田線秘境駅号豊橋行きに話を戻す。事前調査をしたため飯田線秘境駅号+為栗駅の構図だけに絞った記録(撮影)だけにしておき、後はボンヤリと風景を眺める。発車直前になればほとんどは車内に戻っている。
 
 
 
↑為栗~平岡、これが飯田線の車窓を代表する絶景区間である
 
 
 
↑平岡駅では14時46分~15時02分まで停車する。特に秘境駅ではない。長野県下伊那郡天龍村の”大都会”だ。特急伊那路ももちろん停車する駅で車両の夜間停泊もある(ので夜間に平岡行き・早朝に平岡始発があるのだ)。
 
 
↑平岡駅は温泉施設(宿泊も可能)と地元産品を扱う物販店(常設)もある。飯田線の秘境駅区間(水窪~天竜峡)では珍しく、ジュース自販機も設置されている。秘境駅区間は日本の鉄道史に残る難工事が行われた。そのパネル説明もある。じっくり読みたかったが時間が足りず次回来た時にしたい。
 
 
↑駅前の広場では祭り(物販大会)が開催中。飯田線秘境駅号運転日に行うもので、南信州の土産が買える。ここでしか買えない食べ物が多数ある。その中で特にオススメなのは中井侍駅近くで収穫した幻の茶である。栽培農家が数軒しかなく広く流通していないため、遠くから来た人が飲む機会も非常に少ないと言う。この茶は非常にさっぱりとした味で飲みごたえも良かった。飯田線秘境駅号に乗車した時はこれを飲む事を毎回楽しみにしている。
平岡駅発車時点では地元の方による見送りがあり、そこにはアルクマも登場した。9102М飯田線秘境駅号豊橋行きでは16分程度しか止まらないが、9101М飯田線秘境駅号飯田行きでは13時22分~13時56分まで34分も止まるので南信州の食をタップリ楽しめるだろう。
 

【秘境駅ランキング全国第62位の伊那小沢駅・発車2分前に閉まってしまう恐怖の踏切】

 
↑秘境駅ランキング全国第62位の伊那小沢駅。相対式ホーム2面2線で定期列車の列車交換もよく行われる。15時07分~15時14分の停車で交換列車はなかった。だが伊那小沢駅は大急ぎで行動する必要がある。
 
 
↑とりあえず構内踏切を渡り反対ホーム(1番線・飯田方面行きのりば)へ。早歩きで飯田方へ進める。
 
 
 
↑1号車から9102М飯田線秘境駅号豊橋行きを編成で記録(撮影)しておく。これがしたかったのだ。この位置までは距離があるため来る人はかなり少ない。
 
 
↑1番線ホームからはこんな風景が見える。周辺道路は整備されており自動車で直接訪問する分には比較的容易である。但し伊那小沢駅には駐車場が無いので、広くない空き地に無理矢理止めるしかない。
 
 
↑大半のお客は構内踏切から先頭3号車の顔の部分を撮影している。本来ならば撮影禁止区域であるが反対列車が無い事、第一種踏切でもあるので作動しない限りは安全上問題なしと言う事か。
 
 
↑構内踏切から豊橋方の線路を撮影する。すぐにトンネルに吸い込まれる。トンネルの右側にも線路が伸びるがこれは安全側線か保守用車両の引き込み線だろう。
それにしても伊那小沢駅はヒヤヒヤものである。構内踏切は発車の2分前つまり15時12分頃に作動する。作動すると9102М飯田線秘境駅号豊橋行きが停車するホーム(2番線)には戻ることが出来なくなる。構内踏切で撮影する分には警報機が鳴れば慌てて2番線に戻れば良いが、1番線に残ってしまうと9102Мの車内は戻れなくなってしまう。次に構内踏切が開くのは9102М発車後となる。案内氏が特に気を遣うのはここで、構内踏切から1番線側に行く場合遠くに行かない事を推奨している。またあくまでも「発車2分前の15時12分頃」であって、厳密に2分前(120秒前)に踏切が作動するわけでもない。具体的にどのタイミングで作動開始するのか?は誰にもわからない(それは踏切のみが知る)。その辺は電気的・機械的な都合による。すなわちは発車3分前(15時11分)までに1番線から出ていれば一応は9102М車内に戻れると思って良い。
15時12分を数秒過ぎた所で踏切が作動。実際にはその直前までに案内氏の誘導で客全員が2番線に戻っていたので、1番線に取り残された客は皆無であった。
この先は特に注目される中井侍駅、小和田駅と続くがこの辺も話が長くなるので次回にしたい。