京王電鉄は14日、3月15日(土)に実施するダイヤ改正の概要を発表しました。今回はこれについて分析します。ここでは、京王線と直通運転を行う都営新宿線のダイヤ改正についても扱います。
※記事中の図は、京王電鉄プレスリリースから引用しています。時刻表は、「東京時刻表」をもとに当局で作成しています。なお、改正後のダイヤは当局の予想ですので、予めご了承ください。
〇京王線 有料列車(京王ライナー、Mt.TAKAO)
1.平日朝ラッシュ後 新宿行きライナー増発
平日朝ラッシュ後の時間帯に、京王八王子発、橋本発のライナーが1本ずつ増発されます。
いずれの列車も、既存の特急列車をライナーに置き換えるのではなく、ライナー列車を純増し、特急列車のすぐ前もしくはすぐ後ろを走ることになるとみられます。
2.相模原線 ライナー列車
(1)平日 始発駅、時刻変更及び速達化
平日運行の京王ライナー44号(現行:42号)が橋本始発に延長され、時刻変更を行うことで所要時間が短縮されます。先行列車の追い抜かしなどを見直すことで、所要時間短縮を図るとみられます。
(2)平日 ライナー列車→通常列車の乗り継ぎ改善
平日の橋本行き京王ライナーについて、全列車が京王多摩センターで通常列車に乗り継ぐことができます。これにより、京王ライナーの停車しない京王堀之内・多摩境へのアクセスが改善されます。
現行の京王ライナーをみると、53号・55号の2本は、京王多摩センターで通常列車へ乗り継ぐことができず、後続列車を待つしかない状況にあります。その部分を改善し、橋本行き通常列車を京王多摩センターで待たせ、ライナー列車からの乗り継ぎ客が利用できる形に変更するとみられます。
(3)土休日 橋本行きライナー増発
土休日の夕方時間帯に、橋本行き京王ライナーが3本増発されます。
現在は1時間1本間隔で運行されていますが、改正後は18~21時台において40分間隔での運行となります。
3.高尾線 ライナー Mt.TAKAO
(1)高尾線 京王ライナー新設
平日に高尾山口発着の京王ライナーが初めて設定されます。また、土休日の午前中には高尾山口行き京王ライナーが初めて設定されます。
◇平日
◇土休日
新宿~京王八王子・高尾間は、JR中央線と競合しています。そのJR中央線でも3月15日(土)にダイヤ改正を実施し、快速列車のグリーン車営業がスタートします。京王八王子発着、高尾山口発着のライナーを増発する背景としては、中央線快速電車のグリーン車サービスへ対抗する狙いがあるとみられます。
(2)Mt.TAKAO 一部種別変更
新宿9:00発の「Mt.TAKAO」1号が、京王ライナーに変更となります。現在は新宿~高尾山口間において明大前にしか停車していませんが、改正後は府中より先の急行停車駅にも停車します。これにより、Mt.TAKAO号は3本から2本となります。
当局の推測になりますが、この時間帯は府中や京王八王子に向かう乗客も多く、その乗客も取り込みたいという狙いが考えられます。
(3)子どもといっしょ割座席指定券
現在、土休日の期間限定で発売されていた「子どもといっしょ割座席指定券」が、3月15日(土)以降は通年販売となり、全ての土休日で利用できるようになります。
この「子どもといっしょ割座席指定券」とは、大人1名・こども1名の2枚セットの指定券で、価格は2枚セットで500円です。通常購入の場合、座席指定券は大人・こども同額で410円、410円×2=820円となるので、320円お得になります。
高尾山や多摩動物公園へのレジャー、都心への買い物なども、小さなお子様と一緒に利用しやすくなっています。お子様連れ専用車両も設定されているので安心です。
〇京王線 通常列車
(1)種別変更
平日朝ラッシュ時の3列車の種別が、以下の通り変更となります。
これをもとに、改正後のダイヤを予想し、現行ダイヤと比較してみます。
<現行>
<改正後予想>
1つ目の変更は、高尾山口7:22発の急行が、7:20発特急に変更となることです。特急は急行より上位の種別ですが、京王高尾線(北野~高尾山口)に限っては特急が各駅に停車し、急行は通過運転を行うという逆転状態になっています。現行では、急行通過駅の停車列車の間隔が13分ほど空いているので、急行を特急に変更して救済するものとみられます。
2つ目の変更は、京王八王子7:33発区間急行が、7:38発急行へ格上げされることです。これにより、京王八王子~新宿間の所要時間が8分短縮されます。
3つ目の変更は、京王多摩センター7:45発の急行が、7:44発区間急行へ格下げされることです。八王子からの列車を急行へ格上げしたのにあわせ、逆にこちらの列車を区間急行へ変更するものとみられます。
また、京王相模原線内は各駅に停車となることで、急行通過駅の停車本数を増やし、混雑緩和を図る狙いもあると考えられます。
(2)日中時間帯
日中時間帯の運行パターンが変更となり、特急列車がややスピードアップします。あわせて、快速は八幡山で特急に追い抜かされるダイヤとなっているところを、上りは新宿まで、下りは調布まで先着となります。
こちらについても、改正後のダイヤを予想してみたいと思います。
<上り新宿方面 現行>
<上り新宿方面 改正後予想>
こちらについては、快速列車の調布駅での停車時間を増やし、八王子方面からの特急に加え、橋本からの特急新宿行きも調布で待避を済ませることで、八幡山駅での待避をなくすと考えると、一番自然かなと思っています。
<下り 京王八王子・橋本方面 現行>
<下り 京王八王子・橋本方面 改正後予想>
下りについては、快速をそのまま調布まで先着させると、特急列車がスピードダウンしてしまうので、区間急行と快速の運行順序を入れ替えるのではないかと予想しました。ただ、このダイヤだと、特急の所要時間短縮に結びつかないので、その部分をどう工夫するのかが気になります。
(3)一部列車増車
新宿発着の優等列車が、全て10両編成での運行となります。コロナ禍後に利用が回復し、混雑してきているところを緩和する策とみられます。
(4)京王新線 増発
京王新線(笹塚~新線新宿)間について、平日は10:00~16:30に8往復、土休日は10時前後と18時前の時間帯に2往復増発となります。
〇京王井の頭線
(1)平日朝 急行列車増発
吉祥寺8:37発、8:43発の急行渋谷行きが増発となります。現行ダイヤでは、吉祥寺駅7:07発~8:46発の間は急行列車の運転がなく、全て各駅停車で運行されていますが、改正後は急行の運行時間帯が10分ほど延びることとなります。
(2)土休日 日中時間帯増発・急行所要時間短縮
日中時間帯は急行・普通それぞれ8分間隔で運行されていますが、7分半間隔の運行となります。これにより、全体で5.5往復増発となり、ダイヤも分かりやすくなります。
また、急行列車の吉祥寺→渋谷所要時間が18分から17分に1分短縮され、上下とも17分となります。
〇都営新宿線
(1)平日 急行新設
平日17時台に、大島発笹塚行き急行が1本新設されます。現在、17時台に大島発笹塚行きの普通列車が3本設定されており、このどれか1本が急行に格上げされるものとみられます。都心から京王線沿線への帰宅客の利便性を図る狙いがあるとみています。
(2)平日 普通列車増発
平日18時台に、本八幡方面への普通列車1本が増発となり、急行通過駅の運転間隔の改善と混雑緩和が図られます。この時間帯の普通列車の最大の運転間隔は8分ですが、18時台は特に混雑する時間帯であるため、救済用に1本出すということだと思われます。
<まとめ>
いかがでしたでしょうか。ライバルのJR中央線でグリーン車サービスが開始されるということを意識してか、ライナー列車をテコ入れにかかったという印象を受ける内容になっています。
新宿~八王子・高尾間のグリーン料金は、Suica利用で750円、JREポイントを使う場合は600ポイント(ステージ上位の人は400~500ポイント)なのに対し、京王ライナーの指定席料金は410円です。
JRのグリーン車のほうは、リクライニングシート完備、アテンダントも乗務しており、車内設備や車内サービス面では優位ですが、グリーン車は自由席なので満席だと座ることができません。その点、京王ライナーは指定席なので、指定席がとれれば確実に座ることができ、しかもグリーン車よりも安いというメリットがあります。そのため、利用者の選択はある程度分かれそうです。
そして、話題を呼んでいるのは日中ダイヤの変更でしょう。プレスリリースからは快速列車の特急待避廃止と、特急のスピードアップがうたわれていますが、どのようにそれを実現させるのかは不明です。「列車によっては、所要時間が増大する列車もあるのではないか」という声も上がっています。この点については、実際の時刻が出た段階で再度検証したいと思います。
ライバルのグリーン車登場により、利用がどう変わるのか。そして日中の運行パターンがどう作用するのか、注目です。