水路の造形(5)ポニートラス橋を3Dで設計してみました。 | 16番ゲージレイアウトのこと..など

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16番ゲージの鉄道模型レイアウト・白縫鉄道川正線の制作記です。

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 前回の続きです。

 

 前回は、親柱のあるポニートラス鉄道橋の画像を掲載することができませんでしたが、その後、いくつかの画像を見つけたので、今回お目にかけたいと思います。

 

 まずは、「横濱鉄道蒸気出車乃図」と題する錦絵です。

 新橋~横浜の鉄道開業の頃、似たようなタイトルの錦絵が複数出版されたようです。

 この頃の橋は木造だったようですが、この図にあるトラス橋のボリューム感は、私のイメージにぴったりです。

 

First steam train leaving Yokohama

梅堂国政(Baidō Kunimasa) , as known 三代目 歌川国貞 (Utagawa Kunisada III), Public domain, via Wikimedia Commons

 

 次は、「本邦鐵道橋梁ノ沿革ニ就テ」という文献(久保田 敬一 昭和九年一月二十五日発行 業務研究資料 第二十二巻二号 鉄道大臣官房研究所)から、官設鉄道の二つの橋を紹介します。

 

 ひとつめは、神戸にあった木造トラスの「都賀川橋梁」です。

 この図は、文献掲載の図を参考に、私が作図しました。

 都賀川橋梁は、遥か昔に読んだ本に写真が載っていて、強烈に模型心を刺激された覚えがあります。

 

 さて、上の錦絵の橋と都賀川橋梁は、橋台部に親柱が建てられています。親柱の建て方としては、これが普通ですし、私もそうしようと思っていたのですが、次の実例を見て、気持ちが変わりました。

 

 次の実例とは、西宮と尼崎を分かつ武庫川に架かっていた「武庫川橋梁」です。

 この図も、文献を参考に私が作図しました。

 

 これは厳密には親柱ではなく、各スパンの端柱(橋の端にあるトラスの柱)に飾りが付いており、それが親柱のように見えます。

 

武庫川橋梁の図

 

 と言ったものの、この図だけではイメージしにくいので、画像を探したところ、国立公文書館デジタルアーカイブ(画像の二次使用は自由です)の中にありました。

 

武庫川橋梁の画像

 

 この武庫川橋梁を見たことで、川正線のポニートラス橋のイメージが固まってきました。

 すなわち、親柱を橋台部に備え付けるのではなく、端柱を親柱に見立てようと思ったのです(都賀川橋梁と武庫川橋梁の画像は、こちらにもあります)。

 

 そこで、今度は、格好の良い端柱の実例を探してみました。

 すると、道路橋ではありますが、こんな橋が見つかりました。

GLEN GARDNER PONY PRATT TRUSS BRIDGE, HUNTERDON COUNTY, NJ

JERRYE & ROY KLOTZ MD, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

GLEN GARDNER PONY PRATT TRUSS BRIDGE, HUNTERDON CTY, NJ

JERRYE & ROY KLOTZ MD, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

 

 この橋は、アメリカのニュージャージー州にある「Glen Gardner Pony Pratt Truss Bridge」で、1870年に架けられ、アメリカの国家歴史登録財にリストアップされています。

 1870年と言えば、最初の錦絵(新橋~横浜の鉄道開業開通は1872年)より古いですね。

 威厳がありながらも慎ましさを感じる端柱が非常に好ましく思えます。

 良い実例が見つかったので、ここで橋の検索を止めようとしたのですが、国内の事例を見つけたくなって、検索を続けると・・。

 

 ありました!

 最初は、北九州市にある”レンティキュラートラス”の「南河内橋」です。

 この橋は、1926年(大正15年)に架けられており、川正線の前身となる軽便鉄道よりは数年後のことですが、ほぼ同じ時期になります(川正線云々は、あくまで空想ですよ)。

 また、この橋は、国の重要文化財に指定されています(国指定文化財等データベース)。

 

South Kawachi Bridge1edit

Kenta Mabuchi from Fukuoka, Japan, CC BY-SA 2.0, via Wikimedia Commons

 

 次の事例は、隅田川に架かっていた”フラットトラス”の「二代目吾妻橋」です。こちらは 1887年(明治20年)の完成なので、川正線より早いですね。

 下の画像は「東京名所絵葉書」の写真で、他のいくつかの画像と同じく Wikimedia から拝借しましたが、1956年(昭和31年)12月31日までの公表、かつ 1946年(昭和21年)以前の撮影とのことで、パブリックドメインの状態です。このため、他の画像のように、出典を記したHTMLが準備されておらず、画像下側のリンクがありません(錦絵もパブリックドメインですが、こっちにはHTMLがありました)。

 

二代目吾妻橋の画像

 

 以上、ポニートラス橋に加え、トラス橋の親柱(端柱)の実例を見てきました。

 どうやら、川正線の開業時(大正中期)に、端柱飾りのあるポニートラスがあっても可笑しくはなさそうですね。

 

 という訳で、3Dで設計した川正線のポニートラス橋がこれです。

 橋長は約98mm、端柱基部の外側を起点にした幅が72mm、端柱の高さが39.5mmです。

 このくらいの大きさのポニートラスは、ネット上では、国内には見当たらず、海外の道路橋に散見されるのみです。おそらく、最小クラスのポニートラスだと思います。

 

川正線ポニートラス橋1

 

 私は3Dプリンターを持っていないので、出力は DMM MAKE を利用しています。

 DMM MAKE の出力条件を読むと、小さなリベットは出力できなそうですが、他の利用者の実例では出力できているので、今回は、初のリベット表現を試みました。

 

川正線ポニートラス橋2

 

 最後は端柱飾りの拡大画像です。

 参考にした Glen Gardner Pony Pratt Truss Bridge の端柱とは似て非なる様相となりましたが、作者自身は、そう悪くないと思っています。

 

川正線ポニートラス橋3

 

 さて、この3Dデータが、そのまま出力できるか否か、これからDMMにチェックしていただきますが、これまでもそうだったように、一筋縄ではいかないと思います。

 でも、何とか、データを修正しながら、オリジナルの鉄橋の完成に漕ぎつけたいと思っています。

 

 本日も、ご訪問ありがとうございました。

 

※ 都賀川橋梁と武庫川橋梁の図に記載した寸法については、次の文献を参考にしました。

「わが国における橋梁建設技術の近代化の方向づけについて--構造比較の視点からの一考察」

五十畑 弘, 榛沢 芳雄 土木学会論文集 (536) 69-85, 1996-04