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フランス モン・サン・ミッシェルを走る両運バス

2025.02.20

モン・サン・ミッシェルで一風変わったバスに出会う。

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Le Passeur
2024.9.11/Le Mont-Saint-Michel

▲フランス北西部、サン・マロ湾に浮かぶモン・サン・ミッシェル。このフランスを代表する観光地において、観光客の便に供されるのは写真左下に写るシャトルバス「ル・パスール(Le Passeur)」である
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Le Passeur
2024.9.10/Beauvoir

▲独特な形状をしたバスはドイツのCobus Industries社製。前にも後ろにも運転台のある「両運バス」となっている

フランス北西部、ノルマンディー地方はサン・マロ湾に浮かぶモン・サン・ミッシェル。周囲約900mの小さな島の上に何世紀にもかかってつくられた修道院は「西洋の脅威」とも称され、世界中の人々を魅了してやまない。1979には世界遺産にも登録され、年間300万人超を集めるフランスを代表する観光地となっている。

そんなスーパー観光地に、一風変わったバスが走っている。モン・サン・ミッシェルと、モン・サン・ミッシェルの対岸の街ボーヴォワールとの間を走るシャトルバス「ル・パスール(Le Passeur)」だ。モン・サン・ミッシェルの島の入口と観光客用駐車場などの約3kmの道のりを12分で結び、観光の便に供している。

一見すると観光地にありがちなシャトルバスだが、「ル・パスール」はただのバスではない。最大の特徴は、車両の前側にも後側にも運転台が付いている両運バスとなっている点である。同じ顔が車体の前にも後ろにも付いているだけでなく、乗降用のドアも左右両側に設置されており、両方向への運転に対応している。その特異な姿はまるで路面電車のよう。

こうした特殊な構造のバスが採用された理由は、バスが折返しを行う場所の制約による。特に、橋の上に設けられたモン・サン・ミッシェル側の終点で、通常のバスのようなUターンができないためだ。バスは終着のバス停で乗客を降ろした後、反対側の車線にある乗車バス停に移動。エンド交換をして反対側のドアを開けて客を乗せ、そのまま逆方向に走っていく。Uターンじゃなくて、Vターン?? 実にバスらしからぬ動きをする。

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Le Passeur
2024.9.10/Beauvoir

▲頭端式になっているボーヴォワール側の終点バス停。4つの乗り場を用いて大量の観光客をさばく。シャトルバスは季節や混雑度合いにより、5〜20分間隔で運転される
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Le Passeur
2024.9.10/Beauvoir

▲ドアは車体の反対側にも2箇所設置

車両はドイツの車両メーカーであるCobus Industries社製で、Cobus DES1)なる独自形式が与えられている。同社が得意としている空港用エプロンバスを応用したもので、Cobus 2500という車両をベースに製造された。2012年から2014年にかけて導入された12台が走っている。

現在のところシャトルバスの運行を担当しているのは、世界でさまざまな公共交通の運行事業を行うKeolisグループの現地法人、Keolis Armor。ボーヴォワールの観光案内所の隣に車庫を兼ねた営業所を構えている。運行時間は8時半から22時までだが、それ以外の時間もデマンド運行を行っており、営業所に連絡すればバスを走らせてくれる。いずれも料金は無料、すばらしいサービスだ。

  • 1)DESは、Double End Steeringの頭文字をとったものである。

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