つくづく、こんな場所によく駅を作ったなあと思う。
この定光寺駅は庄内川の断崖絶壁というそれはそれは限られた場所に造成された駅である。名古屋近郊の輸送どころか長野方面への長距離輸送も担う天下の中央本線、立派に複線そして電化もされてはいるが、よくぞまあこんな狭い所を切り開いて複線に仕立て上げたものかと思う。
写真左側を見ると、ITVモニタが壁面に固定されている。それだけ土地利用に余裕のない駅なのである。こちら側のホームは崖にせり出しているし。
道路から駅ホームに向かうためには2つ階段があり、そのどちらかを使う必要がある。その立地上、駅近隣の人口に乏しく乗降客が少ない。そのためエレベータやエスカレータといった便利なものは存在しない。この写真だけ見ると地方ローカル線の駅と言われても信じてしまうかもしれないが、この駅は名古屋から30分程度で向かうことができるし、毎時2本(ただし歪な間隔で)普通列車が停車する。その他1つの特急と3つの区間快速は通過する。当たり前だ。
上の写真とは別の階段から川の方を撮影した。右上にちらりと見える建物が直上の写真での待合室になる。庄内川とは別にこの駅至近には用水路が存在し、それもまたこの狭さを際立たせている。なにせ水路の上に家が建っているぐらいである。
山側のホームへは地下道を使ってアクセスすることになる。普通の駅では階段は線路と同じ方向に作られるのがセオリーであるが、この駅は線路に対して直角に掘られ、山の中をくりぬいて作られている。こっちの方が掘りやすいんだろうか。
駅の名古屋側はすぐに山の方へと向きを変え、線路は複線トンネルに吸い込まれていく。歴史のある中央本線に複線電化トンネルのような近代的な設備があるというのは、言い換えれば近くに放棄された単線トンネルがあるということで、実際この区間も複線トンネル左奥に単線用のトンネルが残されている。この駅を含む高蔵寺~多治見には愛岐トンネル郡として多数のトンネルが残され、一部は時折一般公開されているようだ。
…ところで、この駅も一応鉄道駅バリアフリー料金制度の徴収区間に含まれているようだ。いずれはこの駅もバリアフリーに対応した豪勢な設備が追加されるのだろうか。…どうやるんだろう?