この作家さんは、初読です。
たまたま、職場に人に勧められたので、読んでみました。
これ、なかなか壮絶です。
読了後に調べてみたところ、この作家さん女性作家さんとのこと。
筆名と筆致から男性作家さんかと思い込んでいましたが、それも驚きです。
物語は、ハローワークで主人公となる女性、希美(きみ)が葉子と出会う場面から始まります。
途中、2015年~16年に、過去を振り返って、回想する場面と並行して物語は進みます。
また、途中からは、1966年ごろの筑豊炭田の苦しい生活の描写となり、上記の物語とつながっていきます。
読了後の感想としては、上記の通り、「壮絶だった」と表現せざるを得ません。
私が生まれた1967年から現在までの時代背景とともに、その中で生きることの逞しさや、どんな思いで、生きてきたかが丹念に描かれています。
物語で登場する婆さんが、「人生は最後に帳尻が合う」という言葉。また、本のタイトルの「愚者の毒」という言葉は、私の心に響きました。
ネタバレになってしまうので、詳細は、書けません。
それでも、最後の数ページまで伏線回収があり、そうきたかという驚きがありました。
ところで、またまた本筋とは離れますが、筑豊で登場人物が列車で上京する場面。
ある人と、ある人が一緒に上京するのですが、一緒に移動するところを見られたくないために、片方は、一駅歩いて、別の駅から乗車するという場面がありました。
やはり、鉄道が出てくると、どの駅だっただろうと想像してしまいます。
ただ、当時の筑豊地区は、今の首都圏並みに縦横に国鉄路線がありました。
上京するには、小倉方面に抜けていかなければならないでしょうし、遠賀川が出てくることから、筑豊本線沿線だったのではないかと推測されます。
新飯塚-直方のどこかだろうと推測し、この辺りの情景を思い浮かべながら、物語を読みました。
とにかく何とも言えない読後感のある作品でした。
お薦め1冊です。