【「奇跡の3並び」でお祭り騒ぎ】E257系初入線の御殿場線90周年記念号
御殿場線(国府津~沼津)は2024年12月1日に90年を迎えた。正確に言うとそれは路線が出来てから90年ではなく、東海道本線から分離し「御殿場線」に改称してから90年と言う意味である。そのため「御殿場線開業90周年」と言い方は誤りになる。JR東海では御殿場線90周年イベント(主に「さわやかウォーキング」が中心だが)を2024年度何回か行った。その中で規模が大きかったのが御殿場駅で開催のイベントで、この日はJR東日本と小田急とも共同開催で「奇跡の3並び」が実現した。この時の様子を簡単にではあるが書いておきたい。
乗車・撮影日=2024年12月8日(日)
【イチョウが美しい谷峨駅に御殿場線初入線のE257系御殿場線90周年記念号御殿場行きが通る】
↑まずは谷峨駅に行った。御殿場線は神奈川県と静岡県をまたがる路線だが、谷峨駅は県境で、起点側から言うと神奈川県側最後の駅である。近くにはE1東名、建設中のE1A新東名(2027~28年頃開通とされる)、国道246号が通る交通の要所である。
ホームは2面2線相対式であるが、有効長は10両程度あっても、実際に旅客が立ち入れるのは構内踏切より西側のみで、せいぜい6~7両分である。営業上は無人駅であるが、駅舎前にはTOICA簡易改札機があるものの券売機は無いのでチャージは出来ない。
ホームや線路上にはイチョウの葉が落ちている。車輪空転が起こるほど多くは積もっていないが、初冬の雰囲気を感じる。
↑9時05分発2529М沼津行き(313系2600番台N1編成)からは30名程度下車する。ハイカーがほとんどであった。山登りには適した場所らしい。車掌乗務ではあるがガッツリときっぷの提示は求めていないようだった。駅備え付けの回収箱に使用済みのきっぷが投入されるし、TOICA改札機をタッチする客が多い。Suicaエリアをまたがって乗る客も多数居てエラーになるが「そんな事は気にしない」と言って立ち去る客も目立つ。この時はそれで良いのかもしれないが、帰る時にはタッチ&ゴー(もう死語か)で乗れるなくなるのでその際は非常に慌てる(困る)だろう。御殿場線がSuicaエリア(JR東日本)では無い事を知らぬ客は未だに多い。「使える範囲」をしっかりと勉強してから乗ってもらいたいものである。
↑2529Мは2М特急ふじさん2号小田急新宿行き(小田急60000形MSE6両・60253編成)との交換待ちであった。これは「練習」と称して撮影しておく。
↑狙っていたのがE257系5500番台(東大宮OM51編成・先頭1号車クハE256-5508以下5両)の団体臨時列車(団臨)であった。その名も「御殿場線90周年記念!JR東海×JR東日本コラボ団体列車」(御殿場線90周年記念号)とのこと。JR東海ツアーズ等の旅行会社が発売する旅行商品で、片道(品川→御殿場)と往復(品川~御殿場・御殿場駅着から発までの時間はフリープラン)で乗車することが出来た。
往路が品川8時00分→御殿場9時46分、復路が御殿場15時00分→品川16時53分であった。途中駅の時刻は一切公表が無かった。当然ながら列車番号も不明であった。御殿場線の定期列車のダイヤと列車交換出来る駅を推察すれば、概ねの時間帯はわかる。谷峨駅通過は9時30分頃と予測して待っていたら、実際には9時26分の通過と概ね予測時刻通りであった。この辺は「運用鉄」「時刻表鉄」の日頃の成果が発揮出来た。
列車番号は往路が9823М(品川→国府津)~9623М(国府津→御殿場)であった。これはこの団臨に乗車した客がX(SNS)に旅行会社から当日配布された資料(土産?)の中に時刻表が入っており、画像がアップロードされていたので分かった次第である。なお復路は9624М(御殿場→国府津)~9824М(国府津→品川)であった。
御殿場線90周年イベントにJR東日本が参加するとは個人的な「意外な組み合わせ」だと思った。関連するのは国府津駅程度で、今や東海道線(国府津以東)からの乗り入れは終了している。小田急がMSEを使用した団臨を走らせるのであれば事情としては十分理解出来るが、JR東日本が加わった大人の事情とは何か?
私の記憶の範囲内ではE257系の御殿場線入線はこれが初めてである。過去の入線実績は無いはずなので、御殿場線90周年記念号が”ぶっつけ本番”で走った事になる。担当は沼津運輸区の乗務員であるが、運転席の機器操作方法は日頃から乗務する「踊り子」(E257系2500番台)編成と変わらないので(種車が同じだったりする)、御殿場線の線形(特有の条件)さえ熟知していれば特に問題なかったとも思う。
【特急ふじさん3号車内でもJR東海と小田急の融合企画が行われたが外からは様子がわからず】
↑静岡県に戻って駿河小山駅に行く。島式1面2線旅客ホーム+側線(作業用車両収容)がある駅だが、営業上は無人駅できっぷが買える券売機も無い。
↑ホームの沼津方からは富士山も見えるが、この時は頂上付近が雲に隠れていた。
↑ホームにあるベンチ付近にも「御殿場線90周年」のロゴマークが書かれたステッカーがある。ホーム上には「TKJ」と書かれたジュース自販機もある。それは㈱JR東海交通事業の管理という事がわかる。以前は同社管理の有人駅であったがいつの間にか無人化されていた。
↑窓口・券売機は閉鎖されシャッターが閉まっている。改札口にはTOICAの簡易改札機のみが中央に置いてある。
駿河小山駅も特急ふじさん停車駅であるが紙のきっぷの購入は出来ない。駅頭には特急券の買い方として小田急のネット予約購入サービス「e Romancecar」からどうぞとあった。スマホでQRコードを読み込めばそこへ転移する仕組みだ。御殿場線内のみならば車掌から紙の乗車券を買うかTOICA利用だが、小田急線内に直通となれば特急券はそのサイトからでも良いかもしれないが、乗車券はどうなるのだろうか?TOICA(交通系ICカード)では御殿場線と小田急線をまたがっての利用は出来ないので必ず紙のきっぷが必要である。いずれにせよ着駅で窓口精算となる。
↑駅舎自体は立派である。駿東郡小山町の代表駅とされるが、駅前は決して栄えているとは言えない。一応は近くに観光協会(そば屋も併設)があり、富士スピードウェイ行きの富士急モビリティー(旧富士急バス)の路線バスも発着する。
↑12時12分発3М特急ふじさん3号御殿場行きが着いた。15名ほど下車があった。編成は特急ふじさん2号と同じ。簡単に運用調査をすると1編成で1日の特急ふじさん全列車を担当することがわかった。
3号車ではJR東海と小田急の乗務員が参加して親子向けのイベント開催中であった。これも旅行商品で特急ふじさん3号のみの企画であった。しかし、外から見た限りイベント開催中には見えなかった。終点御殿場までそう遠くはないので終わってしまったのか?休憩中なのか?はわからない。あくまでも単なる定期列車に過ぎなかった。
【「奇跡の3並び」小田急60000形特急ふじさん×JR東海373系さわやかウォーキング号×JR東日本E257系御殿場線90周年号】
↑御殿場駅に着くと「奇跡の3並び」であった。
左側から小田急60000形MSE特急ふじさん4号新宿行き(定期列車)、373系さわやかウォーキング号(臨時列車)、E257系御殿場線90周年号(臨時列車)が横一列に並ぶ。これは最初で最後かもしれないような貴重な記録であった。同業者(撮り鉄)はそうなる事はわかっていたようで、ざっと100名以上は来ていた。
↑373系とE257系の並び。これは比較的長い時間見ることが出来た。E257系は御殿場到着後、国府津に回送するのかと思っていたが、そのまま発車時刻まで御殿場留置となっていた。
↑373系F1編成であった。意図的にトップワン編成を用意したのではないと思う。偶然そうなっただけであろう。御殿場線90周年ヘッドマーク(テープでの脱着式)が付いているのでこれも貴重な記録となった。
↑313系の定期列車が入る。ここが御殿場という事を考えるとやはり貴重な記録であった。
↑改札口を出場して連絡通路から撮影。13時ごろであったが逆光のため「う~ん」と言うような出来具合であった。それでも貴重な記録となった。
【「御殿場にはコシヒカリしかない!」と言う某知事の選挙演説の内容は本当か?】
↑御殿場市の名誉のためにも言っておくと、「あそこ(御殿場)にはコシヒカリしかない!」と選挙演説で言った静岡県知事が居たが(名前は言いたくない)このショーケースを見てもわかる通り、そば、ハム、ソーセージ、醤油、コーヒー、揚げ物、カレーパン、もやし、バーガーなど名物料理がいろいろある。首都圏からは人気の観光地で、週末ともなれば東名御殿場インターチェンジ付近の道路が混雑するのがそれを物語る(箱根や富士五湖への通過交通も多いが)。
↑御殿場駅北口では90周年記念イベントも行われていた。キッチンカーも出て御殿場をはじめ静岡県東部の郷土料理を食べることが出来た。
↑御殿場駅前にはSLのD52(72号機)が保存されているが、御殿場線の歴史にとって非常に重要な役割をした名車両である。電化以前(1968年以前)の事については各自調べてほしいが、山北→御殿場間はキツい登りが連続しそれは東海道の難所の一つだったのでもある。これが今の313系だとスイスイ登って行ってしまうが、それが実現したのも電車の性能が向上したという”文明の域”と言う事でもある。
【E257系御殿場線90周年記念号品川行き撮影に専念の結果、313系1300番台L5編成御殿場線90周年フォトトレインに乗れず】
↑御殿場14時19分発2546М国府津行き(313系2600番台N5編成・クハ312-2331)に乗り足柄駅に。
「静岡県内の御殿場線をE257系が走った証拠」を撮りたくこの駅を選んだ。足柄駅は特徴的な駅舎がある。
↑構内踏切を渡る。島式1面2線のシンプルなホームである。
↑2022年に新しい駅舎が出来た。高輪ゲートウェイ駅を設計したデザイナーと同じ方の作品で、とても開放的な雰囲気がする。JR東海の駅舎と言えば「決まった形」しかないので、こう言う独特な形の駅舎を作って良いとよく認めたものだなと思う。実際にはJR東海が建て替えたのではなく、駿東郡小山町役場がやったようだ。その成果?と言うわけではないが、役場の支所が足柄駅には併設される。但し鉄道営業上は無人駅で簡易委託と言う関係ではない。そのため御殿場線の他の無人駅と同じく、TOICA簡易改札機はあるが自動券売機は設置されていない。近くにはニューヤマザキデイリーストア(コンビニ)もあるので、ICカードのチャージについては一応可能である。
↑待合室は2つあり、1つめは純粋な鉄道の待合室(TOICA簡易改札機近く)、2つめは支所の隣(正面から駅舎を見ると左側)にある。この日は日曜日なので支所は休業であるが、この待合室は日曜日でも利用可能。実態は次の列車が来るまで待ってもらうというよりは、地域の憩いの場、学生の勉強空間のようだ。5時30分~21時00分まで利用出来る。午後は陽当りが良くて暖かい。
↑14時38分発2545G沼津行きは313系1300番台L5編成「御殿場線90周年フォトトレイン」であった。外からの見た目はフツーの313系である。車内では御殿場線を被写体にした写真が2025年3月31日まで展示している。これは一般応募によるもので、優秀な作品が車内展示となった。フォトトレイン自体は12月8日から運転開始(ちょうど訪問日が運行開始初日だった)したが、L5編成がそれだと気づいたのは後日であった。E257系御殿場線90周年記念号撮影のため、当然乗るわけはなく、見送るだけだった。
↑15時07分頃、品川行きの御殿場線90周年記念号が通過する。これを狙ってか?通過直前にゾロゾロと自動車が駅前に集まる。同業者(撮り鉄)と言う雰囲気は出していなかったが、御殿場線では普段走らない珍しい列車が来る事はある程度地元の人には知れていたようだ。
この時、同業者(撮り鉄)1人に邪魔された。「あしがら」の駅名標と御殿場線90周年記念号を絡めて撮ろうとしたら、構図が全く同じでピタッと横に並んで撮っても良かったが、それはサブ的なものでよく、メインは足柄駅舎+E257系御殿場線90周年記念号である。半ば無理矢理だが”よくわかる写真(記録)”になったと思う。読者の皆さんはどう評価されるかわからないが、個人的には満足な写真が撮れた。