2025年春から、新しいシリーズを立ち上げました。

 

ダイヤ改正前後で並べて眺める(そして愛でる)

 

です。他のシリーズ同様、あまり気難しい内容にするつもりはなく、ブログ筆者の琴線に引っかかった印象的なダイヤ改正について、当時の時刻表紙面の「改正前号」と「改正号」を両方引用し、シンプルに並べて、眺めてみる、というもの。

 改正前後の「変化」に敏感になるタチですが、「調べる」ではなく、「眺める」という視座でやってみるのは、純粋に懐かしさを感じることができる紙時刻表自体が貴重になったことと、段々と薄れてくる記憶と抗って、せめて沸き立った気持ちを書き残したいという想いがあります。なお、当時の各線でのダイヤ改正された背景もコメントしてみましたので、当時を知らない方の一助になれば幸いです。

 

 

 1986年11月1日ダイヤ改正の意義とは?

 国鉄最後の「白紙ダイヤ改正」でしたが、同時に1987年4月1日に発足する新会社(JR)を踏まえた列車・サービス体系で列車ダイヤを組んでいる点です。ちなみに、このダイヤ改正直後の11月28日に国鉄改革法案が成立し、新会社発足の準備設立が急速に行われます。列車ダイヤでの大きな3つの柱として①大都市圏、地方中核都市の通勤通学列車はじめ、日中の列車の普通列車の増発、②新幹線をはじめとした優等列車(特急)の、増発、所要時間短縮、③電子閉塞方式の導入といった業務効率化システムの導入(=担当者の配置転換含む合理化)、が挙げられます。

 中央本線のなかでも、今回取り上げる中央東線では、1986年3月での八王子〜松本間の最高速度向上によるスピードアップ対策に伴うダイヤ改正に続き、11月改正では優等列車の再編が行われています。

 

 

 眺めてみてコメント(ブログ筆者より)

 中央本線の新宿〜松本間、いわゆる東線は現在でも多数の定期列車を縫うように臨時列車が設定されていますが、今回切り取った紙面内だけでも改正前後で興味深い列車が多数発見できます。

 

・改正前からL特急として活躍していたあずさ号ですが、この改正で千葉発、東京発と、新宿以東のターミナル駅を発着する特急が新設されます。この紙面内では51号(4031M)、35号(5035M)がそれに該当します。

・日中の臨時列車について、改正前に存在した急行アルプス号、急行かいじ号はすべてL特急あずさ号に格上げする形で消滅しています。なお、この紙面外となりますが急行アルプス号は登山客向けの夜行列車として定期、臨時ともに残っていました。

・改正前の急行列車の発着地はバラエティーに富んでいました。臨時急行アルプス5号(岡谷行)は身延線乗り入れの急行みのぶ号(身延行)を併結し、甲府で分割されました。臨時急行かいじ号に併結された急行かわぐち号も、2025年現在では富士回遊号が運行されていますが、古くから富士急行へ直通乗り入れしていた区間です。

・改正後のL特急あずさ号の停車駅について、東京発では四ツ谷が新たに停車、三鷹、立川の停車列車が増えました。交通公社の時刻表のニュースページでも改正のポイントとして触れられていました。また所要時間についても改正前は新宿〜松本間は3時間を超える列車が定期列車で残っていました。具体的にはあずさ15号(15M)は改正前に3時間4分でした。改正後、同じ時間に発つあずさ27号(27M)では2時間57分を代表に全列車3時間切りで揃えられています。

普通列車の運行区間について、気になるものを改正前後でいくつかピックアップしておきます。改正前なら立川発松本行(433M、437M)。始発から終点まで5時間前後をかけて走っていました。改正後については、新宿発甲府行(553M、573M)と新宿に乗り入れるスカ色の近郊電車が存在していたのだと気付かされます。今設定されていたら、青春18きっぷとかで完乗してみたくなる列車です。

 

 

 ダイヤ改正前 1986年10月号より

 臨時列車ながら、新宿発の昼行客車急行アルプス75号があります。全席指定で10月10、11日の2日限定。これは1986年10月12〜17日に山梨県下で開催された、かいじ国体に向けた臨時列車だったと考えられます。当時の編成、牽引機の情報まで追えていませんが、各種の資料を総合すれば、EF64電気機関車牽引の12系また14系客車による編成だったと推察します。

国鉄監修・交通公社の時刻表1986年10月号より引用

 

 

 ダイヤ改正後 1986年11月号より

 時刻表では判別できない変化の一つとして、塩尻〜辰野間でクモハ123形電車の運行開始を取り上げます。荷物輸送削減によって余剰になった荷物電車クモニ143形をクモハ123形に改造され、1M電車として活躍していました。

国鉄監修・交通公社の時刻表1986年11月号より引用

 

 

本日は以上です。

 

参考資料:国鉄監修・交通公社の時刻表1986年10月号、11月号、JTB交通ムック昭和の鉄道<60年代>:JTBパブリッシング、年鑑日本の鉄道’87:鉄道ジャーナル社

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