本来、私は特撮派であり、アニメはあまり詳しくありません。例外は『北斗の拳』と、声優交代前の『ドラえもん』くらいのものです。今回はその『ドラえもん』のツッコミどころと、その背景に隠された真相へと迫ってみます。
もともとドラえもんは、のび太が残した借金に苦しむ子孫のセワシが、のび太を矯正すべく22世紀から現代に派遣したロボットという設定です。そんな過去干渉が許されるのかという最大の疑問をさておいても、まだ謎が残ります。
なぜドラえもんは、あの四次元ポケットの中に、あれほど多種多様なひみつ道具を持っているのでしょうか。22世紀の貧乏な野比家にしてロボットや多数の道具を所有できるのですから、一般的な世帯はもっと多くの、もっと高性能な製品をそろえていると考えるのが自然です。
ドラえもんのひみつ道具には、使い方によっては世界征服まで出来そうなものも含まれています。各人がそうした道具を自由気ままに使うことで、対立や軋轢は生じないのでしょうか。
もっとも、これらはもはや「軍事力」ですから、お互いが牽制し合って誰も手が出せないのかもしれません。いわゆる「核の抑止力」と同じものが個人レベルで作用している状態です。だとすれば、22世紀は現代の比ではないほど息苦しい世界ということになります。
話を現代に移します。道具を出すのはドラえもんですが、それを使うのはたいていのび太です。百歩譲って歴史改変の問題は目をつむるとしても、よりによってあんなダメ少年の手に道具を委ねるとは、あまりにもリスクが大きすぎると思えてなりません。
ここで一つの仮説が浮上します。22世紀の野比家は、未来デパートのモニター実験を請け負うことで、生活の足しにしているのではないでしょうか。ドラえもんのひみつ道具は「諸刃の剣」や不完全な品が多いですが、それらがまだ世に出せない試作品だと考えれば腑に落ちます。
のび太を重用するのも、ダメ少年がどれだけ使いこなせるのかを試す狙いがあるのかもしれません。そして、実証実験の結果を量産品へと反映させているのでしょう。
恐らくは、22世紀の世界の秩序を乱さないように、実験の舞台を過去に移しているのだと思われます。もちろん実際は、歴史改変の危険を伴う分だけ、過去干渉のほうがよほど問題なのですが。
ひょっとすると、22世紀では未来デパートのモニターがよほど不人気で、なり手が慢性的に不足しているのかもしれません。そこで行政も交えて、野比家にモニターを任せる代わりに過去干渉の権限を付与したのだと考えれば、一応の筋は通ります。