山口県岩国市の岩国駅と錦町駅を結ぶ第三セクター線、錦川鉄道線。この路線は今、存続か廃線か、今後の在り方が議論されています。
当局では3年半前に実際に錦川鉄道に乗車しました。少し前の記録になってしまいますが、今回は錦川鉄道の乗車レポをお送りします。
注1:厳密には岩国~川西間がJR岩徳線、川西~錦町間が錦川鉄道錦川清流線ですが、この記事では岩国~錦町間を錦川清流線として扱います。
注2:記事中にある写真に写っている鉄道やバスの時刻表は、2021年11月当時のもので、現在のダイヤとは異なっている可能性がありますのでご注意ください。
乗車日:2021(令和3)年11月21日(日)
2両編成の車内は、席が埋まるくらいの混雑ぶりでした。飛び石連休中の日曜日とあって、乗っている人のほとんどは行楽客でした。
8:28に岩国駅を出発。2つ先の川西駅まではJR岩徳線を走行し、川西駅の先で岩徳線と分かれます。
車両は2007年製造と比較的新しめの車両で、座席は背もたれを動かせる転換クロスシートでした。座席カバーに路線案内図が描かれており、普段利用しない人にも分かりやすくなっています。
座席にはテーブルもついていて、イベント列車にも活用できる仕様になっていました。
岩徳線と分かれて少しすると、山陽新幹線と交差し、清流新岩国駅に到着します。
この駅は山陽新幹線の新岩国駅から徒歩7分ほどでアクセス可能で、大阪や福岡からもアクセスしやすくなっています。ということだからか、新幹線からの乗換客らしき人も乗り込んできました。ただ、ダイヤ上は新幹線との乗り継ぎは特に考慮されていません。
守内かさ神駅を過ぎたあたりから、路線名にもなっている錦川が現れ、錦川に沿って進んでいきます。
錦川清流線は全線単線で、行き違いができるのはJR岩徳線内にある西岩国駅のほかには、北河内駅しかありません。その北河内で対向列車と行き違い。こちらは観光客を中心に20人以上乗っていますが、対向列車は1両で、15人ほどが乗っていました。
さらに進むと、すごい場所にある駅が現れました
1面のみのホームがあるのですが、駅へ続く道がありません。ここは、鉄道でしか到達できない臨時駅、「清流みはらし」駅で、イベント列車のみが停車し、川の眺めを楽しめる仕様になっています。
錦川鉄道のいくつかの駅には、岩国市営バスの路線が通っています。錦川鉄道を幹として、バス路線が枝のように伸びています。錦川鉄道の車内には、バスへの乗換案内、新幹線やJR山陽本線、岩徳線の乗換案内が掲示されていて、乗客への案内がとても丁寧な印象を受けました。
最後に山をトンネルを抜けて、終点の錦町に到着。乗客のほとんどは錦町まで乗りとおしました。ここは旧錦町の中心地であり、岩国市営バスの路線も乗り入れています。
そして、錦町駅から少し北の方にある雙津峡温泉までは、「とことこトレイン」という観光用の乗り物が通っています。せっかくなので、錦町駅に隣接する小さなトラベルセンターで乗車券を買い、「とことこトレイン」に乗って雙津峡温泉を目指しました。
錦川清流線はもともと、国鉄岩日北線として、岩国駅と日原駅(島根県津和野町)を結ぶ陰陽連絡線として建設が計画されましたが、鉄道路線として開業したのは錦町駅までで、それよりは先は建設途中で開通が断念され、未成線となりました。
「とことこトレイン」は、その未成線の跡を活用した乗り物です。あくまでもアトラクションであり、鉄道法にのっとった路線ではありません。春~秋の土休日を中心に運行されています。
この日は乗客が多く、2台体制での運行となりました。錦町駅を発車すると、すぐにトンネル(きらら夢トンネル)に入ります。
トンネル内は、6色の光る石で作られたアートが描かれていて、幻想的な雰囲気を楽しむことができます。描いたのは地元の子どもや大学生の方というのもいいですねトンネルの途中でいったん停車し、降りてアートを楽しむ時間も設けられています。
トンネルを出ると、のどかな風景が広がります。ここに鉄道が通っていたら…ということに思いを馳せながら進みます。
ゆっくり40分かけて、終点の雙津峡温泉に到着。せっかくなので「憩の家」で温泉に入り、昼食もとることにしました。とても気持ちよかったです
お昼はヤマメの定食にしました。うーんおいしいー川の眺めも良く、最高です
雙津峡温泉には、岩国市営バスも通っています。とことこトレインが運転されない日や、運行時刻が合わない場合は市営バスでアクセスすることができます。市営バスだと錦町駅から10分ほどでアクセスできてしまいます。
なお、片道をとことこトレイン、片道を市営バスとすると、より行程のバリエーションが広がります。錦町駅には、そのことを勧める張り紙もされていました。
前述したバスの乗換案内を車内に掲示するのもそうですが、単に鉄道だけでなく、鉄道とバス(ととことこトレイン)いずれの利用も促しているのが、錦川鉄道の取り組みとして素晴らしい点です。なお、岩国市営バスは錦川鉄道が運行を受託しているので、鉄道とバトルにはなりません。
また、岩国市が作成している「公共交通マップ&時刻表」は、市内を通る鉄道やバスの路線図や時刻表が分かりやすく掲載されていて、利用者目線で作られています。特に路線図は、実際の地図にバス路線を落とし込んでいる点が分かりやすいです。
真の意味での公共交通の利用促進とは、岩国市や錦川鉄道が行っているこれらの取り組みのことを言うのではないか?錦川鉄道に乗ってみて、強く感じました。
こうした形で、岩国市も錦川鉄道も利便性の高い交通の維持に向けて取り組みを行っているのですが、それでも鉄道の存廃が議論されている状況になっています。
今後の在り方として、「現状維持」「上下分離」「一部を廃線してバス転換」「全線廃線してバス転換」の4案が示されていますが、いずれも黒字は期待できないと岩国市は分析しています。
廃線バス転換することで金的、人的コストとも下がるなら、恐らくすんなりと廃線バス転換で話は進んだと思いますが、廃線するにもコストが大きく、存廃いずれにしても厳しい状況が待っています。岩国市としては頭の痛い問題を抱えているといえるでしょう。
岩国市も錦川鉄道もいい取り組みをしているだけに、存続してほしいですね…