このシリーズ④でアップした秋田旅行からおそらく6年•••鉄旅と温泉というのからは遠ざかっていました。

 私の記事に長い間お付き合いしていただいている方々は私の準ホームグラウンドである北信濃をベースに新潟県や富山県を徘徊した時の記事や東京から関東近県の日帰り旅をした時のことを記事にしてアップしていることが多いのでそのようなご感想はお持ちでないかもしれませんが、純然たる旅行という意味ではそれほど間が空いてしまったのです。


 久しぶりの旅行はどこへ行こうか夫婦で計画を立てる時•••。


「母ちゃんはどこか行きたい希望はあるか?」


「父ちゃんはどこへ行きたいんだよう?」


「出雲大社がいいかな」

 多分遠すぎるとかいって反対されるかと思いつつもダメもとで言ってみましたが•••。

「母ちゃんもそれを考えてたんだよう♪」

ということで即決。あとは行動あるのみです。


 せっかくなら我が国において唯一残存する寝台特急「サンライズ瀬戸•サンライズ出雲」で往復の旅をしたい•••。然しながらとても人気が高い列車だから寝台特急券が購入できるかどうか•••?

 結果的には往路は個室寝台では一番狭いながらも「ソロ」、復路ではもう少し広い「シングル」を購入できました。

 この旅行は欲張って、出雲大社の他に鳥取県の三朝(みささ)温泉も組み入れましたから山陰本線の特急列車の指定席券やリゾート列車である快速「あめつち」の指定席券、出雲市駅と倉吉駅それぞれの駅レンタカーの予約、旅館の予約など慌ただしく動きました•••といっても、このような忙しさは仕事の忙しさと違って楽しいですね。


 旅行当日が来て出発です。


 始発駅の東京駅に品川駅近くの車両基地で昼間休んでいた寝台特急「サンライズ瀬戸」+「サンライズ出雲」が入線です。旅行への期待感が最高潮に達する瞬間といってもいいかもしれません。



 個室寝台は1人用なので夫婦別々の部屋となります。とりあえずキャリーバッグなどを部屋に置いてラウンジ(フリースペース)へ向かいます。


「サンライズ瀬戸」「サンライズ出雲」は東京〜岡山間を併結して運行し、岡山駅で切り離し作業が行われて「サンライズ瀬戸は瀬戸大橋を渡って高松へ、「サンライズ出雲」は中国山地を越えて日本海側へ出て出雲市へとそれぞれ向かいます。


 東京駅の駅弁屋「祭」で購入した晩酌用のお酒とツマミは富山のほたるいか素干。ラウンジのカウンターで夜景を眺めつつ晩酌です。ちなみにこの列車は車内販売は無いので、食事は東京駅構内のグランスタにある山形牛のステーキ屋さん「肉卸小島」で済ませました。

 列車には事前に列車内でカードを購入して利用できるシャワー室がありますが、時間に急かされるのと混雑するのが嫌で予め自宅で入浴を済ませてから来ました。


 いよいよ東京駅を出発します。

 

 車内放送を聞けばわかりますが、東京駅を発車すると横浜•熱海•沼津•富士•静岡•浜松と、東京都から静岡県にかけての主要駅にはこまめに停車します。しかし、有効時間外となる名古屋や京都、大阪などは全て通過扱いとなり、浜松駅を出ると姫路駅まで通過となります(但し途中の豊橋駅や岐阜駅、米原駅や大阪駅で乗務員交代のためドアは開かない運転停車が行われます)。

 軽く晩酌を済ませてラウンジの席が空くのを待っている方のために早めに個室へと戻ります。


 岡山駅で「サンライズ瀬戸」との切り離し作業が行われて「サンライズ出雲」は単独列車となって山陽本線の倉敷駅から伯備線に入って中国山地を越えて日本海側の米子駅に出て山陰本線を西へ向かって終点の出雲市駅をめざします。


「サンライズ瀬戸」(左)「サンライズ出雲」を連結して通り抜けができていた幌や渡し板が格納されて切り離し作業が行われています。

 新幹線や在来線の特急列車の連結シーンや切り離しシーンは東北新幹線の福島駅や盛岡駅、東海道本線の熱海駅などどこの駅でも人気があってカメラを構える人たちで一杯ですが、この岡山駅でも例外ではなく、早朝にもかかわらずかなりの人たちで賑わっていて、なんとか隙間から撮影しました。

 貫通扉が閉まります。

 余談ですが、「サンライズ」の車両である285系JR西日本所有の後藤総合車両所出雲支所所属編成JR東海所有の大垣車両区所属編成がありますが、JR東海は実態は名義のみで、車両の検査、常駐する車両基地など車両管理はJR西日本が一括して行っています。

 運用は1日目後藤総合車両所出雲支所を出区して上りの「サンライズ出雲」として運転され、岡山駅で先着している「サンライズ瀬戸」の後部に連結されて東京駅まで運行、2日目となる折り返しは下りの「サンライズ瀬戸」として高松駅まで運転、3日目は上りの「サンライズ瀬戸」として東京駅へ、4日目に下り「サンライズ出雲」として出雲市駅まで運転されて5日目の午前に出雲市駅に到着後に車両基地へ戻るという行程となっています。そのため、併結する東京〜岡山間ではどちらも「サンライズ瀬戸」が先頭方(下りは岡山方、上りは東京方)に連結され、「サンライズ出雲」は後部(下りは東京方、上りは岡山方)に連結されます。


 東京駅を出てから12時間10分•••終点の出雲市駅に到着です。


 私の普段の行動範囲である関東甲信越地方はJR東日本の領域。緑のJRマークを見慣れているのでJR西日本の青いJRマークは新鮮に映ります。

 予約しておいた駅レンタカーに乗り換えてすぐに出雲大社に参拝に向かいました。やはり午前中のうちにお参りしたいので夜行列車が現在でも走り続けてくれていることは貴重です。

 出雲市駅から出雲大社へ向かって車を走らせていて感じたのは、「神話の国」だけあって街全体がどことなく厳かな空気に包まれているような落ち着きでした。

 訪問したのは2月•••冬の山陰ですから天気は期待していませんでしたが、参拝している時は曇天の合間を縫うかのように晴れ間もありました。


 参拝を済ませてお昼は出雲そばをいただいてくにびき海岸道路を通って西へ向かいます。


 宿泊先は現在は出雲市と合併している旧多伎町のはたご小田温泉です。




 元は料亭だったというはたご小田温泉。それが頷ける外観です。

 予約はネット予約のみ、かなり評価が高い旅館であることと部屋数が多くないので予約できるか心配でしたが、シーズンオフの平日ということもあって空きがあり予約できました。


 予約したのは「菊乃間」。この部屋が一番狭い部屋だったと記憶していますが、選んだ理由は玄関に近い部屋ながらこな部屋だけ他の部屋と離れていること、座敷わらしが出る部屋ということでした(座敷わらしには会えませんでしたが•••)。

 そして、この日以外は満室だったのに前回記事で触れた秋田県大仙市の強首温泉「樅峰苑」同様、宿泊客は私たち夫婦だけの貸切状態でした(夕食の時はこちらで会席で訪れてていた小さな団体がいたようですが、離れた別室だったので全く気になりませんでした)。

 シーズンオフに旅行することが多いせいか、貸切状態だったり他の宿泊客が一組だけだったりということが多い私たち夫婦の旅行です。お風呂でも他の方と会うこともなくゆったりと入れるのでツイている方かもしれません。

 まるで田舎の祖父母の家にでもいるかのように静かな落ち着いた時間が流れます。





 料理の写真は一部ですが、さすが料亭がルーツで

あるだけのことはあります。塩ひとつとっても使っている素材が素晴らしいです。写真にはありませんが、のどぐろの塩焼は逸品でした。この旅行ですっかり島根県の味覚の虜になってしまい、東京でも島根料理のお店をいくつか食べ歩いて、部下の夫婦と飲みに行った時にも島根料理のお店を使ったほどです。


 このシリーズ⑤となるこの旅行は長くなるので、⑤-1•⑤-2•⑤-3と3回に分けてアップしようと思っています。