2000年の運転開始から、今年で25周年を迎えたJR北海道の『SL冬の湿原号』。その人気は高まる一方で、指定席(全車指定)は1ヶ月前の発売日に即日完売という状況が続いているようです。
(画像はJR北海道HPプレスリリースより転載)
しかし…一旦指定席が完売した列車でも、キャンセルが出る場合があり、特に運転日に近いタイミングにその傾向があるようです。『SL冬の湿原号』(以下、冬の湿原号)もえきねっとでの発売に対応しており、サイトをマメにチェックしていると空席が出る場合があるのです。
私は運転開始日の1月18日分に元々乗るつもりではありませんでしたが、前日に何気に(?)えきねっとサイトをチェックしていると、釧路行の下り列車に△が付いているではありませんか!というワケで、とりあえず購入。この時点では標茶行の上り列車はまだ満席でしたが…。
それでも、合間を見ながら上り列車の空席状況をチェックしていると、ついに△が!!
コレは絶対乗りに行かねば!と思い速攻で購入。併せて、札幌~釧路の特急おおぞらの切符も往復分購入、急遽冬の湿原号運転初日の列車に乗りに行く事になったのです。
本当は前日から釧路へ前乗りしたい処でしたが、当日はおおぞら11号のトクだ値は購入できず、また宿泊代も掛かる事から、結局1月18日の日帰りで行く事となりました。
札幌からは6:48発の4001Dおおぞら1号で釧路に向かいます。
おおぞら1号の切符は前日購入のため、トクだ値の割引率は10%。1ヶ月前の売り出し時点で購入しておけば40%割引(約3000円の差額)になるのですが、まぁ仕方ないですね…。
10:56、煙の薫りが漂う釧路駅に到着。左側3番線には冬の湿原号の客車が見えます。
この日の釧路は見事な晴天に恵まれ、絶好の乗り鉄日和でした。
接続時間はわずか9分。急いで3番線ホームへ赴きます。機関車側では出発式セレモニーの準備が行われていました。
機関車の先頭付近は大勢の見物客や撮り鉄らが取り巻いていましたが、何とか先頭部の撮影をする事ができました。運転初日につき、取材のTVクルーの姿も見えます。
上り列車9380ㇾで乗車するのは、最後尾⑤号車。編成表は下記の通り。
標茶←C11 171(釧)+①スハフ14 505 ②スハシ44 1 ③オハ14 526 ④オハ14 519 ⑤スハフ14 507→釧路(客車は全車釧クシ)
客車両端の①号車と⑤号車は2022年シーズンからリニューアルされた『たんちょうカー』。湿原側の車窓に向いたカウンター席と、眺望性を良くするために高床式となっているBOX席で構成されています。
幸運にも(?)私が上り列車で入手した指定席は湿原側のカウンター席!
何事も、諦めないのが肝心なのです。直前に入手して乗車できるのは一部道民の特権でもありますが。
11:05、汽笛一声、釧路駅を出発!
5番線に到着した花咲線5626Dのキハ54 521(地球探索鉄道花咲線ラッピング車)の乗務員らしき方がお手振りをして見送ってくださいました。
釧路川を渡ります。自席が進行左側につき写真は上流側ですが、下流側のほうでは沢山の撮り鉄がカメラを向けていたようです。
最初の停車駅で釧網本線の起点(同線は起点に向かう列車が下りという変わった路線)でもある東釧路駅に停車。ここでも見送りの人が結構いらっしゃいました。
東釧路駅発車後、車掌が乗客に乗車証明書を配布します。写真は上り列車用。
別保川を渡り、列車は釧路市内から釧路町へ入ります。
遠矢駅を通過後、やがて列車は湿原地帯に入り、遠くに雌阿寒岳を中心とする阿寒の山並みが見えます。
車窓からは、釧路川と新釧路川の分かれ目に位置する岩保木(いわぼっき)水門が見えてきます。写真中央が現在の水門ですが、旧水門の建物がその右奥に見えるのがお判りでしょうか?
次の停車駅である釧路湿原駅を出た後、丘の上には多くの撮り鉄らが熱心にカメラを向けていました。
冬季は列車が停まらない臨時駅となった細岡駅を通過。
そして、蛇行する釧路川に最も接近する区間を走行します。
そして釧路川と離れ、『くしろ湿原ノロッコ号』の終着駅である塘路駅に停車。
塘路駅発車後、塘路湖に繋がる釧路川の支流を渡ります。写真右奥に見える沼はエオルト沼。
そしてポント―、サルルントーといった沼が見えますが、既に結氷していました。
荒涼とした湿原地帯を進んでいくと、別名阿寒富士といわれる雄阿寒岳が見えてきます。
「丹頂鶴が見える駅」として有名な茅沼駅ですが、残念な事に鶴は一羽も現さず…。
そして再び蛇行する釧路川に沿い、湿原地帯も終わりに近付きます。
湿原地帯が果て、その後は酪農地帯を走行します。冬の湿原号の旅も、終わりに近付いてきました。
やがて市街地区域に入り、12:35、終着・標茶駅1番線に到着。
運転開始初日のイベントとして、釧路管内のご当地キャラが集結したり、マチの特産品販売などがありましたが、あまりにも人がごった返していたのでソチラには目もくれず…。
(JR北海道HPプレスリリースより転載)
私は2番線ホームへ渡り、12:41発の4725D普通しれとこ摩周号とSLの並びを撮影。最新型車とSLの対比が何ともユニークです。通常はH100形の単行であるしれとこ摩周号ですが、この日は2両編成で、先頭が『地球探索鉄道花咲線』、2両目が釧網線のそれぞれラッピング車でした。
しれとこ摩周号到着時は撮影者でごった返して良いポジションで撮れませんでしたが、その後何とか場所を確保して冬の湿原号の編成写真を撮りました。天気は晴天でしたが、やや風が強く煙がたなびいて客車が隠れてしまいましたが…。
C11 171のサイドビュー。
釧路への復路(下り列車)で乗車するのは、JR北海道の現役車で唯一の旧型客車となった②号車スハシ44 1で、TR47形台車の重厚な乗り心地が魅力です。
到着から10数分後、乗客を降ろした冬の湿原号は推進運転で東釧路方の本線へと引き上げていきます。1番線側には出発信号機がないためか折返し運転ができず、2番線へと転線するためです。
ポイントを切り替え後、2番線へ進入。
そして機関車を切り離し、折返し準備の給水作業を行うため3番線に転線します。
機関士や作業員たちが、各部の異常がないか点検を行い、その後ハシゴを掛けて給水作業を行います。2000年の運転開始当初は、標茶町の消防署の協力を得て給水車を使用していた事もありました。
給水作業を終えた機関車は、バック運転で3番線から2番線へと転線します。
そして客車との連結作業が行われ、ようやくスタンバイOK。
逆機状態で連結され釧路へと向かう冬の湿原号。転車台が不要なのはタンク式機関車の最大の利点であります。
②号車スハシ44 1のサボ。ヘッドマークと同様、25周年記念の特別デザインです。
客車に乗り込めるのは発車10分前の13:50頃で、ちょっと慌ただしいかも。
②号車ストーブカーのスハシ44 1の車内は他のストーブカー2両と共に2023年にリニューアルされ、座席は旧3等車をイメージしたと思われる緑色基調のモケットとなりました。
14系客車は元々特急型だったためシートピッチが広いですが、②号車に限ってはシートピッチが狭く、4名フル乗車だとかなり窮屈に感じます。まぁコレも旧型客車の醍醐味といえましょうか。
②号車のダルマストーブ席。フリースペース扱いで座席の販売は行っていない区画ですが、長時間の占有はやめましょう…。
②号車はSLニセコ号当時から『カフェカー』として利用されており、釧路方の一角に販売カウンターがあります。グッズや飲食物を求める客で発車前から既に長蛇の列…。
販売カウンターのそばには、乗車証明書の裏面に押す記念スタンプコーナーがありました。ちなみに私は乗車証明書が汚れるのを恐れてスタンプは押しませんでした…。
前日にえきねっとで購入した下り列車用の切符と、発車後に配布された乗車証明書。
復路は釧路川と反対側の窓側席。
茅沼駅では、羽ばたく丹頂鶴の姿を見る事ができました!
茅沼駅発車後、私は販売カウンターへの列へと並び、10分後位にようやくグッズ類を購入する事ができました。ついでに温かいコーヒーも。
今回購入したグッズは、25周年記念のアクリルチャームと、ピンバッヂ(3種類の中の1つ)。
シラルトロ湖と塘路湖が見えてきて、塘路駅に到着します。
塘路駅では網走行4730Dと交換のため13分停車。その間は絶好の撮影タイムですが、構内踏切は撮影者で溢れ返っていました。
ここでようやく撮れたC11 171の銘板と区名札。機関車は昭和15年、つまり1940年製で、車齢は85年に達するのであります。
塘路駅を発車後、原野の中を駆け抜けて釧路湿原駅に停車。冬の湿原号の旅も終盤に差し掛かりました。
最後の途中停車駅である東釧路駅を経て、釧路川を渡ります。復路でも、川岸には多くの撮影者が。
15:42、終着・釧路駅3番線に到着。
到着後約6分後には、ねぐらである釧路運輸車両所へ向かうために回送されていきます。
その後、15:50に4005Dおおぞら5号が1番線に到着。この列車の折返しである16:13発4010Dおおぞら10号で帰路に就きます。この日は増結7両編成!
飲食物を購入のため、一旦改札口を抜け、買い物後に再び改札を通ります。
札幌への帰路に使用した、えきねっとトクだ値20の切符。往路よりは割引率が高いですが…それでもトクだ値40よりは約2000円の差額があります。
駅舎内にあるおにぎり屋『ばんばん』で天むすと釧路ザンギを購入して、車内で遅めの昼食。
さらに池田駅で『牛のワイン漬ステーキ弁当』を予約購入(事前に電話注文が必要、③号車ドアで受け取り)。食材高騰はとどまる事を知らず、数年前までは1000円+消費税だったのが、その後1200円となり、現在の価格は1300円。それでも温かいステーキを車内で食べられるのはとても贅沢なひとときです。
20:29、札幌駅に到着。
この後学園都市線の2635Mに乗って、日帰り弾丸ツアーが終わりました。