近鉄は2024年12月13日、2025年2月22日に実施するダイヤ改正の概要を発表しました。今回はこれについて、同日にダイヤ改正を行う京都市営地下鉄,及び1月11・19日にダイヤ改正を実施する大阪メトロ中央線、近鉄けいはんな線もあわせて分析します。

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1.近鉄特急

(1)名阪特急増発

 近鉄名古屋と大阪難波を結ぶ「名阪特急」が、平日3本・土休日7本増発となります。

 

 増発されるのは、停車駅の少ない速達タイプ(いわゆる”甲特急”)とみられます。土休日のうち1往復は、臨時列車を定期化するものです。大阪万博の開催に伴い、大阪方面への行き来が増えることを見込んでの増発とみられます。

 なお、現在の”甲特急”は全て「ひのとり」で運行されていますが、改正後は大阪難波20:20発のみ「アーバンライナー」での運行となります。

 

(2)土休日 阪伊特急定期化

 現在、臨時列車となっている大阪難波~鳥羽間の特急1往復が、全ての土休日に運転となります。対象となるのは、大阪難波10:50発鳥羽行きと鳥羽14:18発大阪難波行きです。

 

(3)平日 阪奈特急運行区間延長

 平日の大和西大寺7:37発大阪難波行き特急が、近鉄奈良発に延長となります。同じく大阪と奈良を結ぶJR関西本線(大和路線)が、快速列車への「うれシート」の導入や、有料特急「らくラクやまと」を設定するなど、着席サービスを強化しているので、その対抗策である可能性もあります。

 

(4)運転区間変更

 近鉄名古屋22:25発松阪行き特急が、同駅22:20発名張行きに変更となります。これにより、この特急列車で久居・伊勢中川・松阪へ行くことができなくなりますが、その点をどのようにフォローするのかは気になります。

 

2.近鉄 一般列車

(1)京都線・橿原線・天理線 普通列車増発

 京都線の新田辺~大和西大寺間及び橿原線・天理線の普通列車が、毎時3本から4本へ増発となります。

 京都線・橿原線・天理線も、かつては普通列車が毎時4本に運行されていましたが、毎時3本に減便されました。減便されたのはコロナ禍の影響…というわけではなく、2012年のダイヤ変更と一昔前のことです。今回、13年ぶりに普通列車の本数が毎時4本に戻ることになり、積極的で前向きな改正と言えます。

 

(2)京都線 平日朝時間帯増発

 平日朝に、新田辺7:40発京都行き準急が増発されます。混雑緩和のための増発とみられます。

 

(3)奈良線 平日 阪神線直通列車増発

 神戸三宮~近鉄奈良間を直通する快速急行が、毎時2本から3本へ復便となります。詳細は下記記事をご覧ください。

 

 
(4)奈良線 深夜帯 列車増発
 大阪難波0:03発奈良行き快速急行が増発されます。これにより、大阪~生駒・奈良方面への最終列車が8分繰り下がります。なお、現行の奈良行き最終列車である区間準急奈良行き(大阪難波23:55発)は、大和西大寺行きに短縮されます。また、生駒駅で快速急行から区間準急へ乗り継げるようになるため、快速急行の停まらない東生駒・富雄・菖蒲池へも到達可能です。恐らく、石切駅で快速急行が区間準急を追い抜くダイヤになるとみられます。
 
(5)大阪線 平日朝時間帯増発
 大阪上本町10:00発高安行き普通列車が増発となります。
 長瀬駅は普通列車しか停車しない駅ですが、近畿大学のキャンパス最寄り駅であるため、大学生の利用が多い駅となっています。時間帯をみても、2限目の開始にあわせて登校する人が利用する時間帯であり、プレスリリースに長瀬駅の着時刻をわざわざ記載したところをみても、通学需要にこたえるための増発とみられます。
 
(6)大阪線 深夜帯列車増発
 大阪上本町23:57発大和八木行き急行が増発されます。この急行は河内国分で、先行する区間準急五位堂行きに乗り継ぐことができるため、河内国分~五位堂間の急行通過駅へもこの急行に乗れば到達可能です。
 
(7)南大阪線 土休日初電繰り上げ
 土休日の南大阪線において、大阪阿部野橋方面行きの初電が繰り上がります。
 
 
 これらの駅は、平日と土休日で始発列車の発車時刻が異なっていますが、今回の改正により平日・土休日とも始発列車の発車時刻が同じになります。統一性を持たせるための変更とみられます。
 
(8)名古屋線 深夜帯増発
 近鉄名古屋23:58発近鉄四日市行き急行が増発となります。これにより、近鉄名古屋から近鉄四日市までの急行停車駅への最終列車の時刻が繰り下がります。(名古屋発で18分繰り下げ)
 現在の四日市への最終列車は、近鉄名古屋23:40発の準急が最終となっています。対するライバルのJR関西本線は、名古屋23:57発普通四日市行きが最終列車となっており、近鉄のほうが17分早く終了しています。列車の増発を決めた背景には、JRへの対抗意識があるとみられます。
 新幹線と近鉄との乗り換え時間は15分なので、東京からの最終列車「ひかり669号」(名古屋23:49着)から乗り継ぐことは困難ですが、主に金曜日や日曜日に運行されている臨時「のぞみ499号」名古屋行き(東京22:00発→名古屋23:33着)からは乗り継ぎ可能です。日によっては、22時まで東京にいても四日市まで到達できるようになるため、利便性が向上します。
 
3.京都市営地下鉄 
 直通先の近鉄のダイヤ変更に伴い、京都市営地下鉄のダイヤも2月22日から変更となります。
 
 烏丸線・東西線の日中の運行本数が、毎時8本(7分半間隔)に復便となるほか、平日8時台に烏丸線(竹田~国際会館)で1往復増発されます。
 
4.近鉄けいはんな線・大阪メトロ中央線
 
 近鉄けいはんな線・大阪メトロ中央線では、1月11日(土)・19日(日)にダイヤ改正が実施されます。
 
〇1月11日に実施されたダイヤ改正
(1)最高速度引き上げ
 大阪メトロ中央線のコスモスクエア~大阪港間の最高速度が95km/hに引き上げられ、同区間の所要時間が30秒ほど短縮します。
 
(2)大阪メトロ中央線 停車時間変更
 可動式ホーム柵の供用を受け、停車時間が各駅で5~10秒延長されます。そのため、中央線全線でみれば、変更前と比較して若干所要時間が延びています。
 
 このほか、中央線内で始発・最終列車の時刻が若干変更となります。
 
(3)早朝時間帯 始発繰り上げ
 朝5時台の生駒発コスモスクエア行き2本が、学研奈良登美ヶ丘始発に延長されます。
 
 
 このほか、コスモスクエア発の初電が、生駒行きから学研奈良登美ヶ丘行きに延長されます。生駒~学研奈良登美ヶ丘間では少なくとも1往復増発になるとみられます。
 
〇1月19日ダイヤ改正
 1月19日に大阪メトロ中央線のコスモスクエア~夢洲間が延伸し、夢洲駅が開業します。なお、コスモスクエア~学研奈良登美ヶ丘間の発車時刻は変更ありません。コスモスクエア発着のほとんどが、夢洲発着となります。
 
5.まとめ
 いかがでしたでしょうか。大阪万博を控えていることもあり、名阪特急は増発となりました。それ以外の部分においても、増発による終電の繰り下げや、10年以上前に減便した普通列車の増発(復便)など、積極的な内容が多くみられました。
 京都市営地下鉄も、利用者の戻りを踏まえて復便しており、明るい兆しがみられます。大阪メトロ中央線は、いよいよ夢洲まで延伸し、万博アクセスの中心を担うことになります。
 輸送力増強がメインだった今回の改正で、利用がどのように変わるのか、今後とも注目です。