JR東海は鉄道利用者増客や参加者の健康増進等を目的に概ね毎週末に「さわやかウォーキング」(7月と8月を除く)を開催している。逆に言うと「さわやかウォーキングとの連動企画でない限り自社の施設は一般公開しない」。5月20日前後の土日に「グランシップトレインフェスタ」が開催されるが、それと同日に近隣にある静岡車両区(静シス)を一般公開する事が2016年以降通例となってきた。概ね簡単な車両展示や線路保守設備(道具等)の実演展示が主体である。2024年も御多分に漏れず静岡車両区の一般公開となったがWikipediaの「東海旅客鉄道」の項目に写真が登場するほどの貴重な記録となった。315系が営業運転開始前に床下機器等の細部も見る事が出来た。
訪問日=2024年5月19日(日)
【あくまでも「さわやかウォーキング」の一環なので「紙媒体のコースマップ」が無いと静岡車両区の中に入れない】
↑今回のさわやかウォーキングは東海道線の東静岡駅開始・終了のコースであった。8時30分から開始であるが8時10分の段階で約50人は並んでいる。この行列はコースマップ(A4サイズの紙)を受け取るためだ。
通常のさわやかウォーキングの場合、必ずしも紙媒体のコースマップは必須としていない。「さわやかウォーキング」と検索するとわかるが、JR東海のHP内にそのページがあり、開催日の時点では紙媒体と全く同じコースマップをPDFで見る事が出来る。私はいちいち紙媒体のコースマップを持ちながら歩くのが”癪”なので、スマホ画面にコースマップのPDFを表示させる形としている。それでも紙媒体のコースマップをもらうが。GoogleMapsを併用する事も少なくない。別にコースマップ(紙媒体であれ、PDFであれ)を見なくても実際には電柱等に「↑」の表示があるのでそれに従えば、迷うことなく終了地点にたどり着ける。
終了地点でコースマップの提示はほぼ100%求められない。そこでゴール印をもらう・もらわないは参加者の任意だが、多くの参加者はもらう。これはポイントカードのようなものになっており(昔は紙媒体だったが2021年頃から電子媒体化。専用のサイトに会員登録が必要になるがアプリ化はされていない)ポイントが溜まれば(100ポイント単位・1回参加する毎に10ポイント獲得出来る事が基本)景品と交換出来る。景品はあくまでも”粗品”なので、電車賃がタダになるとかTOICAに1000円分チャージ出来るとか直接的な鉄道利用が有利になるようなモノにはなっていない。
同業者(鉄道マニア)が殺到する事は容易に予想出来たので”先回り”した。そのため紙媒体のコースマップはもらっていない。
↑”先回り”した結果、静岡車両区の外壁(マークイズ静岡との間にある道路沿い)にパネル説明があった。そこを家族連れが通って入場しようとしたが拒まれた。コースマップを持っていないという事が理由である。
(父)バカか‼小さいガキ(子供)の前で夢を奪う事がよく言えるよな😡バーカ😡
↑と吐き捨てるかのようにその場を去る。こういうのを世間では「カスハラ」と言っても良いのだろうが(こういう汚い言葉遣いを子供の前でよく出来るな…とも思う。親としての”資質”も問いたくなるが)、例年静岡車両区の入場そのものは厳しく”審査”される事が多い。概ねは紙媒体のコースマップを見せれば終わりだが、ガッツリとは見て来ない。逆に言えば過去のそれを見せれば一応はパス出来そうな気がする。検札印を押している事も以前はあったが、COVID-19以降はそういう事もやらなくなった。ここでポイントなのは紙媒体のコースマップが必須である事。書いてあることは全く同じでもPDFのコースマップでは入場出来ないという事である。”先回り”した事が無駄になり東静岡駅に戻らされるハメになった。
【落成(納車)直後の315系3000番台U1編成の床下機器を見る】
↑東静岡駅で紙媒体のコースマップを受け取りようやく静岡車両区に入る事が出来た。入口の目の前に315系3000番台U1編成が置いてある。側面には315系の特徴を説明したパネルがある(この辺は315系新造に関わるJR東海HPプレスリリースにも書いてある)。U1編成は2024年5月9日に日本車輌製造(日車)から落成(出場や納車とも言う)した。この時点では営業運転には就いていない。U1編成は同年6月1日から運転開始した。
【予告なく運行開始した一番列車に乗れた理由】315系3000番台U1編成静岡地区運用開始初日 | プロの鉄道マニアがやってみた旅行
↑一番列車の乗車記事について上記ブログに譲る。下記では床下機器を見る。
【モハ315-3529】
↑主スイッチ
↑C-DT69動力台車(要するにモーター付き台車・日車では「NS台車」(「N-QUALIS」エヌクオリプス)と称してブランド展開している。具体的には特許を取得した一体プレス式台車枠の採用およびタンデム式軸箱支持装置(軸梁式も選択可能)の採用による安全性・保守性の向上と優れた走行性能を特徴とするほか、オプションの専用ゴムにより自己操舵台車にすることを可能)
↑銘板
↑VVVFインバーター・車両制御装置(主回路部)。JR東海は伝統的に東芝製を導入している。ハイブリッドSiC素子である。補助電源装置(SIV)は省略しているため、後術のモハ315-3000形と比べて重量が約2トン軽い(モハ315-3500形は約35トン)
↑変圧器・接地スイッチ
↑制御指令伝送装置
↑電気配線の”ツナギ”部分(昔で言うジャンパー線に相当するもの)
【モハ315-3029】
↑サイドビュー(側面)
↑連結部分にある「安全確認カメラ作動中」。これは将来のワンマン運転に備えて設置したもので、2027年度以降御殿場線や東海道線浜松~豊橋間で実施予定である。JR東日本のE131系と同じく運転士がマスコン頭上にあるテレビ画面にこのカメラからホームの状況が映し出されるので、それを見ながらドアの開閉等を行う。全国的に広がって来ており”車掌レス”の動きが加速している。315系3000番台では新造時からの標準搭載になっているが、JR西日本227系500番台(Urara)のように新造時は準備工事に留めているものやJR九州813系のように改造で後付けしたものもある。
↑ドアの周り。半自動ドアボタンは静岡のU編成のみの搭載。同じ3000番台でも神領のC100番台編成には非搭載。関西線(名古屋~亀山)等では原則全ドアが開く。ドアカットしたい場合は従来通りの2/3締切(中央ドアのみ開けたままにしておき、左右のドア2つは閉めておく)であるが、実際にそれを実施する駅は少ない。
↑これもモハ315-3500形と同じ台車であるが、右側には黒い配線が付いているがこれは何か不明。車輪間の横置き黒い円盤状のものは空気バネである。
↑主スイッチ
↑行き先表示(日本語・英語)
↑VVVFとSIVを一体的に搭載。今の電車はこれが多い。SIVは静止形インバーターの事でサービス用電源(空調や照明等)となる。SIVも搭載のため重量は約37トン(モハ315-3500番台よりも約2トン重い)である。営業運転開始後にホームで形式写真を撮るとモハ315-3000番台の方は床下機器が多くあるのでそんなにスペースがなく”カツカツ”な所があるが、逆にモハ315-3500番台は床下機器がやや少ないので”スカスカ”に見えてしまう。この時撮影はしていないがパンタグラフはモハ315形1両につき1基搭載しており、もちろんシングルアームパンタグラフである。
【クハ314-3029】
↑モハ315-3029との連結部分から見たクハ314-3029の全体
↑汚物処理タンク(トイレで使用する水や汚水(汚物)を貯めるもの)。その上にはJRロゴと定員133の記載があるが所属車庫表記(静シス)は最初から書いていない。
↑C-TR257台車(モーターが無い付随台車)
↑電動空気圧縮機
↑整流装置
↑接触器(左)、変圧器・接地スイッチ(右)、ピンク色のチョークで☑印が付いているが、これは点検のした(良好だった)事を示す
↑制御指令伝送装置。
具体的にはわからなかったが非常走行用蓄電装置も搭載する。これは停電により駅間停車した場合、ここに充電した電力でサービス電源の供給や次駅まで低速(概ね15km/h以下)で走行可能である。あくまでも非常用電源のため長時間使う事は想定していない。315系の場合どれくらい持続するか不明だが、同様のそれを持つ新幹線N700Sの場合は40~60分程度とされる。JR東海の事なので新幹線技術を在来線に応用したのは言うまでもない。
↑手歯止め(車輪止め・ハンドスコッチ(略してハンスコ)とも言う)がもちろん付いている。これを付けないと転動するためだ。鉄道車両を留置する場合は必ず車輪に付ける事になっており、マスコンに「手歯止め使用中」(または「ハンドスコッチ使用中」)の札を掛けておくことが決まりである。
「24,02ラワン」とあるが、言葉の意味は不明だが恐らく2024年2月に新製したのであろう。「シツシャ」とは静岡車両区若しくは静岡の車両と言う意味である。今まで車両には「静シス」の表記があったが2023年度以降消去されている。「シス」は電略(鉄道業界の業界用語)であるが、静岡車両区を示す場合は「シス」で間違えない。では静岡駅も「シス」と思ってしまいがちだが実際には違う。「シツ」である。鉄道マニアの間でも意外にこれは知られていない。なぜ駅名が「シス」ではないのか?と言うと旧仮名遣いでは「シツヲカ」と読ませたためである。駅名電略の細かいルール(基本的には1文字目と2文字を使うが近隣駅で重複が避けられない場合は3文字目と4文字目を使うとか逆から読ませる等)を述べると長くなるのでここでは書かないが「シツシャ」の意味は容易に分かった。
↑スカート(排障器)を真下の側面からしかもピカピカの状態で見る事はほぼない珍しい記録になった。どうやらスノープラウは非搭載のようだ。雪が降っても御殿場線や身延線であるくらいで積もる事もそう多くは無い(とは言え御殿場や甲府付近では年に数回程度積もる程度の雪は降るが)。車体そのものは暖地仕様のはずである(JR東海で寒冷地仕様はHC85系やキハ25系と313系の一部に限られる)。
運転席前からのサイドビュー。車体そのものがキレイな形だ。奥には313系や211系も並んでいる。
【JR東海を代表する電車である315系×313系×211系最初で最後の共演】
315系3000番台U1編成(クハ314-3029)・313系2600番台N6編成(クハ312-2332)・211系5000番台GG3編成(クハ210-5051)を並べた撮影会(車両展示)。この組み合わせで撮影出来るのは最初で最後となった。歴史に残る貴重な記録なのは間違えない。JR東海を代表する電車3形式が一堂に会するのは非常に珍しい機会になった。いろんな構図から撮影したので、一部ではあるが掲載する。
↑細かな描写は行わないが、普段どうしても「編成だけ」「前面だけ」となりがちな撮影(記録)が今回は「目(ライト)だけ」「連結器だけ」(いずれも電気連結器搭載)と言った細部まで記録する事が出来た。
静岡車両区の一般公開は車両を見るだけで終わり…と思ってしまいがちだが、鉄道運行には欠かせない架線・保線・信号の説明についてもあった。ここについて良い勉強の機会になったので、次回の記事で述べたい。