JR四国は12月13日、2025年3月ダイヤ改正の概要を発表しました。今回はこれについて分析します。なお、記事中の図は、JR四国プレスリリースから引用しています。

2024 12 13 03.pdf

 

 JR四国では、2019年以降パターンダイヤの導入を積極的に行っています。パターンダイヤとは、各時間帯の発車時間を統一し、一定の間隔で周期的に列車が運行されるダイヤのことをいいます。パターンダイヤを導入することで、列車の運転間隔が揃うために混雑均等化につながる、発車時間が統一されて覚えやすいダイヤになるなどの利点があります。

 

1.高松エリア 予讃線パターンダイヤ拡大

 予讃線の高松~多度津間のパターンダイヤの時間帯が拡大します。

 

 

 夕方時間帯もパターンダイヤ化され、分かりやすいダイヤになるので、帰宅に使いやすくなるでしょう。

 

2.松山エリア 予讃線パターンダイヤ導入

 予讃線の伊予西条~松山間、松山~宇和島間において、パターンダイヤが新たに導入されます。

 

 

 単線かつ特急も高頻度運行しているため、パターンダイヤの導入は困難な路線ですが、それでもできるだけのパターンダイヤ導入に踏み切ったところに、JR四国の凄さを感じます。

 中でも評価できるのは、予讃線の伊予市~伊予長浜~伊予大洲の区間です。伊予市~伊予大洲間はルートが2つに分かれており、内子駅を経由するルートは短絡ルートで特急も走る一方、伊予長浜を経由するルートは普通列車しか走っていないローカル線です。

 この伊予長浜ルートのほうは、現行ダイヤでは最大3時間ほど運行間隔が空く時間帯があるのですが、改正後は2時間に1本確保されることになり、運転間隔が是正されます。

 四国では高松・徳島・高知でパターンダイヤが導入されていましたが、松山だけ導入されていませんでした。松山駅とその周辺では、長らく高架化工事が実施されており、2024年9月に松山駅の高架化が完成し、新駅舎が供用されました。その高架化の完成を待って、パターンダイヤを導入する手はずだったとみられます。

 

3.予土線 パターンダイヤ導入

 予土線の宇和島~江川崎間で、パターンダイヤが導入されます。予土線は宇和島(愛媛県宇和島市)~窪川(高知県四万十町)間を結ぶ路線で、四万十川沿いに走る場面もある風光明媚なローカル線です。そんな予土線も、愛媛県側の区間でパターンダイヤが導入されます。

 ここで注目すべきは、運行本数と運転間隔です。江川崎駅から宇和島方面への運行本数は1日8本で変わりませんが、宇和島駅から江川崎方面への運行本数は1日11本→9本になることが分かります。同区間は宇和島~近永間の短距離区間列車も2.5往復設定されており、これが減便になるとみられます。

 しかし、運転間隔をみると、現行ダイヤでは江川崎方面が3時間程度、宇和島方面に至っては5時間弱ほど列車の運行がない時間帯があります。パターンダイヤを導入することで、列車の運転間隔が終日概ね2時間に統一されます。

 

a.1日11本あるけれど、運転間隔が3~5時間空くことがある(現行)

b.1日9本しかないが、終日2時間に1本列車が設定されている(改正後)

 

 皆さんなら、a,bどちらのダイヤのほうがいいですか?本数だけ見ればaのほうがよいということになりますが、運転間隔まで含めて考えればbのほうがいいダイヤという見方もできるのではないでしょうか?予土線は減便する代わりに、パターンダイヤ導入により利便性低下を阻止する策をとっており、この点は非常に良いといえます。

 

4.土讃線 パターンダイヤ拡大

 土讃線の多度津~琴平間、土佐山田~高知間のパターンダイヤが拡大します。

 

 

 特急列車を中心に、各時間帯の発車時刻が揃えられます。また、高知エリアでは、夕方時間帯までパターンダイヤが拡大し、帰宅が便利になりそうです。

 

5.高徳線・鳴門線・牟岐線 パターンダイヤ拡大

 高徳線・鳴門線・牟岐線においても、パターンダイヤの時間帯が拡大します。土讃線や予讃線と同様、夕方時間帯までパターンダイヤが導入されます。

 

5-1.徳島エリア タクトダイヤ拡大

 徳島エリアでパターンダイヤの時間帯が拡大するのに伴い、タクトダイヤの時間帯も拡大します。

 

6.特急「うずしお」

(1)高松と徳島を結ぶ特急「うずしお」の停車駅が変更となります。

 讃岐津田・讃岐白鳥は停車列車が一部変更となるほか、屋島・引田・池谷は停車本数が増加し、屋島駅は全ての「うずしお」が停車します。

 

(2)徳島22:00発特急「うずしお32号」高松行きは減便となります。

(3)「うずしお」の使用車両が、新型2600系・2700系に統一され、キハ185系は「うずしお」の運用から外れることとなります。

(4)岡山発着の特急「うずしお」が高松発着に短縮され、岡山駅への乗り入れが廃止されます。

 

 岡山乗り入れが廃止となる原因は、いくつか考えられます。

①乗務員の負担軽減

 特急「うずしお」は、前述の通り高松~徳島間を結ぶ特急列車ですが、1日2往復だけ高松をこえて岡山へ直通しています。運行時間も長くなり、乗務員の負担が大きいことから、これを軽減する目的があるとみられます。

 

②運行経路の重複

 岡山~高松間には、快速「マリンライナー」が1時間2本と高頻度で運行されています。岡山発着の特急「うずしお」は、同区間で快速「マリンライナー」と運行経路が重複しており、「うずしお」が岡山に乗り入れなくなっても支障は少ないと判断したとみられます。

 

③連結切り離し作業の軽減

 岡山発着の直通「うずしお」は、岡山~宇多津間で特急「南風」と併結して走る関係で、宇多津駅に寄り道し、連結(もしくは切り離し)作業を行っています。岡山乗り入れをやめることで、連結切り離し作業を行う人員も削減できるというわけです。

 

 JR四国は人手不足が深刻な問題となっており、2024年9月には人手不足による減便も実施しています。そのような状況の中で、どの列車を削減するかと考えたとき、「うずしお」の岡山乗り入れ廃止が効果的と考えたとみられます。

 

7.特急「しまんと」運行体系変更

 高松~高知を結ぶ特急「しまんと」の運行体系が見直されます。

 今回見直される特急「しまんと3・4・6・7号」は、いずれも宇多津駅や多度津駅で連結もしくは切り離しを行っており、高松~宇多津(多度津)は「しまんと」単独、宇多津(多度津)~高知は「南風」と併結して運行されています。改正後は普通列車や快速列車が特急「南風」号と乗り継げるように設定され、高松~高知間の利用者の利便性を維持します。

 見直しの理由は、特急「しまんと」を運行するために必要な人員、そして宇多津駅や多度津駅で連結切り離しを行う作業員の削減とみられます。前述の通り人手不足の問題が深刻になっているため、運行に必要な人員を減らす必要に迫られていることがうかがえます。

 

8.減便

 特急列車15本、普通列車8本が一部区間もしくは全区間で廃止となります。

 

 これにより、徳島駅と牟岐駅を結ぶ特急「むろと」は全廃となるほか、徳島線の特急「剣山」は、1日6往復から4往復へ減便となります。土讃線も山間部で普通列車が減便となり、大歩危~土佐山田間の普通列車は1日5往復から4往復に減便となり、特急通過駅はさらに厳しい状況になります。

 このほかにも、減便となる列車がある可能性があります。詳細は3月号時刻表で確認する必要がありそうです。

 

9.その他

(1)伊予大洲駅・八幡浜駅で、特急列車が駅舎のある側のホームに停車します。これにより、乗り降りの際にこ線橋を渡ってホームと出入り口を行き来する必要がなくなり、バリアフリーになります。

(2)松山駅と宇和島駅を結ぶ特急「宇和海」について、八幡浜~宇和島間はワンマン運転となります。

(3)特急「南風22号」が大杉駅に新たに停車します(大杉16:45発)。これにより、15時台以降の岡山行き特急「南風」は全て大杉駅に停車します。

 

<まとめ>

 いかがでしたでしょうか。内容を見る限り、人手不足の問題が深刻になっており、そのために減便や直通列車の廃止などをせざるを得ない状況に追い込まれていることがうかがえます。

 そんな中でも、パターンダイヤを積極的に導入・拡大し、利便性低下を少しでも食い止めよう、少しでも便利にしようという強い意志を感じる内容になっています。特に、運行本数が少ない予讃線の伊予長浜ルートや予土線へもパターンダイヤを導入し、運転間隔を是正して利便性を上げるという点が今回の改正で一番良い点だと思います。

 苦しい状況にありながら、利用者が少しずつでも増えていくことを願いたいです。