2024年の関門地区の鉄道は、初代門司駅遺構の取り壊し・保存を巡る動きや、JR貨物門司機関区で進む電気機関車の世代交代などが話題になりました。この1年の主な出来事を2回に分けて振り返ります。
◾️初代門司駅遺構 一部は保存へ
発掘調査が続いていた1891年開業の初代門司駅遺構(北九州市)。新たに明治・大正期の倉庫や貨物上屋のものとみられる石垣、布基礎などが確認されました。
北九州市は計画通り複合公共施設建設を進めるとして取り壊す決定をしましたが、ユネスコの諮問機関イコモスが緊急要請「ヘリテージ・アラート」を出すなど、保存を求める動きが活発化。同市は機関車庫基礎の一部を埋め戻し、他部分の一部も切り出して展示する方針に転換しました。
遺構の取り壊しは11月28日に開始。現地は重要文化財・門司港駅と九州鉄道記念館に挟まれた一等地にあり、住民の利便性向上と保存・観光活用の間でなお賛否が割れています。
明治から昭和期にかけての建物跡などが確認された初代門司駅遺構。門司港地区や鉄道の発達過程を知る一つの手がかりとなりました。取り壊し・保存を巡る動きは報道を通じて見守っていましたが、工期優先とはいえ、北九州市の対応はやや一方的な印象を受けました(写真は10月19日に開かれた追加発掘調査の現地説明会)
◾️保存車オハフ33 488の店舗化
関門海峡に架かる関門橋のそばにある北九州市の和布刈(めかり)公園。一角に保存展示されていた旧型客車オハフ33 488が、5月に観光活性化を目指した新たなカフェとなりました。ただ、客車の内装をほぼ全て撤去した活用方法は賛否が分かれました。
事業契約を巡っては、内装撤去の際に座席が転売されるなど不透明な動きもあり、市議会を巻き込む問題となりました。
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改装されたオハフ33 488。現地は門司港からのトロッコ列車の終点で、「鉄道車両としては残念だが、店舗としては良い」との声も聞かれます(写真は開業前の4月撮影)
◾️EF510形300番台量産車続々、本格運用入り
九州地区で貨物列車のけん引に長年活躍してきた電気機関車ED76形、EF81形の後継となるEF510形300番台の量産車が今年続々落成し、門司機関区に配置されました。現在316号機まで登場しており、7月以降に本格運用入りしました。
EF510形300番台の甲種輸送や試運転時には、車体や機器類がピカピカな姿を一目見ようと、多くの鉄道ファンが沿線を訪れました。
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◾️ED76形0番台が全機引退
EF510形300番台の登場に伴い、国鉄時代から走ってきたベテラン電気機関車のうち、まず交流機一般形のED76形0番台が引退しました。
最後まで残っていたのはJR九州から移ってきた81、83号機で、かつては「はやぶさ」「みずほ」などの寝台特急をけん引していました。83号機は3月のダイヤ改正時に運用を離脱、81号機も6月29日に開かれた有料撮影会での展示を花道に、約49年にわたる活躍を終えました。
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◾️ED76形1000番台、EF81形も運用縮小
EF510形300番台の本格運用入りに伴い、ED76形1000番台と交直流機EF81形の運用離脱機もさらに増えました。九州鉄道記念館(北九州市)では10月の「鉄道の祭典」でED76 1022とEF81 404を並べて展示。引退が迫る両形式のブルートレイン時代を思わせる姿に、多くのファンがカメラを向けていました。
一方、不運な事故も続きました。特に「銀釜」と呼ばれ高い人気を誇るステンレス車体のEF81 303は、9月4日に熊本県宇城市のJR鹿児島本線で踏切事故に遭い損傷。現場の尽力により12月10日に復帰しましたが、その翌々日にこんどは406号機けん引の貨物列車が鹿児島県川内駅構内で脱線事故を起こし、難航した撤去作業は全国的なニュースとなりました。
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ED76 1022とEF81 404 共演 九州鉄道記念館 鉄道の祭典
九州鉄道記念館で展示されたEF81 404(左)とED76 1022
「銀釜」と呼ばれ高い人気を誇るEF81 303(手前)。踏切事故により動向が注目されましたが12月に復帰を果たしました(2023年撮影)
※本稿の後編「関門の鉄道2024年回顧(下) 岡山の国鉄形 続く廃車解体など」は以下からご覧ください