JR西日本は13日、近畿エリアに関する2025年3月ダイヤ改正の概要を発表しました。今回はこれについて分析します。

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※記事中の図は、JR西日本プレスリリースから引用しています。

 

1.エキスポライナー設定および増発

 大阪万博開催中に、新大阪~桜島間を直結する「エキスポライナー」が毎時1本程度運行されます。

 途中停車駅は大阪・ユニバーサルシティのみとみられます。新大阪~西九条間は貨物線(特急「はるか」や「くろしお」が通るルート)を走る関係で、大阪駅は地下ホーム(いわゆる「うめきた新駅」)の発着となります。

 桜島駅からは万博会場へのシャトルバスが出ており、桜島駅が万博会場の玄関口となっています。新幹線が通る新大阪から、万博会場へ直接アクセスできる体制が整えられます。

 一つ気になるのは、万博会場へ向かう客と同じかそれ以上に、USJへ向かう観光客も多数乗車するであろうという点です。

 ご存じの方も多いかと思いますが、新大阪駅からユニバーサルシティ駅へ向かう場合、大阪駅で階段を使った乗り換えが必須となります。大阪駅からユニバーサルシティへ向かう直通列車もあるものの、西九条駅でさらに乗り換えが必要となる場合も多々あり、短い距離ながら意外とアクセスが面倒です。

 このエキスポライナーに乗れば、新大阪駅からユニバーサルシティへも乗り換えなしでアクセスできるので、USJへ向かう行楽客にとってはとても便利です。そのため、混雑が激化しないかというところが気になります。

 また、大阪環状線・桜島線(ゆめ咲線)・阪和線では列車の増発が行われます。大阪環状線は平日朝夕に計5本、桜島線は夕夜間に計2本、阪和線は朝に鳳発天王寺行き快速が1本増発となります。

 

2.「うれシート」拡大

 有料着席サービス「うれシート」の導入路線がさらに広がります。

 

(1)東海道・山陽本線(神戸線・京都線・琵琶湖線)

 野洲・京都→大阪・神戸方面に、新たに「うれシート」導入列車が設定されます。設定時間帯は朝夕時間帯となります。

 また、姫路方面→大阪へ向かう列車も導入列車が増えます。こちらは朝時間帯、舞子・垂水・須磨を通過する快速列車全てに導入されることになります。両方向とも、快速列車に「うれシート」が設定されます。

 

 なお、A快速202号は播州赤穂始発ですが、「うれシート」のサービス開始は網干駅からとなります。また、野洲行き・米原行きの列車については、大阪駅から先は自由席となり、「うれシート」サービスは行われません。

 

(2)山陰本線(嵯峨野線) 京都~園部間

 嵯峨野線では初めて「うれシート」が導入されます。対象は平日朝の園部発京都行き快速2本、平日夕夜間の京都発園部行き快速2本です。

 

 なお、快速園部行きについては、「うれシート」は先頭車両の前寄りに設定されます。嵯峨野線の列車は、京都駅の降り口が近いことを理由に、京都寄りの車両が混雑する傾向にあるためとみられます。

 

(3)福知山線(宝塚線)

 福知山線では、平日朝の篠山口発大阪行き快速2本、平日夕方の大阪発篠山口行き5本に、新たに「うれシート」が導入されます。

 

 

(4)奈良線

 平日・土休日の全ての「みやこ路快速」「快速」「区間快速」において、「うれシート」サービスが導入されます。奈良線では今年10月5日に、平日朝の奈良発京都行き3本で「うれシート」のサービスが導入されたばかりですが、わずか半年で全ての快速で「うれシート」サービスを実施するというのは驚きです。インバウンド利用者の需要を狙っているのか、全席指定の特急列車を走らせる近鉄への対抗策なのでしょうか・・・

 

 「うれシート」は、既存列車の一部をのれんで仕切り、指定席を確保するというシンプルなシステムなので、導入や運営にあまり追加費用がかかりません。そうした背景と着席需要の高まりにより、瞬く間に複数線区に広まることとなりました。

 

3.特急列車関係

(1)「らくラクはりま」増発

 大阪と姫路方面を結ぶ特急「らくラクはりま」が増発され、2往復となります。一部の新快速に連結されている「Aシート」とあわせると、座席指定列車が20~30分毎に設定されることとなります。

 

(2)朝時間帯の新大阪行き「こうのとり」2本と、夕方時間帯の福知山方面の「こうのとり」3本が、新たに川西池田・中山寺に停車します。

 

 川西池田・中山寺駅の利用者に対し、快速の「うれシート」とあわせて「こうのとり」も利用するよう促し、客単価を高めたいという狙いがうかがえます。

 しかし、川西池田・中山寺は、大阪駅から快速列車で20分ほどの距離にあり、有料特急列車に乗るという距離ではないような気がします。しかも、これら5本の「こうのとり」の大阪~新三田間の停車駅は、伊丹駅を通過するかしないかの差しかなくなり、快速列車との棲み分けがほとんどつかない状態になります。

 本来であれば、利用者の多い大阪~三田・新三田間の特急利用を増やしたいのだと思いますが、大阪市内~三田市内の移動は高速バスもとても充実しており、強力なライバルになっています。とりたい層から思うように特急利用をとれず、やむなく特急利用者のすそ野を増やすことにしたとみられます。

 

(3)平日の朝夕に運行されている、特急「らくラクやまと」が、新たに柏原駅・八尾駅に停車します。

 

 柏原駅・八尾駅は、どちらも快速列車は通過し、普通列車しか停車しません。にもかかわらず、快速を飛び越して特急が停車することとなりました。柏原駅・八尾駅から大阪方面への通勤通学客へ、着席サービスを提供しようという意図がうかがえます。

 Xや各種コメントでは、「らくラクやまとの利用者が少ない」という声がかねてから上がっていました。実際に朝夕の状況を見たことがないので何ともいえませんが、普通列車しか停車しない駅に特急を停めるというのをみると、日ごろの利用が低調であり、新たな利用者の掘り起こしが急務になっていることを思わせるような内容といえます。

 

 その他、紀勢本線の紀伊田辺駅での乗り継ぎ時間拡大、和歌山線での下校時間帯時刻変更、播但線→山陰本線豊岡方面への同一ホーム乗り換え機会増加などの改正が実施される予定です。

 

4.まとめ

 いかがでしたでしょうか。万博がらみで大阪環状線などは増発はあるものの、改正内容の大半は特急の増発や停車駅追加、うれシート導入拡大など、着席サービスの強化が占めています。近年高まる着席需要の増加を受け、何とかして座席指定列車の利用を促し、客単価を上げたいという狙いがあるでしょう。

 しかし、特急「こうのとり」「らくラクやまと」については、苦戦している様子がうかがえます。別記事でも何本か紹介の通り、特急「こうのとり」は様々な利用促進策を実施しているのですが、なかなか利用者が伸びてこないという現状がありそうです。

 特急の利用者を増やしたい、という気持ちは分かるのですが、停車駅追加により、特急と快速で停車駅がほとんど差がなくなったり、普通列車しか停車しない駅に特急を停車させるというのは、さすがにやりすぎな気もします。これで利用者が増えればよいのですが、利用が伸びなかった場合には存続させるかどうか、というレベルの話にもなりかねず、今後の行方が懸念されます。

 大阪万博を機に利用がどのように変わるのか、着席サービスの拡大により利用者が定着するのか、今後も注目です。