函館・谷地頭(やちがしら) ('03.5.11)
立待岬の奥の山道から脇道に入ると、箱館戦争で亡くなった幕府軍の人々をまつる「碧血碑」(へっけつひ)があった。
幕府軍の生き残りである、大鳥圭介、榎本武揚が建立した。
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碑の裏にある文字は、
「明治1、2年にこのことあり、山上に石を立てて気持ちを表す」
という意味なのだとか。
碧血碑が建てられたのは、もちろん明治新政府の時代。
大っぴらに幕府軍の人々を称えるわけにもいかなかったので、こういうあいまいな表現になったということだ。
大っぴらに言いたいことが言えず、あいまいにせざるを得ない状況は、さぞかしつらいものだろう。わかる。
※ここを訪れた2003年当時、私はAllAbout Japanのライターでした。
前年の2002年にNHK出版から『ゲーム脳の恐怖』が発売されており、エビデンスが皆無に等しい「ニセ科学」であるにもかかわらず、毎日新聞や週刊文春が大きく取り上げ、テレビ各局のワイドショーでも紹介されたことで、「テレビゲームをやると脳が壊れる」という迷信が一気に広まってしまいました。
私は『ゲーム批評』誌の「ゲーム脳」特集を読んで、「ゲーム脳」があまりにも稚拙なゲームバッシングでしかないことを知って憤りを覚え、山本弘氏、斎藤環氏、泰羅雅登氏へのインタビューを行なってAllAbout Japanに記事を掲載しました。これらの記事は、かなり多くの方々からアクセスしていただきました。
感想も多く寄せられ、当時『ゲーム批評』以外のゲーム雑誌も、ゲーム関連企業・団体も、ほとんどだんまりを決め込んでいたことに、ゲームファンがいら立っていたことがうかがえました。
しかし、年が明けてもゲーム業界から声が上がることはなく、それどころか「『ゲーム脳』ブームは終わった」という、事実と全く異なる認識が、業界に広まりつつあったようです。
そんな折、「AllAboutの記事に抗議が来た」という話を聞いて、私は3月に「ゲーム脳」関連の記事を全て削除しました。(どんな感じの抗議だったのか、そもそも実際に抗議があったのか、今でもわかりません)
今思えばその程度で記事を引っ込めることはなかったのですが、記事を削除したことが話題になって、ゲーム業界でもっと活躍している人や企業が、あとを引き継いでくれるのではないかという考えもありました。
結局そんな人は現れず、私自身も非常にいら立っていた頃にこの碧血碑を訪れており、先の「大っぴらに言いたいことが言えず~」の感想につながったのです。
箱館戦争後、旧幕府軍の遺体は、市中に放置されたままだった。
「賊軍を葬ってはならない」という政府の命令によるものだったのだが、これに憤りを感じた柳川熊吉という人物が、遺体を集めて実行寺というお寺などに葬った。
政府の処罰を恐れない彼の行動に、政府軍の田島圭蔵が感動し、熊吉は断罪を免れた。
のちに熊吉は函館山の中腹に土地を買って、そこに遺体を改葬した。
その場所がここである。
※清水次郎長と山岡鉄舟にも同じような話がありますが、街なかに遺体が放置されたままだと街の人が困るということに、新政府はなぜ思い至らなかったのでしょうか。
柳川熊吉は大正時代まで健在で、晩年、その功績を称える碑が、碧血碑のそばに建てられました。
かたわらには、亡くなった志士たちの魂が乗り移ったかのように、小さく白い花が無数に咲いていた。
午後4時ちょうどに谷地頭電停へ戻ってきた。
電停前の売店で、牛乳を1本買って飲む。
電車に乗って十字街で降り、どっく前行きに乗り換える。
偶然、箱館ハイカラ號がやってきた。
今朝とはうって変わって、すいている。
座って隣に荷物が置けるほど。
アナウンスの観光案内もじっくり聞けた。
(「天下の号外屋翁のようになりたい(函館)」へ続く)
はこぶら(函館市公式観光サイト) JR北海道 函館市企業局交通部
俳優・八名信夫氏の著書『悪役は口に苦し』(小学館)の中で、それぞれの時代背景について補足説明する文章を、少しだけ書いてます。
当ブログ内で、ゲームブック風アドベンチャーゲーム『香川県からの脱出』を公開しています。
※最近の「日本縦断ゲーセン紀行」はこちら。
- レトロゲームが大好きだ(昭和編) [ ゲイムマン ]楽天市場レトロゲームの紹介と、そのゲームの舞台(?)探訪。ねとらぼ連載。インベーダー、パックマン、テトリス、スタソル、いっき等
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- 悪役は口に苦しAmazon(アマゾン)俳優・八名信夫氏の著書。私はこの中で、昭和中期のパリーグ、東映ヒーロー、ひょうきん族等について補足説明を少し書いてます。