今回は、ベテランファン宮澤孝一氏の写真集『昭和の東京』(OFFICE NATORI)をご紹介しましょう。
本書は、2019年のJAMにおける宮澤氏の講演「昭和の東京を歩く」の記念冊子と、同じく宮澤氏の作品展「にっぽんの路面電車」の記念冊子を元に再編集したものだそうです。いずれも一度は拝見しているのですが、こうして1冊にまとまってみると、改めて手にしたくなるから不思議です。
表紙の渋谷駅におけるクモハ73の写真からして、現在との余りの違いにびっくりしますが、収録されている写真はどれも珍しいものばかりです。旧い時代の東京の鉄道に興味のある方であれば、全ての写真に「大満足」でしょう。
本書は「Occupied Japanの時代」「「流線形」最後の日々」「渋谷 あのころ」「路上を行く電車」「戦後から新時代へ」「都電の記憶」「P.C.C.とその末裔」「都心の貨物線」「そして、玉電わが街」という章立てになっています。どんな写真が登場するかは見てのお楽しみですが、個人的には、4・5頁見開きの、赤羽駅上り方にあった「運輸機材」なるメーカー(中古車輛ブローカー?)の工場を写した写真が気になりました。この雑然とした感じ、正に昭和20年代です。
本書は、昔の鉄道、東京の鉄道に関心のある方でしたら、丸ごと楽しめる1冊です。30頁強という一見ささやかな本ですが、存在感抜群の1冊です。本書を眺めながら一献傾ければ、お酒が進むこと必定です。